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感電の行き先3

全体公開 1 2008文字
2021-09-04 19:35:27
Posted by @uk_plus_

 「おはよう」
おはよ」

いつも通りに教室で朝を過ごしていると、電話越しではない越知の声が私にかけられた。それにぎこちなく返事をした私とは対照的に、越知は至っていつも通りにそばの机へと寄って行く。

 昨晩の越知との通話のあと、例の彼に“彼氏と電話をしていた”と伝えてから朝から晩までうるさかったスマホがぴたりと静かになっていた。しかし何故だか私の胸中はあまり整いが良くなかった。久しぶりに穏やかな朝を迎えたというのに。

 「昨日は聞かなかったが、どうだった」
「あー効果てき面かも」

聞いてきた越知に私はそう返しながら他校の彼との打ち止まったメッセージツリーを見せると、そうかと昨日のような簡素な返事をされる。そんな返事にうんと返して、しかしいつものように会話が続かず私はなんだか居心地が悪かった。

「ありがとね越知」
「礼を言われるようなことは何もしていない」

だから小さくお礼を言ってみたが、事も無げに返しながら席へと着く越知は本当に何も気にしていないようだ。
 そんな姿に、何故か気分を下げている自分がいた。そして今日は不思議と越知の表情が私にはわからなかった。



 午後四時過ぎ。クラスの友人とだらだら過ごしてから、一人帰路に着くため昇降口から校門まで歩いていた。その校門まで近づいた時、私はいつぞやも見た光景に絶句した。

いる。

校門の外、門柱に凭れ掛かっているひとつの背中を認めて、私の心音が跳ねた。そして止まっていたメッセージツリーを見てから、しかしそこには何も来ていないことを確認して、今一度門柱の方へと視線を移してから私は踵を返した。

 昇降口に戻って遠くなった校門へとまた視線をやっても、あの背中は未だに私を待っているようだった。

どうしよう。

メッセージのやり取りだけならば越知との通話でどうにか出来ていたが、この時間に直接来られては私にはどうすることもできなかった。以前はなんとかやり過ごしたが、昨日の今日で今回は上手く切り抜けられる自信が全くない。

越知

そして一番に浮かんだ名前が脳裏を過った瞬間、私の体には一気に恐怖が走った。

何を言われるのだろう。
どんな態度を取られるのだろう。
何かされるのだろうか。

たくさんに駆け巡った杞憂たちが、私の指先を自然と越知の連絡先へと動かしていた。

『今、来てる』

それだけ送ったメッセージが既読になることはない。当たり前だ。越知は今部活中なのだから。
 動かないメッセージの画面から今一度顔を上げて、私は門柱を睨みつけるように見やる。友人にああまでさせておきながら原因を作った自分が情けなくてどうすると鼓舞するように思って、私は意を決して昇降口を出た。

 門柱に近づいていくほど、足がすくむようだった。そんな足に一歩一歩力を入れて、いよいよ校門を抜けようとした時。未だ門柱に凭れていた彼が私に気付いて声をかけてきた。

「久しぶり。今帰り?」
そうだけど」

本当なら無視してそのまま抜けたかったけれど、さっきまで凭れていた彼が私の先を塞ぐようにさっと身を寄せてきたのでそれは叶わなかった。いつもより重めのトーンで返事をする私を気にする様子もなく、目の前の彼はべらべらと話し出す。

「このあと暇?」
「時間ない」
「そう?ちょっとだけダメ?」
「ごめんだけど
「いいじゃん、少しだけ」

以前は感じなかった恐怖に上手く紡げない言葉でできる限り拒否していると、執拗にかけられる声がついに実力行使として私の腕を掴んだ。その時、やめてと言う言葉より先に大きな影が私と彼の間に割って入った。しっかりと掴まれていた腕も自然とそれによって離されほっとした瞬間、視界に入った大きな背中の名前を私はぽつりと漏らす。

越知」

部活をしているはずの越知が今私の目の前にいて、そしてその姿は制服を纏っていた。

「な、なんだよ、お前」

越知の背中越しに狼狽えた男子生徒の声が聞こえたが、その姿は大きな越知に隠れてしまって見えない。しかしだいぶ驚いているのことがその声でわかった。

「何か用か」

微動だにしないままに、しかし一度も聞いたことないような重く低い声で越知がそう言った。腹の底に響くようなその声に私が固まっていると、再び背中越しに声が聞こえてきた。

「だ、だったらなんだって
「俺の連れに何か用か」

弱々しい男子生徒の声を跳ね除けるように響いたそれが、私たちの周囲を一気に冷え込ませたようだった。

今、なんて言ったの?

行くぞ」

張り詰めた空気とは違うものを自分の胸中に感じていると、今度は柔らかい声音で言った越知が同じくらい柔らかく私の手を引いて歩き出した。大きな歩幅に引かれるように私も歩き出した時、視界の端に驚いた顔で肩を落とす男子生徒が見えた気がした。


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