X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです
Xフォロワー限定公開・リスト限定公開の停止について

牡丹一華の花言葉

全体公開 7896文字
2021-10-15 01:16:15

ハッピーエンドはきっとこう

 1
 ‪何年後かの春の日、眠り姫は目を覚ました。目覚めを待つ者にとっては途方もなく長く感じた数年間だった。‬
 数年間眠り続けた代償に、襲は軽度の歩行障害と窶れた身体を得た。想い人のお陰で栄養面の方は回復するまでにそう時間はかからなかった。けれど歩行することだけは中々すぐには出来ず、いまだに車椅子での生活を余儀なくされていた。はやくあの人の隣を歩きたい、という気持ちが襲を焦らせる。今の襲にはもう何も残っていない。もう歌を詠むことも叶わない。ここに居るのは、ここに在るのは、何にも無いただの女だ。いつ想い人に失望され、捨てられてしまってもおかしくない。だからこそ、これ以上手を煩わせるようなことはさせたくないと思っていた。
「襲様、もう宜しいでしょう。今日はもうこの辺に」
「いやです」
 疎遠になった今でも、使用人が時折病室に訪れる。もう大した病気してないんだから退院したらどうだ、と使用人に言われたこともあったが、頑なに拒んだ。もう彼に逢えなくなるかもしれない。それだけが嫌だったからだ。
「どうしてそんなに焦っているのですか」
 床にへたりこんだままの襲に使用人は手を差し伸べ、ベッドに座らせた。そうさせて貰えるのは助かるのだが、襲はどうも解せない気持ちでいた。自然と顔は不貞腐れたものになってしまう。
「.......迷惑掛けたくないからです」
「襲様もそういうことを考えられるようになったのですね」
「こんな時でも手伝ってくれるなんて、どういう風の吹き回しですか」
「貴女は私たちが手塩にかけてお世話した娘ですから。たとえ旦那様が貴女を見捨てようと、我々はそう簡単に見捨てませんよ」
 思いもしなかった返答に襲は面食らった。どんなに自分が大切に育てられてきたのか、可愛がられてきたのかは分かっていたはずだった。けれど今になって、育ててくれた者たちの愛情を知ったような気がした。
「.......血も繋がってないのに。おかしな人」
「はは、結構。襲様にいくら悪態つかれようとも私めはお付き合い致しますよ」
「.......爺や。縁は元気にしてる?」
「相変わらず、といったところですが.......縁様はしっかりした御方ですから。大丈夫でしょう」
「そう.......」
「まだ、練習を?」
「.......もう帰って」
「.......」
「もう疲れたし、練習は終わりにするから」
「畏まりました。しっかり休んでくださいませ。襲様おひとりの身体ではありませんから」
……
 扉が閉じる。静寂が訪れた。孤独なこの時間が襲の心を曇らせる。私なんて、と卑下する私。並び立ちたいと願う私。留まりたい気持ちと消えたい気持ちがせめぎ合う。こんなにも葛藤するのは女学校以来だ、常に私に付き纏うのは孤独の陰影だ。ぽたりと衣服に染みが付いた。独りで居ると泣いてばかりだ。こんなところ、誰にも見せたくない。
「.......襲さん、入りますよ」
 タイミングが悪い。見せたくない時になってあの人は来てしまう。上手いこと取り繕って、返事をした。
「今日も歩行訓練してたんですね」
「.......」
 情けない声が出てしまいそうだったから、黙って頷くだけにした。ゆっくりと足音が近付く。顔なんて直視出来るわけがなかった。スプリングの軋む音と、薬品の匂いが漂った。
「あまり根詰めるようなことはしないでくださいね」
 諭すわけでもない、いつも通りの穏やかな声。こちらのことなんて手に取るように分かるのだろう。先程まで泣いていたことも、いま、涙を我慢していることも。
「.......中々相手してあげられなくてごめんね」
 どうして謝るのだろう。謝るのはむしろこちらのほうだ。沢山迷惑をかけているのだから。
「貴女は深く思い詰めてしまうきらいがありますから、言っておきますけれど。私は貴女のこと、見捨てたりしませんよ」
 思わず顔を上げた。いつもと変わらない顔がそこに居た。
「.......やっぱり泣いてたんですね」
「ほんとに、言ってますか」
「うん?」
「貴方のその気持ち、本心ですか」
「嘘は言いませんよ、私」
 あまりにも真面目な顔で言うから、本心からの言葉なのだと思った。少しでも疑った自分が情けなくて、でも、それでも自分自身を愛してくれていることが嬉しくて、今度こそぼろぼろと涙が溢れた。
「.......なんにも残ってない、ただの女なのに。それでも変わらず心を捧げてくれるんですね」
「何もなくても貴女だから好きでいるんですよ」
「もう、作った歌を見ることも叶わないのに.......? 創ることを共にすることも、出来ないのに.......?」
「その程度で途切れるものでもないでしょう、私たちは。.......私ももう、創らないと決めたので」
「.......いや、貴方は書き続けてください。純粋に読みたいので」
「そういうとこ変わってないですね」
 穏やかに笑う様を見て、ひどく安心した。私の居場所はこの人の隣。まだ隣に立てなくても、もう何も持っていなくても、私は大丈夫なのだと襲は確信した。

 2
 それは、数日経ったある日のこと。
……外に?」
「ええ。まだ歩けないとはいえ、ずっと室内なのも嫌でしょう」
 今日、いい天気ですし。と付け加え、周は襲に外出を提案した。窓の外は晴天だ。確かに外に出ないというのは勿体ないかもしれない。だが、彼には仕事がある。自分なんかに構っていられる時間なんてあるのかと、襲は同意を躊躇した。
……迷惑じゃないですか?」
「そんなこと、考えないでいいですよ。そもそも今日は休みですから」
 外に出かけるから、とわざわざ着替えまで用意してくれていた。周到なひとだ、と感心しつつ襲は着替えを受け取り、それらを身にまとった。
「どう、ですか」
「似合っていますよ。可愛いです」
 嬉しそうに微笑むと、周は白衣のポケットからブローチを取り出した。長い間ずっと肌身離さず持っていてくれたのだそうだ。ブローチをシャツに着け、周は満足気な表情を浮かべた。
「やっと貴女に返せた」
「ずっと大切に持っていてくれたのですね」
「おそろい、ですからね」
 周が付けているループタイにも、襲のブローチと同じ石が嵌っている。襲が周に初めて贈ったプレゼントだった。
「そうそう、靴も履かないと」
 着替えの入っていた袋に、上品かつ可愛らしい靴が入っていた。片方を手に周はベッドに腰掛ける襲に跪く。
「靴くらい自分で履きますよ」
「私にやらせてください。嬉しいんです、貴女の世話を出来るのが」
 周は自分の膝に襲の足を乗せ、淡い色のパンプスを履かせた。細いストラップと華奢な装飾がより一層可憐さを増した。
……私の為に、全部買ってくれたのですね」
「ええ」
 幸せだ。自分の為にとここまでしてくれて、心を砕いてくれて。
「終わりましたよ。ところで、何か持っていくものはありますか?」
「いいえ、特には」
 そう襲が答えると、失礼しますね、と言って周は襲を抱き上げた。突然のことに襲は周の顔を見る。こんなに近くで見たのは、いつ以来だろうか。
……えっと」
「一階で車椅子に乗った方が良いでしょう?」
「そう……ですね」
 言われてみれば確かにそうだ。だが。
……でも、少しくらいなら歩けますから」
「ヒールで脚を挫かれては困ります」
……もしかして謀りました?」
「ふふ、なんのことやら」
 ちゃんと掴まっていてくださいね? と言われ、襲は周の首元に腕を回す。ふわりと好い香りがする。それは香水ではなく、家庭的な優しい匂いだ。
 休みの日の診療所はひどく静かで、外の音がハッキリと聞こえる。春を告げる鳥が忙しく囀る声。こどもたちが駆け回りはしゃぐ声。風に吹かれ、木々の枝葉が擦れ合う音――
……あ、少し待っていただけますか?」
 襲を車椅子に乗せたあと、周は何かに気付いたのか急いで診察室に向かった。軽い物音がしたかと思えば、周は白衣を脱いで戻ってきた。
「別に着ていてもよかったのに」
「気分です、気分。さ、外へ出ましょうか」

 久方ぶりの外だ。もうすぐ初夏を迎える街には、爽やかな風が吹き渡っていた。花見の時期は過ぎてしまったが、穏やかな気候には変わりない。思わず脚を揺らしたくなるくらい、襲は浮かれていた。
「行きたいところはありますか?」
「公園に行きたいです、私」
 思い出深い場所だった。待ち合わせたり、会話をしたり。約束をしていなくても、会うことだってあった。
……ねえ。覚えてます?」
「何ですか?」
「襲さんが雨の中ひとりで公園に立ってて。私が傘の中に入れようとしたら、家の方と勘違いして傘を叩き落した時の」
「それ今思い出すことですか? ちょっと恥ずかしいのですが……
「それ以来、家に来るようになりましたよね」
「家より居心地良かったので……
「駄々をこねながら使用人の方と帰っていくの、面白かったですよ」
「それは余計な話です」
 会話を交わしているうちに、見慣れた風景が見えてきた。数年経っても変わっていない。
……懐かしい」
「どこも弄られてないですからね。長いこと昔のままですよ、ここは」
「歩けるようになったらまたここに来ても?」
「構いませんが」
「ブランコとか漕いでみたいんです、童心にかえって」
「転ばないようにお供しますね」
「馨さんも漕ぐんですよ」
「おや、私もですか」
 周は木陰に車椅子を止め、隣のベンチに腰掛けた。ふたりで公園内をぼんやり眺めた。子供たちが楽しそうに駆け回ったり、遊具で遊んでいる。自分たちが子供だった頃を、遠い昔のように感じていた。
「あんなに楽しそうにしてるの見てると、遊びたくなりません?」
「言われてみればそうかもしれません。……私はあまり遊戯に興じたことが無いのではっきりとは言えませんが」
「私もあまり遊んでいた記憶がないので。でも、いいんですよ、なんとなくで」
 視線を感じたのか、ひとりの子供がこちらを向いた。周の診療所に通っている子供らしい。彼は周を認めると、すぐに大きな声で「せんせえ!」と呼び手を振った。周はふっと笑むと、手を振り返して応えた。
「馨さんは面倒見良いですよね」
「そうかな」
「そうですよ。私の勉強だって見てくれたじゃないですか。馨さんはきっと……
 と言いかけ、襲は慌てて口を噤んだ。
「なんです?」
「えっ、あっ、なんでもないです! はい!」
 真っ赤になってまで取り繕おうとする襲に、周はくすくすと笑いだした。そうしていると先ほどの子供が友達を連れ立ってこちらに来た。
「先生はおやすみなの?」
「はい。今日はおやすみですよ」
「先生もこういうとこくるんだね!」
「ええ。みんなは何して遊んでたのかな」
「手まり歌? っていうの教わったから練習してた! 先生はこっちのお姉さんと遊びにきたの?」
 唐突な質問に襲は思わず声を上げそうになった。周の方を見ると、彼は穏やかな表情でこちらを見て、それから
……ないしょですよ」
 と子供たちに笑ってみせた。初めて見る表情だった。愉快そうな、悪戯っぽいその姿。襲は覚えている限りでは見たことがなかったし、不意を打たれたような気分だった。
「わかった! カノジョだ!」
「ふふ、想像にお任せします」
 周は無邪気な子供の言葉に照れるでもなく、平然と返した。えー? と笑いながら聞き返す子供たちは、まだ遊びたいからとまた元の場所に戻っていった。
「よく平然と、」
 襲は今起きたことについて言及しようと口を開いた。が、真っ赤になっている周を見て何も言えなくなってしまった。先程までそんな顔、してなかったじゃないか。
……あは、真っ赤じゃないですか」
「上手く誤魔化せたのが奇跡ですよ。純真ながら鋭いものですね、子供というものは」
「満更でもない表情して。嬉しいのでしょう?」
「ええ、嬉しいです。こんな日が来るなんて、本当に」
「もっと喜んでくれてもいいんですよ」
「調子乗らない」
「真っ赤な顔で言われても説得力ないですよ」
 それからちょっと沈黙して、笑いあった。そんなことさえも嬉しくて、襲はどうしようもないくらい気持ちが昂った。
「こんなに笑ったの久しぶりです」
……安心しました」
「馨さん?」
「ずっと不安だったんです、貴女が目覚めなかったらどうしようかと」
 うつむき加減で顔は髪で隠れていた。どんな顔でそれを言っているのかは分からない。だが声色は、彼の心象を直接表していた。
「目覚めない貴女の世話をしていて、自分の無力さを思い知りました。貴女のために出来ることなんて、私には無かったんです」
 自嘲気味に周は言う。こんな彼を、襲は今まで一度も見たことがなかった。
「ねえ、馨さん」
……はい」
「私、貴方がずっと居てくれたっていうことだけでも嬉しかった」
……
「何もない、なんてことはないんですよ。馨さんは自分に出来ることをしてくれたじゃないですか。それで良かったんです」
……襲さんはそれでいいんですか、」
 言わんとしていることは分かっている。例え自分が目覚めなかったことも、そのまま死ぬことも有り得た話だ。襲はそれでも、と微笑んで言った。
「ええ。好きな人にこれ程大切にされてるんですもの。これ以上の幸せなんてありませんよ」
 その言葉を聞いて、周は少し黙り込んだ。それから困ったように笑った。やっと彼の顔がハッキリ見えた。
「貴女はそういう人でしたね」
「そうですよ。貴方のことしか頭にない、独占欲の強い女です。貴方の思う以上に、貴方を求めている女です」
……貴女には敵いませんね」
「呆れちゃいました?」
「まさか。変わってなくて安心しました。……さて、そろそろ他の場所も見ていきましょうか、どこにします?」
「馨さんにこの街のこと、教えてほしいです」
「それで良いのですか?」
「馨さんの好きな場所、覚えておきたいから」
……私の好きな場所」
「よく行くお店とか、顔馴染みのいるお店とか……そういうところ。馨さんが、今までどうして過ごしてきたのか教えて?」

 3
 求められることにめっぽう弱い。周はじゅうぶん自覚していた。
「そんな性格だからこそ、馨さんは今の仕事に就けているのだと思いますよ」
 街をひと通り案内し、時間も丁度良い頃合いになって帰路を辿っている最中、襲は唐突に口を開いた。
……何も言ってないじゃないですか」
「先程から顔に出てました。平静を装おうとしてるのが気に入らないくらい」
「怒ってます?」
「いいえ。とても愉快でした」
 襲は車椅子の肘掛けの先を、指の爪先で何かの音楽を奏でていた。怒っている、というよりは上機嫌、と言ったほうが正しい。
「私にだけそういうところ見せて、こんなところを見ることが出来るのは、私だけだって自惚れてしまいそう」
「自惚れてもいいんですよ」
「本気にしますよ?」
「もうとっくに本気でしょう、貴女」
「馨さんはどうなんですか?」
「本気ですよ、責任取ってほしいくらいには」
「ふふっ、そんな風に言われるなんて。私どうなっちゃうんでしょう?」
「どうされたいですか」
「一緒にいてほしいですね」
「そんなことで良いんですね? 貴女のことだから色々迫られるかと」
「順序は踏みたいんです」
「押し倒したくせに?」
「いつまでそれ覚えてるんですか」
「ずっと覚えてますよ」
「むう……
「そろそろ着きますから。ふてくされないで」
 白い建物が見えてきた。一日の、なんと短いことか。診療所の玄関をくぐり、待合所で止まる。襲は車椅子から降ろされ、抱きかかえられて、上の階へ行くものだとばかり思っていた。車椅子の正面に周は座り、向かい合う。今日はまだ続きがあるようだ。
……上には行かないのですか?」
「話しておきたいことがあって」
……話?」
 彼に限ってそんなことはないのは分かっているが、どうしても嫌な方向にしか考えられなくて、襲は不安な気持ちに見舞われた。スカートを握る手に、汗が滲む。
「話、と言っても大したこと…………になるのかどうかも怪しいですけれど。今、というかずっと、貴女の部屋を用意していて」
…………どこにですか」
「私の家です」
「私の、部屋を?」
「ええ。貴女さえ良ければもう家に来て……って。泣いてます?」
 指摘されて襲は気付いた。頬を雫が伝っている。ブラウスの袖で雫を拭おうとしたところを、周の指が取り払った。
……びっくりした」
……本当にいいんですか」
「ええ。もうここで過ごす必要もないですし、宛が無いなら尚更……
「本音は?」
「出来るだけ長く傍に居たい、です」
……馨さんも寂しいんじゃないですか」
「私の独り善がりだったらと思うと、言えなくて」
 このひとはいつもそう。襲は今までのことを思い出した。相手のことばかりを優先して、自分のことは後回し。彼の優しさに甘んじていたところがあったのは事実。だが、本意なのか否かが読めないこともあった。相手さえよければ自分を殺してしまうような、危うい優しさを持ったひと。無意識のうちに自分を殺してしまわないように、今度は自分が救い出さなければ、思いを打ち明けて良いと分からせてあげなければならない。自分にはその使命が、責任がある。
「それは言ってくれないと。馨さんはその辺の男性とは違うから、私を籠の鳥にさせることなんてしないでしょう?」
「どこからそんな自信がくるんですか」
「私が一番分かってます。馨さんは優しすぎるひとだから」
……
「だからこそ、そんな風に想ってくれるのでしょう?」
「ええ。……襲、さん」
「はい」
「貴女のためなら、何でも差し出す覚悟です」
「突然重いこと言いますね」
……茶々入れない。悲しい思いはさせないように、頑張ります。脚のことだって責任持って治して歩けるようにします」
「脚は八割がた私の頑張り次第でしょう」
「確かにそうですけれど。…………ああもう、締まらないじゃないですか」
「馨さんいちいち真面目に返してくれるので、可愛くてつい。ほら、続きは何ですか?」
……一緒にいさせてください」
「つまり?」
…………まずは一緒に住みませんか」
 彼にしては珍しい、と襲は心底愉しんでいた。大好きな人の可愛らしいところを、少しでも長く見ていたかった。
「家事を任せきりにしないように頑張りますね」
「そこからですか」
「だって私、甘やかされて今まで生きてきたんですよ?」
「別にそんなこと気にしてませんよ。少しずつ教えますから」
「私、美味しいご飯作れるようになりたいです。馨さんに食べてもらいたいから」
「ふふ、たのしみにしてます。……さて、了承も得たところで帰りましょうか」
「はい」
 帰る場所が同じというだけで、襲はこの上ない幸せを感じていた。かつて制約された生を送る最中で、愛し恋しと想う心を知った。報われないと諦めていた。気持ちを制限していた。どうしようもなく苦しかった。けれどもう、あの頃の私たちじゃない。
 ふたりの帰路を西陽が照らす。共に辿るこの道を、いつか自分の足で歩けるように。装飾のパパラチアは、いつもより輝きを増しているように見えた。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.