ヨークランドで二人暮らししてるブルーとルージュの話。葡萄の収穫編。葡萄の品種名見て書かずにいられなかったの…(検索に引っかかるとアレなので実際のものとはちょっと変えてます)
@wasser_welle
「いや〜ブルーさんもルージュさんも悪いですねえ。手伝ってもらって」
「大丈夫ですよ」
「人手が足りない時は呼んでください」
今日は休日だけど、ブルーと一緒に近所の葡萄農家さんに請われて葡萄の収穫を手伝っている。この畑の持ち主であるご夫婦と、そして双子の兄弟も脚立を使ってせっせと収穫していた。一つ一つ丁寧に傷がつかないように取る作業はなかなか大変で、確かに広い畑ならば人手がいくらあっても足りないのだろう。
ちょうど昼を告げる鐘が鳴り、畑の隅っこでビニールシートを広げて昼食となった。
「口に合うかどうかわからないのですけど、どうぞ召し上がって下さい」
とご婦人が謙遜しつつ広げたのは食べやすいように切られたサンドイッチとポテトサラダ、卵焼きにミートボールとレタスとミニトマト……どれもとても美味しそうに見える。
食事の前の祈りを捧げてからポテトサラダを一口食べる。うん、とても美味しい!
「お料理美味しいですよ」
「まあ、良かった。ありがとうございます」
ブルーは黙々とサンドイッチを食べてながら頷いていた。美味しいもの食べてる時、とても無口になるんだよねブルーって。
すると食べながら双子の片割れルベルマが勢いよく手を挙げて主張し始めた。
「あ、ブルー先生、ルージュ先生! 俺たちも手伝ったんだぜ! ポテトサラダの芋潰した!」
「おれはパンに具を挟んだ!」
そしてもう一人ネドルシャも負けじと手を挙げて主張する。些細なことで張り合うこの子たちの姿は見ていてとてもいいなあと思ったのだった。
サンドイッチを味わい咀嚼し飲み込んだブルーが双子たちの頭を撫でながらいう。
「手伝いができて偉いな。料理が出来ることは大事だぞ」
「「はーい!」」
「料理が上手くいかなかった人が言うと説得力あるよね」
ブルーが面倒だからとまとめて作り置きしようとして、塩加減に失敗し味の濃くなったマリネや野菜が生煮えになったスープなどを思い出してしまった。今では食べられるものが出せるようになったけれど。
「お前だって最初は似たようなものだったろう。焦げた焼き魚とか卵焼きとか」
子どもたちとのやりとりを微笑ましく見守っていたが、眉間に皺を寄せたブルーにより僕が料理を失敗してたことをバラされてしまった。
「「えっ、先生たち料理苦手だったの!?」」
「ちょっとブルー!?」
「最初に言ったのはお前だろうが」
そんなやりとりをしていると、夫君が笑いながら僕らに話しかける。
「まあまあ先生方、人間誰しも最初から上手くできるわけじゃありませんからねえ。僕もようやく葡萄が上手く作れるようになりましたから。あとよかったらデザートにさっき収穫した葡萄どうぞ」
「えっ、食べて良いんですか!?」
「見た目が悪いと売れなかったりしますから、そういうものでよければ」
「なるほど。農家も大変ですね」
「ええ、そうですね……でも美味しいと自信があるものを出していると自負してますよ」
そうしてご婦人と双子が協力して作ったお弁当は本当に美味しくて、みんなで笑いながらあっという間にたいらげてしまった。「たくさん作りすぎたかと思ったけれど、みんな食べてもらえてよかった」とご婦人は安心していた。そして、気になっていた葡萄を食べる番となる。
「さあ、どうぞ。品種が違うので食べ比べてみるのも面白いですよ」
「葡萄も色んな色と形があるんですね」
皮が黒っぽいのや赤紫色に近いもの、明るい緑色のもの。僕が収穫していたのは赤紫色のものだった。
「ふふ、この赤みが強い品種はですね『ルージュ・ローズレッド』って言うんですよ」
「えっ!?」
「で、こっちの緑色のが『ブルーシャイン』」
「は?」
ブルーもびっくりして目が丸くなってる。そんな僕らの姿を見て双子が顔を見合わせて笑っていた。ははあ、なるほど。やけに熱心に収穫手伝って欲しいと頼まれたのはこういうことか。とても嬉しそうな顔で夫君が言う。
「ちょうどあなたたちが移住してきた頃に植えたんです。それは本当にたまたまでしたけど、何か運命のようなものを私が勝手に感じてしまって……」
「だから、子供も引き受けようって思ったんです。それに私たち、子供が欲しくてもなかなか……」
「そうだったんですね」
「その節は本当にありがとうございました」
「いや、お礼を言うのはこちらの方ですよ。まさか諦めていた子どもが、二人も」
「もー、父さんも母さんも早く食べよ!」
「採れたてが一番だって言ってるじゃん!」
ルベルマとネドルシャがそれぞれ両親の身体を揺さぶる。婦人も夫君も、今にも泣き出しそうな顔で微笑みながらそれぞれ子どもの頭を撫でた。
その光景は僕が幼き頃に絶対見られなかったもの。外の世界で初めて見かけた時には衝撃を受けたもの。あまりにも自分と生きる世界が違いすぎて、眩しくて見られなかったけれど、今はこうして穏やかな気持ちで見ることができるようになった。
ちらりと横目で兄弟の表情を見れば、目を細めて微笑んでいた。ブルーも僕と同じ気持ちだったらいいな。
「……ああ、そうだな。すみません、話が長くなってしまって。どうぞ、いただいてください」
子どもたちに促され、夫君が葡萄を目の前に差し出してくれた。自然と僕らは顔を見合わせて頷いた。
「「いただきます」」
その味は——言うまでもないだろう。
【終】
[あとがき的な]
たまたま葡萄の宣伝してた○協さんの公式ツイートが流れてきて…その葡萄の品種名に「ルージュ」って単語がはいっていてですね…居ても立っても居られず書いてしまいました。
検索に引っかかるのはヤバい思って実際の品種名とはちょっと変えてます(地味な悪あがき)
今回出てきた双子くんたちの名前は葡萄の品種名をもじっています。そのままだと検索したらワインのことしか出てこなかったのでこれはヤバいと思って(二度目)。それぞれ赤ワインと白ワインの元になる葡萄です。