了遊(ほんのり)。
ラキカ3のワンドロライ参加作で、お題「冬」。
ワンライ初めてやったけど案の定時間ギリギリで、ウワーッ言いながら書いてた。楽しかった。
@d9_bond
「夜は冬が一番好きだ」
遊作の言葉は唐突で、了見は夜空を見上げるその横顔をまじまじと見た。白い呼気が三度、冴えた空気に溶けて消える。
今日は学校の課題を口実に遊作が了見宅を訪ねてきたのだが、課題を片付けた後も最近出たカードの話やら他愛のないやりとりをする内にすっかり遅くなってしまった。最寄りのバス停まで送るという口実で、了見は遊作と海辺の遊歩道を並んで歩いている。
あたりは真っ暗で、街頭くらいしか明かりはない。オリオン座が思ったより高い位置にいるのが目についた。
「夜?」
了見が問えば、遊作は淡い笑みを見せる。
「冬は一年で一番星がきれいに見える」
なるほど。確かに冬の空は空気が澄んでおり夜も長い。観測には一番いい季節だ。
「星が好きなのか」
「そう……でもない」
こくりと首をかしげる。
「多分、冬の、夜が好きなんだ」
「星がきれいに見えるから?」
「一年で一番星がたくさん見える気がする」
「──確かに、一等星以上の星は冬が一番多かったな」
了見の言葉に遊作はぱちりと目を瞬く。
「夜が長いからそんな気がするのかと思っていた」
「観測しやすいという意味ではその認識も間違ってはいないが」
言いながら了見は、心中で藤木遊作の情報に『冬の夜空が好き』と付け加えた。春先からそれなりに遊作と過ごす時間は増えていたが、彼の嗜好についての情報はなかなか増えないし推測も多い。
「初めて聞いたな」
「初めて言ったからな」
遊作は、ふふ、と小さく笑った。
「人にこういう話をするのは初めてだ」
「……そうか」
了見も釣られて笑みを零す。
「そういうことなら、都合の良い日にまたうちに来ると良い。天体観測をするなら、立地が良いからいくらでも見える」
なんならそのまま泊まっていけばいい、と付け加えれば遊作は立ち止まった。どうした、と遅れて足を止めて見やると、大きな目を一層に見開いてこちらを見ている。
「いいのか?」
「そう言っている」
疑問符を浮かべながら言うと、遊作はハッと我に返りぶんぶん頭を振った。
「ありがとう。嬉しい」
珍しく勢い込んで言う。
「──好きだって、言って良かった」
そう付け加えられた言葉がなんだが別の意味にも聞こえてどきりとした。