@Mikage_Chi
「ライ、君は一体何者なんだ?」
何気なくくつろいでいる時のこと。僕を拾ったマスターは唐突にそう口を開いた。少し考えてから、僕は言葉を返す。
「例えば僕が犯罪を犯していたとして、それはマスターにどう関わってくるんです? 例えば僕が何か恐ろしい……化け物だったとして、それはマスターにどう関わってくるんですか?」
「確かに例えば君が以前、私が拾う前、犯罪を犯していたとして、常人には見えない君は私に迷惑をかけないだろう。例えば君が何か恐ろしい化け物だったとして、常人である私には君に対して何もできはしない」
少し震える手を隠しながら、ニコニコと笑みを貼り付けてみせる。嘘を名前に冠する僕の得意技だ。
「そうでしょう? 僕が何者であったとしても、僕はただの人間には見えない。何もできやしない。マスターに迷惑はかけませんよ」
「確かに、迷惑はかからないだろう。……だが心労はかかる。私は、そんなに頼りないだろうか? 私は、そうまでしてライ、君に遠ざけられなければならないだろうか?」
反応しそうになる喉を律する。僕にはそれができる。 自分さえも騙していけ、それが僕だろう。
「いいえ、いいえ。マスターは素晴らしい人間ですよ。僕が今こうしてここにいることがその証明です。違いますか?」
「いいや、確かにそれは証明になり得るだろう。ライが私を素晴らしい人間だと、そう思ってくれていることは純粋に嬉しいよ。ありがとう」
内心ほっと息をついた。しかしそれと同時に、どこか悲しい気持ちにもなった。
「ライ、いつか君が、その身に秘めている何かをさらけ出せる相手が見つかることを祈っている。それは私でなくてもいいし、そのとき私にそれを明かさなくてもいい」
ピタリと動き続けていた頭が止まる心地だった。ああ、僕は。
「ただ叶うならば、ライ、君の帰るところの一つになれたら良いと、そう思っているよ」
そう言って穏やかにマスターは微笑んだ。
「突然ですね」
なんとか笑みを貼り付けて、返して。
「ああ、突然だ。……さて、私は夕食を作ることにしようか。ライ、食器を出すのを後で手伝ってくれ」
「はい」
ああ、全く僕は嘘つきだ。