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経済戦争に終わりなく

全体公開 7863文字
2021-10-12 23:59:07

とある司書目線の貿さんとの経済戦争の話

「ようこそおいでくださいました、赤目の商人様」

メリーはそう言って、自分の黄金の目を細めた。目の細め方、口の上げ方、すべてが美しいと言われるよう作った顔で、にこにこと愛想よく笑う。
「これはこれは、ヨワルリネ様、この間はどうも」
にこり、と赤い眼を細めて愛想よく相手返された言葉に、メリーは動じなかった。
だというのに、メリーの背後に控えたボルグ・ジュルドゥオがわずかに体を揺らしたのが分かる。
……あとで説教ね)
心の中でそう誓い、光栄ですわ、と心にもないことを感情をこめて絞り出す。
「先日のオークションのことでの覚えていただけるなんて」
メリーからすると屈辱だらけのオークションだった。
彼女は図書館の中でも、本やいろいろなものを仕入れる外商部という部署に所属している。
希少本や魔導書があればあちこちへと赴き、それらを買い付けたり、取引したりするのが仕事だ。
図書館の住人は研究者が多く、すばらしいものを発明する。それはいい。
だが彼らは実用性だとか、利益とか、そういうことに無頓着なので、図書館に登録する研究員たちは、その発明を外商部に預けることで、実用性のあるものにもっていくのだ。
外商部はいくつかの部署に分かれているが、メリーはとくに直接売買を担当する部署だ。
そのために必要であれば貴族との社交もこなすし、こうして客人の相手もする。もともと貴族の生まれのメリーは、社交も相手の裏を読むのも小さなころから教育されている。そのため、外商部ではいざというときに駆り出されるやり手の商人扱いだ。
今日も相手が特殊なため、外にいたメリーがわざわざ呼び戻されていた。
相手は、商人と言えど、人ではない。
赤い眼に誰もが見惚れるような忠誠的な整った顔は、貴公子然としている。
戦うことなどなにも知らなそうな優雅な男は、先日、メリーと、とあるオークション会場で鉢合わせた。
そして社交をこなして根回しをして、買えるようにとしていた目的の本の競りで、途中まで出てこなかったにも関わらず、最後の最後で莫大な金で希少な本を買いさって言った。
(落ち着くのよ、メリー。隙を見せてはいけないわ)
にこにことしながらも、メリーのはらわたが煮えくりかえっている。
なんのためにせっせと蒐集家たちに賄賂を流し、その本の複製を約束し、それぞれ取引を持ち掛け、下準備をしたと思っているのだ。
すべては、初めて見る本に青い瞳をきらきらさせる、この図書館の主の、その瞬間のためだと言うのに。
(だというのに、献上することもかなわないなんて……
だからこそ、この相手が心底許せない。
今だって拳を握りしめて、きれいな赤い眼をした商人の顔を殴りつけたいくらいだ。
だが、図書館の司書のであるというプライドが、その衝動をねじ伏せていた。
体の前に置かれた掌は拳を作ることもなく、優雅に広げられている。
「貴重なお時間をいただき、ありがとう存じます。我が勇者様もお待ちでございますので、ぜひ奥へ」
メリーはにこりと笑顔をたたえて、体を翻した。
かつ、とヒールの音を鳴らしながら、この図書館の支配者がいる部屋へと向かう。
ちらりと視線をやったボルグは、相手が誰か分かっているのかと言いたげな、あきれたような顔をしていた。
それを華麗に無視して、メリーは歩みを止めずに先へ進んだ。背後の足音を聞きながら、早くなりすぎないよう歩幅を調整することも忘れない。
背筋はまっすぐ、そして目線は前に、と向けていれば、視界にちろ、と歪んだ赤い線がちらついた。
どうやら自分で思うよりたいそう背後の魔王の存在が気に入らないらしい。
感情の昂りが魔力に変換され、視界にあふれている。
そう、背後にいるのは魔王のひとりだ。
しかしそんなことよりも、視界にちらつく赤い線のほうがメリーには気にかかる。
(図書館には不要な、忌々しい魔眼ね……
メリーは小さくため息をついた。
だが仕方ない。
自分はこの図書館ができる前からの貴族の血族で、そしてその眼こそが重用されていたのだ。その血の証で、図書館に身をおけるのだから、これはあきらめるしかない。
けれどこの眼が、メリーは嫌いだった。
はちみつを煮詰めたような黄金に、とろりと滲む焔のような赤橙色をした自分の目は、図書館の司書服とはあまり合わない。
濃紺の背広に白いシャツが基本だが、メリーが女性ということと、外商部の所属ということもあって、服自体にはフリルが多かった。
この濃紺が、己の目と合わないのだ。
そもそも目鼻立ちがはっきりとしているメリーは、ドレスでも赤い色が似合う。
落ち着いた色は好きだが似合わない。
自分の敬愛する勇者の髪の色が似合わないのは、不満でしかたない。
(いっそ私も、他の色にしていただきたかった‥‥‥)
でも、メリーを視界に入れた勇者が、この魔眼を珍しがってくれた。
『ふしぎな、めだね』
そう言って、この変な色の目を見てくれたらから、似合わない眼も我慢しているのだ。
メリーは、感情が高ぶるとそれを魔力に変換してしまう。もともと一族が炎の魔法を得意とすることもあり、意識的には体の中に炎が生まれるような気がするものだ。
その力から、この国で、古くは『焚書官』という仕事を担っていた。
兵士として従軍するほか、国の意向に沿わないもの、書物に限らず、すべてを燃やす仕事だ。火竜の血さえ流れると言われるヨワルリネ家の火炎魔法の威力はすさまじく、今でも名を聞くだけで恐れるものさえいるほどだ。
前王朝では覚えめでたい焚書官も、図書館という大機関が国にできてからはむしろ肩身が狭い。殺されずに生かされているだけ、いい扱いなのだとメリーは思っている。
そんな、メリーことメルフィリア・ヨワルリネは、本来であれば図書館へ身を置くこともままならない。
だが、ヨワルリネ侯爵家の名を冠しているからこそ、図書館に身を置けているのは政治的事情が絡んでいた。
王側の派閥と図書館が敵対関係とみなされるのは、図書館の運営上よくない。王側をないがしろにしすぎると、他国の勢力と力を結ばれたりするためだ。
メリーとしては、そんな王侯貴族はさっさと滅ぼしてしまえばいいと思うが、そうもいかないらしい。
この国でも一枚岩ではなく、様々な派閥と利権が絡み合っている。
そのため、貴族であり、前王朝側の象徴であるヨワルリネ侯爵家の人間が要職についていた。その枠を埋めるための人材が、メリーなのだった。
長い廊下を歩き、一つの扉の前に到着すると、メリーはこっそりと銀のカードを取り出す。手でノックをするのと同時にドアを銀のカードで叩けば、部屋がこの図書館の主がいる部屋とつながる。
ドアとドアは単純に部屋を区切るだけではなく、つなげるものでもあった。
「書館の勇者様、魔王様がお越しです」
そうドア越しに告げてから、ドアを開く。
中には広い空間と、あまたの椅子とテーブルが置かれていた。
メリーは中に入るとドアを抑え、にこりとしたまま、中へ入るよう商人たちに腕を広げて見せる。
背後をついてきたボルグは、魔王の名前を口にしたことに青ざめていた。
いや、彼は魔力を吸収しすぎると気分が悪くなってしまうので、この部屋の中にあふれる書館の勇者の魔力に充てられたのかもしれないが。
(こんなことでケチをつけるなら、つけてくればいいのよ)
にこにこと笑いながら、メリーは挑発的に笑う。
挑発に乗って隙を見せてくれるならありがたいとすら思う。次こそオークションで競り勝つための第一歩となる隙だ。
「やあ、お久しぶりです、書痴の王殿!」
……
しかし赤い眼の商人はそう言って、口ごもることなくきれいな声で中に入った。
(誰が書痴ですって……!?)
その瞬間、ぎら、とメリーの黄金の瞳が光った。
しかし、向かい側でボルグが、慌てたように紫の目を光らせて魔力を吸い取った。その表情で、冷静を欠いたと自覚し、ふう、とメリーは息を吐いた。
「書館様、どちらに……
ボルグを置いてばたりとドアを閉じて室内に視線を向ける。
すると室内の椅子にはどこにも座ってはいなかった。
だが一席、ティーセットが置かれたソファとテーブルが視界に入る。湯気が立ち上るそこが用意された席だろうと察して、メリーは赤い眼の商人と、その秘書を案内した。
「書館様?」
空中に視線を向けて呼びかければ、空中で丸まっていた少年は、はっとしたようにぱちりと目を開いた。
大きな本を抱えていた少年は、水の中で漂うようにふわりと空中に浮いている。
……書館様、お客様がお越しです」
メリーが敬愛する主人を見つけて顔を綻ばせると、少年は名残惜しそうに本に目を向けた後、しおりを挟んで、ぱたりと本を閉じた。
そして首を向け、こくりとうなずいて、赤い眼の商人の向かいの席へと降りてくる。
「あ、メルフィ、リアだ、ね……
かすれた声で告げられる自分の名前に、メリーの心臓は鷲掴みにされた。
(あ、あぁぁぁぁぁぁッなんということでしょう!書館様にお名前を覚えていただけていましたわッ。おまけに今日はこんなにお近くでお顔を拝見できるなんて今日が私の、命日でもかまいませんわ!仕方ありませんわね!このクソ魔王が来たことも、許してあげなくもなくってよ!?)
心の中は歓喜の大豪雨だったが、メリーは外商部売り上げ、本買取一位の商人である。
にこりとした外交用の笑みに留めて、自らの主に席を勧めた。
メリーの主人は、図書館に住まう一人の勇者だ。
彼は『書館の勇者』を冠する、貴き女神の宣託を受けた一人である。
本をこよなく愛し、ひたすら読書を好む、歩く図書館のような彼は、その叡智で民に救いと安寧を与えるものだ。
魔力量が異様に高い彼の魔力量を測れたこともことはないほど、膨大な魔力を有する勇者だ。
だが、彼は図書館から一歩も出ることはない。
だというのに、彼はその知恵で様々なことを改革し、世界をより良く、民が暮らしやすいようにしていた。
見た目は幼く、まだ少年のようで、今日もメリーの前で腰かける紺色の髪の毛は、寝癖だらけでぴょこりと跳ねている。
今は見えない青い瞳は空のように澄んでいて、魔力のきらめきでわずかに色を変えるのだ。
その様を幼いころに見てから、メリーは心が奪われてしまった。
「いつもと変わらずお元気そうでなによりです。書痴の王?」
にこやかに話しかけてくる赤目の商人に、メリーはにこにこと笑いながら、いい加減にしろと怒りを募らせた。
書物ばかり読んでいる気狂いだと遠回しに言っていることが、メリーの気に障る。
開いている手が、今すぐ拳の形になってしまいそうだ。
(この方の叡智さを知らない愚か者めが勇者様と口を利く価値もないわこの男今すぐ燃やして灰にして海に撒いてや)
「あぁ、君もげんきそうだね。ブラッティ・コールドマン」
血も凍る冷ややかな男だと返した主は、無詠唱で目の前のティーポットを動かした。
彼の魔法によって、ポットの中身は自動で温められ、茶葉の缶が勝手に浮き上がり、中に適量の茶葉を入れる。
そうして彼はお茶の入ったティーカップを差し出し、にこりともせず、先日は大変だったろう、と平然と口にした。
「なにせ高値で買い入れたというのに、宝石がすべて偽物で、ずいぶんと損をしたのだろう?」
……毎度毎度耳の早いことで」
呆れたような口ぶりをする商人に、メリーは表情を変えずに内心驚いていた。
(相変わらず、素晴らしいお方だわ。この館から一歩も出ないというのに、外商部よりも早く話を知っているんですもの)
書館の勇者は、日がな一日本を読んでいるが、それでもこうして誰よりもいろんなことを知っている。
「鑑定士の値段を下げないほうがいいと、教訓になった、ね?」
彼は嘲る色はないものの、痛烈に皮肉った。
その言葉に、赤い眼に商人の笑顔がピクリと動いたのを察し、メリーは心の中でガッツポーズを作った。
大方、質の良くない鑑定士に偽物を大量に掴まされたのだろう。
先日、偽物の宝石が大量に出回り、図書館側でも問題視していた。そして図書館で、それに対する対応をしていたはずだ。
それが宝石と大差ない製法で作る偽物の鉱石であったため、本物との見分け方が非常に難しかった。
見分ける方法は図書館にいた研究者の力によって発見され、大々的に発表をした。
宝飾品として使う分には質も良いため、二次的な宝石としての認可を図書館はした。しかし天然のそれと異なる人工物は、価格が一気に落ちる。
図書館では庶民向け、あるいは魔術師の研究用として活用することが目されているが、それを掴まされていた商人はたまったものではない。
……もしや、私にわざと?」
「きみがぐうぜん、不幸だっただけ、だ」
言いがかりをつけようとしてくる商人に、メリーは鼻で笑い飛ばしてしまいたかったが、こらえた。
(あぁ、書館様は聡明であらせられるわ。こんな腐ったやり口の魔王にも少しも引けを取らないそのお姿、感服いたします)
メリーは感動を心の中にしまい込み、愛想よく笑うだけだ。
「まあいいでしょう。そんなときくらい、私にもあります。あれを」
赤い眼の商人の背後に控えた男が、何かの箱を差し出した。
そして商人はその箱を机の上におくと、包みをぱさりととる。
「あなたほどのお方であれば、これの価値くらいお判りいただけますでしょう?」
(あっそ、それは……!)
「『ゆうぎの、教本』……!」
わあ、と声だけで嬉しそうにする勇者の反応が、メリーの心にぐさりと刺さる。
(ほ、本当は本当は、そのお声は私が勇者様に献上し、そしてへたくそな笑顔で目をきらきらさせながら、ぎこちなくありがとうって言われときに聞くはずでしたのに!!)
商人はちらりとメリーに視線を向けて、勝ち誇ったように笑っているのが、なおのこと憎らしい。
その本は、先日メリーがオークションでこの男に競り負けたものだ。
本来であれば、メリーが手に入れ、この勇者に献上するはずだったもの。
(ゆ、許せません、許せませんわ、やはりこの男、今すぐ燃やして灰にして海に撒いてや)
「メルフィリア」
「はい。勇者様」
名前を呼ばれたメリーは猫撫で声で応じてしまった。
「彼から、買ってくれるよね?」
振り返った勇者は、上目遣いにメリーを見ていた。
(うっ……
無表情で甘えるようなしぐさは何一つないのだが、それはそれで、本当に欲しいと言われているようで、メリーには口答えすることなどできない。
「ちなみに値段は、これくらいですが、安いものですよね?」
秘書の武骨な男が、すかさずメルフィリアに金額の記載した紙を盆にのせて提示する。
その値段を見て、メリーは思わず目を見開いた。
(なっ先日のオークションの倍!?いくらなんでもぼりすぎじゃありませんこと!?)
ちらりと赤い眼の商人を見やると、相変わらずにこにことしていた。
だが今は、その顔があくどくしか見えない。
「もちろん、君の言い値でいいよ。君も本の価値がわかるなんて、うれしいなあ」
そして主人がそう言った以上、値切り交渉もできず、メリーは無言で、買い付けにサインをした。
このやりとりは何度かこなしているので、秘書に外商部の受付で小切手を受け取るよう指示する。
「この本はとっても貴重なんだよ。とある遊び好きな魔王と出会った勇者から聞いた人が著者でね、その本を書いたら失踪してしまったから、原本が行方不明で、そしてそのあと本当の魔王のもとにわたってさらに魔法が追加されて、魔導書になったんだ。本を読むまでがすごく大変で……楽しみだなあ」
「よろこんでいただけて、こちらも良い取引でしたとも」
にこにこと喜んだ様子の赤目の商人を、メリーは今すぐ燃やしてやりたかった。
(そりゃあいい取引でしたでしょうね。オークションでさえ適正金額を上回る買い方をして、さらに今回はその倍ですもの。宝石の損失も補填されたに違いありませんわ)
買い付けを邪魔したうえに、メリーの根回しもすべて無駄にしたこの男が心底憎い。
魔王とかなど関係ない。もう燃やして焦がして灰にしてしまいたい。
自分の主が喜んでいるからと言って、そんなことでは相殺できそうにもない。
だってその喜んだ声は、ありがとうと一番最初に言われるのは、メリーのはずだったのだ。
(覚えてらっしゃい、この腐れ魔王が……
にこにこしながら内心で殺気を渦巻かせていれば、青い眼の主は、こくりとお茶を飲むと、そういえば、と幾分楽しそうに口を開いた。
「この国で、小麦を買い占めたんだって?」
「ええ、この国の小麦は質が良いですからね」
その会話に、メリーは青くなった。
(な、なんてこと!小麦を買い占めたら国民の生活に関わりますわ。生活ができなくなってしまいます!)
この国の小麦は品質がいい。そのため、他国では国内より高値で取引されているのは、メリーも知っている。
しかし国民の生活の中心は小麦なので、それらを買い占められてしまうと、図書館の国の国民たちが食事に困っていく。
この男、とさらに殺意を募らせたところで、書館の勇者はどさりと背もたれにもたれた。
「ふうん、じゃあ、早めに売った方がいい」
「時期を読むのは商人の得意どころですので、言われずとも」
「また宝石の二の舞に大変だと思って」
その言葉に、赤い眼の商人は、すこしだけ表情を陰らせた。
……何をおっしゃりたいので?」
「君は商人だというのに、情報に疎いな」
メルフィリア、と名前を呼ばれ、彼女は背筋を改めた。
「この間、周辺に売り込んでいた小麦はどうなった?」
「そろそろ売りに出始めるころかと」
先日、周辺諸国に成長の早くて病気などに強い、そして質の良い小麦を売り込んでいた。
それは国内で使用されるものよりも、すこしだけ質がいい程度だ。しかし強い種類なので、多少土の状態が悪くとも育ちやすい。
つまり大量生産できるので、国内のものよりも価格が安くなる。そしてその小麦が出回れば、国内の小麦の価格は大暴落を起こす可能性もあった。
「ここから出ない僕と話すより、だいじなようが、できた?」
にこりと笑った赤い眼の商人は、す、と席を立った。
「えぇ、今まさに。得難い情報をありがとうございます、書痴の王」
メリーには、その呼び名に怒りが湧き出なかった。
自分の主に完全に情報戦で負けた今の赤い眼の商人がそう呼んでも、負け惜しみにしか聞こえない。
「お見送りいたします」
「いえ、結構。代わりに部下に金銭の受領をお願いします」
メリーがドアを開けて、ボルグに引き継ぐと、彼は秘書とともに慌ただしく出ていった。
「メルフィリア」
こちらに、とちょいちょいと主に手招きされ、近寄って跪く。
すると、目元を覆われ、すう、と何かが抜き取られるのがわかった。
それが抜けていくと殺気や苛立ちが落ち着き、すっきりした気分になる。
魔力を抜かれたのだ、と気づいたときには、彼の興味は買ったばかりの本に移っていた。
どこから攻略しようかと検分する姿は幼い子どもそのもので、メリーが出会ったばかりの姿と変わりない。
それでも純粋に楽しそうな姿を見れるのはうれしくて、次こそあの赤い眼の商人に負けないようにしよう、と気持ちを改めた。


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