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曲がり角の先の9年と、妄想筋力のはなし

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2021-12-09 22:30:14

2021年ぽっぽアドベント、テーマは「私の望みの歓びよ」。12/11の記事を担当いたします!
https://adventar.org/calendars/6690
#ぽっぽアドベント2021

Posted by @haru_halll

思えば今から遡ること9年、あの日(?)Qがナショナルギャラリーで、物悲しい絵ですねって言わなければ、わたしは今ここでこうしていることもなかったでしょうAlways makes me a little melancholy

こんにちは、ハルと申します。突然9年前に遡ってしまいました。初めてのぽっぽアドベント!どこから話を始めたらいいのやら、12月がやってくると、毎日わくわくアドベントカレンダーの窓をあけるしあわせを受け取っていたぽっぽアドベントに!今年は一日お邪魔させていただくことになりました。やや緊張しております。長くなりそうな予感がしますが、9年前に突然始まって、今日まで続くわたしのとある曲がり角の先、公開されていない映画の感想本を出すに至った経緯の思い出話に、しばしお付き合いいただければ幸いです。

9年前、つまり2012年の冬、007映画「スカイフォール」は公開されました。
ロンドンはトラファルガー広場に面して建つナショナルギャラリーのRoom34、ターナーのテメレール号の絵の前が、永遠に我らの待ち合わせスポットになったのもこの年でした。
https://www.nationalgallery.org.uk/visiting/floorplans/level-2/room-34

ボンドの前に、いやわたしたちの前にふらっと表れたモッズコートのつかみどころのない眼鏡のQに人生のルートを曲げられた人、スカイフォールした人、果たして世界に何人いるんでしょう。ちょっとした村ひとつくらいは軽くいると思う、おれ、村人、沢山知ってる。
その数年後にヨークシャーをレンタカーで走りながら、「Qがあの時LANケーブルを引っこ抜かなかったら、わたしたちきっとここにはいなかったでしょうね」って話したことや、Room34で空気椅子をしながら(映画の位置にソファはないのです、なんということだ)まだ顔も知らないフォロワーさんと待ち合わせをしたりしたこともあるわたしもまた、勿論そのうちの一人です。

Qをきっかけにベン・ウィショーさんという存在に出会い、遠く思うばかりだったロンドンのお芝居を知ってゆき、日本とUKを行ったり来たりする数年のあと、スカイフォールに次ぐ007作品「スペクター」の公開時期にあわせてロンドンに語学留学したりもしました。そもそもは「プレミアの時期にたまたま旅行が当たる確率低すぎない?つまりざっくりその周辺にロンドンに住んでるしかないんじゃない?11ヶ月あればどこかで当たるだろ」がきっかけだったあの11ヶ月。まじです。おかげさまでロイヤルアルバートホールの前の通路でサム・メンデスに(人生ねじ曲げてくれて)ありがとう!って言えました。

帰国後はすっかり一年の1/4くらいをブリテン島にわたって暮らすことが人生の優先事項になりました。ジェームズ・ボンド映画最新作の「ノータイムトゥダイ」(以下NTTD)の制作発表があったのも、そんな2019年のUK旅の途上のことでした。

(いつものように(?)ヨークシャーをさまよっていたら明日記者発表するよ!のニュースが飛び込んできて食べていたおにぎりの味がわからなくなったりなどした)
(失われたおにぎりの味とともに心に刻まれたマラム、とてもよいところなので是非いってみてください)

そして迎えた2020年。当初公開日だったこの4月までにも、まーーいろいろ!ありました!よね!!記者発表までにも、監督は交代するし、公開日は伸びるし、ようやく監督がキャリー・フクナガに決まってタイトルも発表されたものの、撮影中の怪我もあって、スケジュールがタイト過ぎない?!など心配も尽きず、もはやNTTDを本当にこの目で見るまでは公開されるなんて信じないからなという心境だったんです、そもそもが、初めの公開日までの時点で!おれ、そんな村人、沢山知ってる。(皆様お元気ですか)(ご健康をお祈りしております)

その月の末にロンドンでのワールドプレミアを控えた2020年3月、どうなるのかなあという不安はずっと感じつつ、4日にはまだ、一足早く主演のダニエル・クレイグのトーク付き上映のチケットをお友達にとってもらったりなどしていたんでした。
しかし翌5日、NTTD公開日の延期が発表されます。おそらく世界に先駆けて公開されるUKの映画館のチケットの発売開始までのギリギリでのタイミングだったのでしょう。これがこのあと3度繰り返されることになる延期の1回目だとは、すくなくとも私はまだ、思っていませんでした。同年11月の公開までの7ヶ月、その半年と少しを越えたら見られる、その時はそう思いました。それだけ経っても、世界は映画が公開されない状況かもしれない、っていうことを考えるのが怖かったのかもしれません。

当初の公開日にあわせてNTTDを観たテイで皆で感想を言い合うディスコード会が開催されたり(色んなNTTDを見ている人がいましたね)(ひよこ鑑定士のボンドさんってあれなんだったんだっけ?)、Twitterに妄想を縷々綴ったり(日常)する日々を過ごして迎えた9月頃、「NTTDを”観た”よ!っていう感想の本を、11月の公開日に併せて出したくない!?」とうっかり盛り上がってしまい、おりしもオンラインイベントが開催されることだし、これは出しちゃうか!公開日に感想本!!書いてくれる人いるかな!と具体化させつつあったところに飛び込んできたニュース、それは2回目の公開延期を知らせるものでした。



(この頃にかいたもの)

2020年の春からずっと、何かを楽しみにすること自体にブレーキをかけながら暮らしていた、何かの予定を楽しみにすること自体になんとなく罪悪感さえ覚える、そのように過ごさざるを得なかった人が多いのではないかと思います。自覚の如何に関わらず私もそうでした。

だから多分、延期の報せをきいても、強く反応する力はこの頃は持てなくて、ああそうだよね、なんとなくそうじゃないかと思っていたけど、って、諦めるのに慣れたような態度で受け止めた気がします。それが悪いとか良いとか言えると今でも思わないし、そりゃ諦めに慣れもするわって振り返りもするのですが、でも多分そのとき、ここで何もしなかったら、この本を出すのもやめちゃったら、もっと立ち直れない!って思ったんですね。
わたしも何かしなくては!ってなって出すのが妄想感想本っていうのが何だかもうよくわかりませんが、少なくともその時は結構必死だったんですよ!!他にもうなにもなかったんですよ!出すしかなかったんですよ妄想を綴った本を!あと、単純に、すごく楽しそうじゃないって思えたのでした。楽しそうじゃん!むしろ見ちゃったら語れないやつじゃん!皆のお話も聞かせて!公開は延期になっちゃったけど、今この瞬間にも、楽しみって思えること、まだあるよ……

そうして、なんとかかんとか、気を取り直すというよりはぺしゃんこのまま、匍匐前進で本を作り始めたのでした。2度目の延期が発表された直後だというのに、NTTD、観ましたよね?感想、聞かせてほしいんですけどで始まる依頼に何の戸惑いも見せず即「よかったよね!NTTD!!」って乗ってくれた、手練れすぎる参加者のみなさま、本当にありがとうございました
ぽっぽアドベント主催のはとさんも「ウン!見たよ!」って軽やかに応えてくれた一人で、ジャパンプレミアのレポートを書いてくれました。リアルすぎてジャパンプレミア行った気がしたよね。なんなら今も思い出として自分の中に存在するよね。そこにないものを見る能力を備えまくった人達の、見てないものを観た感想、どれもガチすぎて、ちょいちょいあれっ公開されたんだっけ?って分からなくなったりもしました。しっかりして!!妄想が完璧すぎてコンセプトが迷子!!

全力で乗っかってくださったみなさまのおかげで、NTTDを観たおばけに俺もなれました。ありがとうございました。

ちなみにこの後、旅に出たい気持ちが行き場をなくし、妄想で旅をするエア旅の本も出しました。いろんな事の休止期間、なんとか出た本が二冊とも妄想!エアが板についてきたぞ!






(発行時の告知)

2回目の延期で2021年4月に設定されていた公開日は、その後3回目の発表で、2021年の10月に設定されました。この目で見るまでは信じない、から、この目で見るまでは死んでる場合じゃないんだよ!という心のつよさ(?)も手に入れ、すっかり穏やかな心で2021年の10月を待てると思ったけど9月くらいから今度こそいよいよ本当に公開されるとなったら挙動不審になっていましたねみんなね。わかるよ。全然穏やかな心は手に入れられていませんでしたが、心の強度はすっかりあがったんじゃないかなって!思います!でももうこんなに待たなくて済んだらその方がいいな。いいですよね。どうか世界が平和でありますようにと、心から願います。

そして2021年10月、ノータイムトゥダイは遂に、やっと、ようやく、公開されたのでした。皆さん御覧になられましたか。観ましたよね。見られてない方もおられるかもしれませんね。わたしも観たと思うんですけど、もはや妄想していた時間のほうが長すぎ、妄想筋力が鍛え上げられすぎ、自分が本当に見たものなのか己の幻覚なのか、映画館に座っている間も自信がなくなる始末でした。映画館を出たあとなんてもっと自信がない。わたしは本当にノータイムトゥダイを観たんだろうか。まだ妄想のなかにいるのでは?だって!だって思い描いていたものが!!!!!!そこにあったんだもの!!これが現実?!現実最高!フクナガ監督ありがとう!本当にありがとう!!!!Qのねこが、そしてタナーさんの腕まくりが、あっいやこれ以上はよくない、ネタバレになってしまうので黙ります、でもこれはわたしの妄想じゃないんですよ!!ブラボー!!!!!

タナーさんの腕まくりはともかく、いや重大事ですが、カジノ・ロワイヤルから始まったダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドの物語の落とし前をきっちりつける、各方面に気配りの効いた作品だったと思います。毀誉褒貶はもちろんあれど、「終わらせてくれた」ことにお礼を言いたい気持ちになれるとは思ってもいなかったので、見終わった今はもはやありがとうしか出てきません。ありがとう、ダニエル・クレイグがボンドにならなかったら、QがナショナルギャラリーでQ?って呼ばれることもなく、わたしの人生も急カーブを描かず、その曲がった先のあらゆる出会い、いろんな人達、他の作品や、時間を知ることももしかしたらなく、それはそれできっと別の楽しい人生だったと思うけれども、今わたしはここにいられてとても幸せです。






ところで最後に突然これは宣伝なのですが、ベン・ウィショーを始め007にも出演している役者さんたちの出演作も多数取り揃えたロンドンはナショナルシアターが主催するナショナルシアターライブが何とお家で観られる!!そんな時代が来るなんて!眼鏡のインテリブルータスを演じるベン・ウィショーが見られるのもここだけ!のNATIONAL THEATRE AT HOME、作品別レンタル、1カ月/1年サブスクがあります、いかがですか。今ならタナーさんもマロリーもいるよ!あなたの人生の曲がり角がここにあるかもしれません。ぜひ!
https://www.nationaltheatre.org.uk/ntathome


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