2021.12.5大阪と、12.18東京での超グラデュエーションパーティの為につくったタッセルにつける為に書きました。
これから彼らが、私達に見えないところにいるとしても、
ずっと変わらず一緒にいて、
幸せでいてくれますように・・・・
という思いを込めてつくりました。
@koaki_kito
「ええっ!オーストリアに留学?!」
放課後、学園のカフェで部活までの時間をすごしていたら、隣の席の女の子たちの声に、持っていた甘々フラペチーノが手から滑り落ちそうになった。
「し~っ!噂だけどね。だからアルスマグナを辞めるんだって」
しかも、アルスマグナ・・だと?
榊原タツキはますます女の子たちの会話に耳を注意深く傾ける。
「そうなんだ~。泉奏君・・・とうとう本格的にピアニストになるんだね。あっ、じゃ転校ってことも?」
「ありえるよね~」
えぇ!?奏君が転校?
なにそれ、僕、聞いてない!
「神生君も脚本家の先生のところに弟子入りして学校辞めるらしいし、朴くんは韓国で…アレでしょ?みんな・・いなくなるんだね~」
ちょ、ちょっとまって、
アキラ君も学校辞めるって?
脚本や演出の勉強のために、放課後、時々アルスの演出をしてくれている人のところに通っているのは知ってるけど、学校辞めて弟子入りするとか聞いてないし、
朴くんが韓国に戻る話もきいてない!
「あっ、もう時間だ!」
そういうと彼女たちは飲んでいたカップを持って立ち上がり
「それから、榊原くんもさぁ・・」
歩きながら僕の名前も聞こえた。
え?え?僕?僕がナニ?どういうこと?!
僕も立ち上がって彼女たちを追いかけようとしたら
「よう!タツキっくもここで時間つぶし?」
反対側から奏君とアキラ君がやってきて声をかけられた
「アキラ君!奏君!」
「相変わらず、甘そ~なもん、飲んでんなぁ~」
同じ丸いテーブルの向かいに僕みたいに甘そうな飲み物を持っている奏君と、お茶をもつアキラ君が座った。
「今、女の子たちがね!アキラ君が辞めて奏君が・・えっと韓国に弟子入りして・・・」
「は?何言ってんの?お前!?」
アキラ君があきれた顔をする
「タツキ先輩、落ち着いてしゃべってください。なぜ俺が韓国に弟子入りるんですか?」
「今ね、女の子たちが!」
「はいはい、これ飲んで」
僕のドリンクを渡されて、一口飲み、
ふう~っと息を吐く。
「奏君がね、オーストラリアに留学するって」
あれ?なんか違った?あれ?
「なんでコイツがオーストラリアに行くの?肉留学か?オージービーフか?!」
「アキラ、黙ってください!」
奏君におこられて、アキラ君が首をすくめる。
「タツキ先輩、続けて」
「そ、それでね、アキラ君が学校辞めて、演出家さんところに弟子入りするって」
「えっ!俺、学校辞めちゃうの?!弟子入りって相撲部屋みたいだな」
「あと、ウィトっちが韓国に帰るって」
「・・・朴は元々日本が母国なんですけどね?」
あ・・そうだった。
ウィトっちは日本で生まれて、韓国人のお母さんがいるけど、お父さんもお母さんも日本にいるから、帰るのは日本なんだっけ。
「それで?」
奏君はちょっとだけあきれ顔で聞く
「僕は・・わかんない。僕の話の途中で行っちゃった。何だろう?」
「タツキ先輩は」
語気を強くして奏君がいう。
「俺たちに隠して、学校を辞めたり留学したり、年明けたらアルスを辞める以外に、なにか変化があるんですか?」
えっ?僕、1月になにかあったっけ?
ん~っと、ん~っと・・・
「・・・・ない」
「ですよね?俺たちもないです。俺もアキラも、変わらず九瓏ノ主学園に通う、2年生です」
「うん」
「きっと朴も同じです」
「・・・だよね?」
ここで奏君がふわっと笑う。
「安心してください。俺たちはずっとここにいます」
よかった。
僕たちがアルスマグナでなくなったら、みんなどこかに行っちゃうのかと心配になったけど、ずっとまだここにいるんだね。
でも・・
「奏君は・・年明けたら何するの?」
「年、明けたらですか?」
右手をアゴの下に沿えて、少し斜め上を見るのは、奏君が考えているときの癖だ。
「そうですね、少しピアノに集中して、あとは勉強したいことがあるので」
「それってなに?」
「何と言われても・・あぁ、経済学で読みたい本があります」
「そのあとは?」
「そのあと?・・ん・・・」
「将来は?」
僕がついついぐいぐい前のめりになってしまい、奏君は少しのけぞった。
「将来は・・分かりませんけども、ピアノを続けているとは、思います」
奏君のお家は音楽一家だから、それはもう泉家に生まれた宿命なんだろう。
「でも、少し会社経営にも興味がありますね」
「そうなの?すごい!
じゃ、アキラ君は演出家さん?」
ずっとニヤニヤきいていたアキラ君も急に自分の話になって、慌てる
「おう・・そうだな。将来は分かんないけど、今は演出とか脚本とか勉強しようって思ってるぜ」
「普通の勉強も、そのぐらい熱心にできるといいんですけどね?」
奏君が口をあさむと、
アキラくは小さい声で「うるせぇ」って答えてた。
はぁ~っと椅子に深く腰掛け直す。
「タツキ先輩は、榊原家を継ぐのでしょ?」
「うん、次期党首だからね」
さらっと口にする。
「そういえば、先生は九瓏ノ主学園の副学園長になるらしいですね」
「すげぇな、あの先生がだよ。途中で飽きちゃわないか、俺は心配だね」
アキラ君が笑いながら言う。
確かに!
事務仕事が一番嫌い~っていつも言ってるのに、副学園長なんて事務仕事いっぱいだろうし、「や~めた」って言わないかなぁ。
って想像したら、心配より、面白くなってくる。
でも・・
「忙しくなっちゃって、結局、みんなバラバラだね」
言葉にしちゃうと、やっぱりすごく寂しくなって、顔を伏せると、奏君がそっと僕の肩にポンポンと手をのせ
「大丈夫です、みんな九瓏ノ主学園の中にいますよ」
って微笑んでくれた。
アキラ君も
「会えなくなるわけじゃないしなっ。」
って笑ってくれた。
翌日、ダンス部の練習のため部室に向かっていた。
いよいよラストライブ。今回のツアーのセトリは盛沢山で、しっかり練習をしないとなかなか頭にも体にも入ってこない。
練習に集中しているうちに毎日が終わってしまう。
そのほうがいいよね。最後の日を指折り数えるより、必死で踊る毎日の方が楽しい。
昔に比べたら筋肉痛がマシなのは、それだけ自分が成長して、体がダンス向けになっているからだろう。
毎日、体のどこかが痛いのだが、その痛みも今は愛おしい。
この痛み・・・いつまで覚えていられるだろうか?
今ほどダンスを踊らなくなったら、この心地いい痛みを味わうこともなくなる?
「タツキ先輩!!」
部室にはいると、ウィトっちに声をかけられた。
アキラ君も奏君もウィトっちも、そろって着替え終わって、ストレッチをはじめるところだったみたい。
今日はこれから5人だけの練習があり、そのあと、6人と合流することになっている。
「ウィトっち~」手を上げて挨拶し、着替えようとすると、
「タツキ先輩、これあげます」
ウィトっちが寄ってきて、小さい包みをくれた。
そこには「クロノス神社」って書いてある。
「なに?お守り?」
中を開けると、タッセルのキーホルダーが入っていた
タッセルはいろんな色が混ざっていて、羽のチャームが付いていた。
「昨日、奏先輩に聞きましたよ!タツキ先輩が、僕たちが遠く行っちゃうかもって心配てるって。
僕はどこにも行きませんよ。まだ当分、九瓏ノ主学園の1年B組にいる予定です」
昨日の事、奏君やアキラ君に、心配させちゃったんだ。
「それでね、前にミコト先輩に教えてもらったのを思い出したんです。クロノス神社にあるお守りの事!」
奏君とアキラ君もやってきて、奏君がタッセルを指して言う。
「これ、5色が混ざっています。俺たちみたいでしょ。」
「僕たち?」
「混ざりきっているようで、でもどの色にも染まらない。ごちゃっとしているようで、ちゃんと纏まっている。
ほら、ね?」
僕は手にとって、タッセルを眺めた。
「それに、羽が生えてる。それでどこへでも行ける。でも、どこに行っても、この5人は一緒。」
アキラ君・・・
「もしかしたら、物理的に離ればなれになる事もあるかもしれないけど、
それでも心はこんな風にここにあって、また戻ってこれるように、さ。」
そういうと、アキラ君は僕が持っているお守りと同じものを見せてくれた。
「そうですね。・・みんな大人になって、違う場所に行っても・・・また5人のところに戻ってこれるように」
奏君もニコッと笑って、同じものを見せてくれた。
「僕、5つ買ってきたんです。みんなといつも一緒にいられるようにって。」
ウィトっちも自分のを見せてくれる。
「5つも買うのでミコト先輩にちょびっとだけオマケしてもらったんですけどね」
えへへ・・とウィトっちが笑う。
「先生の分ももちろんあるので、あとで渡しましょうね」
そう言ったところにちょうど扉があいて
「お~い!お前ら、なにやってんの?」
ケント先生が入ってきた
「あっ、先生~~~あのね~~」
ウィトっちは先生の所に飛んで行った。
いつか、本当に僕たちがこの九瓏ノ主学園を卒業する日がきても、
僕たちがここにいた時間も
メイトさんたちと一緒に楽しい時間を過ごしたことも、
いっぱい練習した日々も
いっぱい泣いた日々も、
そして
こんな大好きな仲間たちがいたことも、
ずっとずっと、永遠に心の中に閉じ込めておきたい。
アキラ君、
奏君、
ウィトっち、
ケント先生、
そして、コンちゃん。
九瓏ノ主学園に関わってくれているすべての人たち、
そして、大好きなメイトさんたち。
誰かの心の中に僕たちがあり続ける限り、
僕たちの時間はココにあって
それが、ほんとうの事だったんだって。
証明できると思うんだ。
だからね、
僕と、僕たちのこと。
ずっと忘れないで・・・
僕も
ずっとずっと、みんなの事、
忘れないから・・・・・・ね。
~終わり~