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華と虎と羊

全体公開 4 7706文字
2021-12-04 22:48:12

張華×文虎
※文鴦伝異聞前提の話です

……やっぱり、暇なんですか。あなたは」
 ジトリと嫌味な視線を向け、彼を一瞥するや、文虎は相変わらずの皮肉を投げつける。それを持ち前の柔和な微笑でするりと躱して、張華はスッとごく自然に文虎の隣へ腰を下ろした。油断も隙もない。
「むしろ、忙しすぎて猫の手も借りたいもので。サボりに来ました」
 堂々と職務を抜け出して来た罪を告白して、張華は更に膝をこちらへ幾分か寄せる。反射的に、文虎は半歩後ろへ下がった。
 わざとなのだろうが、彼の自分に対する距離感は少し近すぎる。以前に比べると、張華のことを理解してきた文虎ではあったが、まだそこまで親密になった覚えはない。故に、侵されたくないパーソナルスペースだけは死守した。
「司馬亮殿は少々、真面目が過ぎるようですね。人間、もっと肩の力を抜かなくては」
 賈南風の専横した時代が終わり、現在の事実上の支配者は司馬亮だった。景帝、文帝の弟に当たる彼ならば血筋としては順当。……ではあったが、実力や性格で言えば、少し心許ないのも事実であった。
「ボクを道連れにしないで下さい」
「まあまあ。蜜柑でも食べます?」
 来た時から気になっていたが、彼は小脇に大きな木箱を抱えていた。張華がそれを開ければ、中にはぎっしりと詰められた橙色の果実が。
「なんで蜜柑なんですか」
「頂いたのですよ。ですので、お裾分けに」
「じゃあ、最初からそう仰ってくれればいいのに」
 油断をしていると物理的な距離感どころか、性神的な距離までも詰めて来ようとするのだ彼は。そのせいで、文虎はついつい無駄に警戒してしまうのである。
……で。食べないのですか?」
 訊ねながら張華はすでに、一個目の蜜柑の皮を剥き始めていた。人の家で勝手に寛ぐ彼の図太さにも、もう慣れた。
「まあ、貰えるものは頂いておきましょうか」
「そうこなくては」
 箱の中から蜜柑を一つ掴み取って、文虎は張華と同様にその皮を剥き、実を頬張る。思いの外、甘くて美味しかった。
……何、じろじろ見ているんですか」
 ただ蜜柑を頬張っているだけの文虎を、張華はやたらと上機嫌でニコニコと見つめる。他人に顔を凝視される居心地の悪さと言ったらない。その視線を察知するや、文虎はすぐさま拒絶の意を視線にて示した。
「いえいえ。お気になさらず」
「気になるに決まっているでしょう。……まったく。ボクの顔なんか眺めたって、何も楽しくなんてないでしょうに」
 文句を言いながらも、文虎は三粒目の蜜柑を口に放りこむ。張華の視線に気を取られ、心なしか、二粒目までよりも蜜柑の味は薄く感じられた。
「楽しいですよ、すごく。あれこれ理由を拵えてまで、貴方とおしゃべりをしに来ているのですからね。楽しくないわけがない」
 つらつらと流暢に紡ぎ出される、砂を吐きそうなセリフ。その甘さのせいか、本格的に蜜柑の味が分からなくなってしまった。せっかく、美味しい蜜柑だったのに勿体ない。それもこれも、彼が反応に困る発言を堂々としてくるのが悪いのである。
「それはそれは、ご苦労様です」
「本当にそう思っていらっしゃるのでしたら、少しは僕の努力を汲んで優しく接して下さると嬉しいのですが」
 そんなの皮肉に決まっている。解っているくせに、張華は微塵も動じない。
 どれだけ邪険に扱われようと、彼は嫌な顔一つしないのだ。それどころか、それすらも楽しんでいるかのようにニコニコと笑うものだから、文虎は呆れて毒を吐くのも馬鹿らしくなる。
……だいたい。以前の質問だって、はぐらかされたままだし」
「ああ。その件ですか」
 また、彼のペースに呑まれてしまっている。その自覚が文虎にはあったから、深い溜息を吐いて、腹いせ紛いに張華へ非難の視線を浴びせた。こちらの気持ちだって、汲んで欲しいものだと言わんばかりに。
「そんなに知りたいのですか。僕が貴方に想いを寄せている理由を」
……ハッキリ言わないで下さい」
 断定的な単語を用いられると、どうしても照れ臭くなってしまう。居たたまれなくなった文虎は、露骨にプイと彼から顔を背けた。張華がクスリと笑うのを気配で察して、少し腹立たしさを感じながら。
「いいでしょう。では、今日はそのお話をいたしましょうか」
「別に、興味はないですけど」
 天邪鬼な返答をしたはいいが、実のところ、文虎はその答えが気になって仕方がなかった。それこそ、恥ずかしながら、夜も眠れなくなるほどに。
「さて、どこから話しましょうか。あれはまだ僕が羊飼いになって間もない頃の話です」
「ちょっと待ってください?何の話をするつもりですか!?」
「ですから、貴方に恋をするまでに至る僕の歴史についてです」
「こ、恋って……
 思わず赤面しそうになるほど、その単語は文虎にとって馴染みのない存在だった。自分とは無縁な言葉の甘ったるい響きは、文虎を絶句させるのに充分効果的だった。その間に、張華の謎の思い出話は進んでゆく。
「僕の飼っていた羊の一匹が、新しい命を宿しました。初めて、僕はその出産に立ち会うことになったのです」
「はあ……
「産まれた時の感動と言ったら、ひとしおでした。他のどの羊よりも、その子を愛おしく思った」
 適当な生返事で相槌を打ちながら、文虎は子守唄のような張華の語りを聞き流した。
「その仔羊を僕はポチョムキンと名付け、とても可愛がりました」
「ぽちょ……なんです??」
「僕が手塩にかけたポチョムキンは、元気にすくすく育ちました」
 奇怪な名前の羊との思い出を、張華は懐かしげに話す。その表情からも、彼がその羊をたいそう気に入っていたことが窺えた。が、それよりも、文虎はその名前の方が気になって内容に集中できなかった。
「けれど、ポチョムキンは残念ながら雄羊でした」
「どうして、それが残念なんです?」 
「雌ならば乳が出ますし子も産みますが。雄は交配する以外に用途がないのです。家畜として飼うには」
「なるほど」
 言われてみれば、確かにその通りである。文虎は家畜を育てたこともなければ、それを生業とした経験もない。故に、張華の説明を得てようやく雄雌の差を理解するのであった。
「だから、雄羊は食肉として売ってしまったりするのです」
「もしかして、そのポムチョキンも?」
「ポチョムキンです。ええ。売られてしまうことになりました」
 話の流れ的にそういう結末だろうかと推測したが、どうやら文虎の予想は的中したようで。ポチョンキムでもポチョキンムでもなんでもいいが、売られてゆく仔羊を想像すれば、文虎とて多少は不憫に感じる。
「とても悲しかった。羊飼いとしては、一匹だけを特別扱いするべきではないと分かっていても。僕はポチョムキンだけは手放したくなかった」
 自分が手塩にかけて育てた生命が、死に絶えるのは辛いことだ。所詮、家畜は商品であり、いつかは失われる命と知っていても、そう簡単に割り切れるものではなかった。
「だから……
……だから?」
 政治家としては冷淡な側面も持つ張華とて、やはり人の子。そういう人情の持ち主なのだと知れば、文虎の彼への見方にも多少の変化が生まれるというもの。
「僕はポチョムキン自ら捌いて食べました」
………はあ!?」
 という前言を最速で撤回させられることになろうとは、さすがの文虎にも想定外だった。
「食べたんですか?ご自身で?」
「はい。仔羊の肉は柔らかくて、とても美味しかったです」
 我が耳を疑った文虎の念押しに、満面の笑みで張華は答えた。愛情を注いで育てた仔羊を売るのが惜しいからと、自ら捌いて食べたのだと。ご丁寧に味の感想まで添えて。
「ちょっと、意味が分からないですね……
 それが文虎の素直な感想だった。彼の行動はあまりに狂人じみている。サイコパスだ。可愛い仔羊をこの手で殺めるくらいならば、売ってしまう方がまだマシである。少なくとも、文虎ならばそう考える。
「そうですか。失うくらいならば、その命を血肉に変え、自らの一部としてしまいという、この深い愛。ご理解いただけませんか?」
「ええ。理解不能です。そんな恐ろしい思想、普通じゃないですよ」
 文虎は全否定と共に、張華を異教徒でも見るような目で睨みつける。何を考えているか分からない男というのが、文虎の彼に対する印象であった。その評価への確信はたった今、強固なものへと変わった。
「ほら、食べちゃいたいくらい可愛いとか言うじゃないですか」
「それは比喩表現であって、実際に食べてしまう人はいないと思いますけど」
 その対象が羊ではなく、人間であったならば大問題である。彼の行動は正気の沙汰ではない。そう、その対象が人だったなら……
「ちなみに、この話とボクの質問にはどういう関係が?」
 嫌な予感しかしなかったけれど、文虎は念のため訊ねてみる。
「それはもちろん、食べちゃいたいくらい可愛いという……
「殴ってもいいですか」
「痛いのは苦手なので、ご遠慮願いたいですねえ」
 張華の下らない発言を最後まで聞くことなく、文虎は食い気味に暴力の許可を求めた。彼の話を真面目に聞いてしまった、自分に対する怒りを発散したいがために。
「だいたい、それじゃあ理由になっていないです」
「貴方を見ているとポチョムキンのことを思い出すんですよねえ」
「羊に似ていると言われても嬉しくないんですけど……
 どこをどう比較して、似ていると彼が称するのか甚だ疑問である。これまでの長い人生、文虎は一度たりとて、羊に似ていると言われたことは無い。
「ポチョムキンには母親違いの兄がいたのですけど、それはそれは仲が良くて。いつもその後ろをちょこちょこと付いて歩いていました。ちなみに、その兄は先に売られてゆきました」
「最後の情報要ります??」
 余計な一言が加えられはしたが、要するに、仲睦まじい兄弟羊が自分たち文兄弟の姿に重なるという話なのだろう。兄弟という共通点だけならば、他にも当て嵌まる選択肢が数多あると思うが。
「ポチョムキンはね、可愛いのですよ。羊たちの群れの中では協調性があって、よく馴染んでいた。人当たり、もとい羊当たりが良かったのでしょう」
 そういうところも文虎にそっくりだ。とでも言いたげな視線がこちらへと向けられた。文虎はそれを否定するみたく、唇を不満げに引き結ぶ。
「だけど、僕にだけは冷たかった。お世話はさせてくれるのですけど、撫でようとするとすぐに逃げてしまう」
「単に嫌われていたんじゃないですかね。それ」
「はは。これは手厳しい」
 あるいは、本能的にヤバい人間だと悟って避けていたのか。だとすれば、なかなか賢明な仔羊である。
「でもね、諦めて構うのを止めると何故か自分から寄ってくるんです。そして、甘えるみたいに僕の服の裾を喰む」
「それのどこがボクに似てるって言うんですか」
 若干、声を荒げ気味に、文虎は抗議の医
意を示した。構われるのが好きじゃないのは仰る通りである。文虎は比較的一人の方が気楽であった。側に居て欲しいと思うのは兄や父くらい。適度な距離感を保ってくれるならば別であるが、張華のようにしつこくされると敬遠してしまう。
 しかし、それに続く発言は聞き捨てならない。誰がいつどこで、彼に甘えたというのか。少なくとも、文虎の記憶には存在せず、完全なる張華の想像でしかない。
「似ていると思いますよ。貴方は存外に寂しがり屋だ」
「そうやって、あなたは何もかも見透かしたような物言いをされますけど」
 張華の指摘が癪に触った文虎は、声音に更なる苛立ちを混ぜる。これではまるで、図星を指されたみたいではないか。そう気付いた時にはもう、憎まれ口を引っ込められなくなっていた。
「結局、ただの当てずっぽうでしょう?」
「いいえ。観察眼です」
……どうだか。少なくとも、ボクはあなたに寂しい素振りなど見せたことがないはずだ」
 張華の飄々とした態度が余計に文虎をむしゃくしゃとさせ、ムキになって言い返させる。らしくない、子供っぽさの垣間見える反応を示す自分に、文虎自身が一番驚いていた。
「ふふ。では、一旦はそういうことにしておきましょう」
……なんか、それも腹の立つ言い方ですね」
 時折、張華はこうして意地の悪い言い方をすることがある。けれど、文虎を本格的に怒らせるまでには決して至らず。常に絶妙なタイミングで、はぐらかして終わるのだ。
 その度に、文虎は釈然としない気持ちを抱えたままにされるのだ。あたかも彼の手掌の上で踊らされているような、そんな心地に。
「まあ、冗談はこの辺にして」
「もう。やっぱり、作り話だったんじゃないですか……
 散々、文虎を揶揄った挙句に、張華は満足げに微笑んで会話を締め括る。やはり、彼の話を真面目に聞いてしまうと、馬鹿を見るのは自分自身だ。そう思いながら、文虎は呆れ顔で溜息を吐いた。
……まったく。嘘を吐くならせめて、もっと一般的な名前にして下さいよ。ポンチョキムじゃなくて」
「ポチョムキンです。もしかして、わざと間違えてますか?」
 ポチョンムキでもポンチョムキでも何だっていい。そんな仔羊は端から存在しなかったのだ。多分。
 彼の言うことはいつもいつも、嘘か実か判断しかねる。今の話だって、本当に作り話だったのか。真実は張華にしか分からない。それに文虎のことだって。彼がどこまで本気で、自分に対して歯の浮くような発言をしているのか、未だ文虎は計り兼ねていた。
「ご存知ですか。人間は何かを与えてくれた者よりも、自らが何かを施した相手に強く惹かれてしまうものらしいですよ」
 張華の語り口調が変わった。……ような気がした。今し方、真面目に聞く価値はないと一蹴したはず彼の話へ、文虎は再び素直に耳を傾けてしまう。それほどに、張華の声は耳に心地良かった。
「つまりは、うっかりボクのことを助けちゃったものだから好きになっちゃった。と仰りたいんですか。あなたは」
「まあ、簡潔に言えばそういうことですかね」
 ようやく、彼は本音を語った。……とは、限らない。それが口から出まかせでないという確証はなかった。声音を変化させたことさえ、張華の思惑の内だとしたら。文虎はまんまとその策にハマったということになる。
「そういうのを錯覚って言うんですよ」
 もし仮に、彼が文虎に固執する理由が今述べた通りだったとして。それはあまりに単純すぎた。張華がそんな一目惚れのように、恋に落ちる人間にはどうしても思えず。やはり、これも嘘なのではないかと文虎は疑う。
「果たして、そうでしょうか。ひとたび、か弱い命をこの手に抱けば、誰だってそれに愛おしさを覚えるものです。それを愛と呼ばずして何と形容しましょう」
……あのね。ポチョムキンの話はもう沢山です。ボクはか弱くもなければ、仔羊でもない」
 張華がか弱いなどと形容するものだから、てっきり先の物語に話が逆戻りしたのかと思った。だが、それが思い違いであることに、続く彼の言葉で文虎は知る。
「一度は死を受け入れようとしていた貴方の姿は、本当に頼りなげで儚い存在でした」
……あの時のことは、よく覚えていないんですよね」
 それは彼が文虎の命を救ってくれた時の記憶だろう。しかし、文虎はその記憶が曖昧なのであった。何しろ本当に瀕死だったから、記憶が混濁していたのだろう。
 張華に助けられたことだけは、はっきりと覚えていた。でも、どうやって救われたのか。その時、彼と何を話したのか。或いは、自分が何を思ったのか。文虎はまるで思い出せなかった。
「死にたくないと僕の手を固く握った貴方のいじらしい姿に、僕は心打たれたのかも知れません」
「だから、覚えていないんですって」
 張華の話すそれが真実かどうかさえ、文虎には分からなかった。覚えのない記憶を語られても、なんと応えていいものやら。
「僕の胸で泣き縋る貴方は、とても愛らしかった」
「ボクが覚えていないのを良いことに、適当な記憶を捏造してませんかねえ!?」
 だんだんと大袈裟になってゆく辺り、やはり張華の話は作り話のような気がした。というか、そうであって欲しかった。それが事実であったならば、恥ずかしくて死にたくなるから。
「ふふ。覚えていないのならば、いいのです」
「また、そういう含みのある言い方をする……
 本心の読めない微笑みで、張華はその話題もやはり、はぐらかして終えてしまうのだった。何もかもがあやふやなままで、文虎はまた彼の言動に惑わされ続ける。
「ポチョムキンはもうこの世にはいませんが、貴方はこうしてまだ生きている」
 そうやって、意識させるように仕向けるのだって、張華の思惑通りなのかもしれなかった。
「だから、僕は執着し続けると思いますよ。貴方が死ぬまで」
「優しげな顔をして、えげつないことを言いますね」
 それは絶対に諦めないという、文虎に対する宣戦布告だった。厄介なこと、この上のない。
 果たして、自分にそこまで執着する意味があるのか。自己評価のさほど高くない文虎からすれば、そこも疑問点ではあるのだが。それを彼に訊ねたところで、まともな答えが返ってくる気がしないので、文虎は口を閉ざした。
「もしくは、食べちゃったら満足するかもしれませんが」
……それ絶対、生々しい意味合いの方ですよね」
 あはは。なんて、張華は笑って冗談めかして言うが。こっちは少しも笑えない。本当に食われてしまっては、たまったものではない。無論、どちらの意味合いでも。
「ああ。こんな面倒なことになるなら、あのまま死んだ方がマシだったかも」
「そんな。思ってもいないことを」
……まあ、思ってもいませんね。これっぽっちも。生きていれば、様様です」
 まるで張華を厄介者のように扱ってはいるが、これでも助けて貰ったことには心底感謝しているのだ。
 その代償が、この現状であるならば甘んじて受け入れるしかない。と言っても、彼の思惑通りになってたまるかというのが、文虎の今の本音ではあるが。
「さて、そろそろお仕事に戻りますか。生真面目な司馬亮殿にサボりが見つかったら大変だ」
「はいはい。暇潰しに満足したなら、さっさとお帰り下さい」
 乱雑に手のひらを前後へ振って、文虎は邪険に追い払う仕草をする。こういう冷たい態度を取ったとしても、張華は諦めてはくれないのだろうと知りつつも。
「はい、では、また来ます」
 もう来るな。と言いたい気持ちもあったが、文虎は諦念気味の溜息だけでそれに応える。だって、どうせ来るなと言ったとしても張華はまた必ず、文虎を構いに来るのだろうから。
 文虎はせいぜいポチョムキンの二の舞にならぬよう、気をつけるだけ。心配ない。自分はか弱い仔羊ではないのだから。そう言い聞かせながら、文虎はポツンと残された蜜柑の箱の蓋を閉じた。


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