本編見たか?!みたいな妄想ですが綾波とカヲルくんがシンジくんを創って育てる幻覚のさわり 春からねちねち直していたがあきらめて放流
これはすべてシンエヴァ公式薄い本がわるい これがおれの脳が導き出した「答え」や
@syuu_29
彼女はセカンドのように髪を伸ばすようになった。きままに跳ねる毛先はふわふわと揺れ動き、『きみ』はそれを気に入っているらしいので、すこしうらやましい。なにしろ最近の『きみ』ときたら何でも口に入れたがる。
「碇くん、痛いわ」
さすがにされるがままにはしないけれど、彼女はきみの望みをまずはいつも叶えてやる。それから自分の意見を述べて、まだなんにもわからない小さな『きみ』の手を包み込む。
ひっぱられ、唾液でじっとり濡れて束になった彼女の毛先を見つめていると、『きみ』を窘めていた無表情がすこし険のある影を落としてこちらを見た。
「なに」
「僕も髪を伸ばそうかな」
「……好きにしたら」
「うん」
まあ本当は伸ばす気なんてない。彼女と僕の見分けをきちんとつけて欲しいからね。たぶん彼女もそれはわかっているんだろう。
リリンの赤子はか弱くて不完全で、日々驚かされる。育児書が驚くほど本屋に立ち並ぶのも納得できる。要望をくみ取ることはむずかしいが、『きみ』に尽くせているという実感があるのがとくにいい。おむつ交換も、沐浴も、ああ、そうだうまく粉ミルクを溶くのも必要だった。やることは山積みで飽きない日々だ。
それでも君が泣いてぐずるのをしかたがないなと世話するのには喜びがある。
きみはつやつやの目玉で、僕らを見るといつもにっこりするね。反射反応だと知識があっても、そうして君が笑うとうれしい。ぽかぽかする、と彼女の言う表現はなかなか的確だ。
もちろん、突然泣き出す君を抱きかかえて歩き回るのも楽しい。君が腕の中にいるのがうれしくて、最初などは彼女と奪い合いをしたぐらいだ。眠ることを覚えてしまったからには交代で君をあやすしかないと妥協も出来たけどね。
這い回ることを覚えた君はどんどん家の中を攻略していく。物の少ない家の中でも乳幼児には危険なものはいくらでもある。徘徊の途中で抱き上げるといやがって小さな手足をバタバタ動かして声を上げて抗議するのがとても愛おしい。
鍵盤の音に、ゆりかごの中でまだ言葉を知らない君はただ笑う。彼女が音もなく規則的に揺らすその中で音を聞いてははしゃいで、きゃあきゃあと声を上げる。「すごいや」と言われるようでうれしくて、僕は柔らかく鍵盤を叩く。君と作ったメロディをなぞる。
君と連弾した記憶がよぎると一人で弾くのはさみしい。でもまたいつかは君と並んで弾くこともできるだろう。
ああ、早く大きくなるといいのに。
首が据わった君を膝の上に載せて抱きしめたい。君を肩車して散歩に行きたい。君を抱きかかえてこたつってやつにも入りたいな。君と迎えられなかった季節を何度でも味わいたい。
早く、早く――君に会いたいよシンジくん。
たのしみだね、と囁いて滑らかな頬を指先で確かめる。まだまだ時間がかかることはわかっていても、待ち遠しくてたまらなかった。
いつか、君は思い出してくれるだろう。
もしかすると僕らを責めるのかもしれない。そうだな――『それじゃ意味ないよ、僕のことなんか忘れてよ』なんて、寂しいことを言うのかもしれないね。だってこれは君の望みじゃない。もちろん、それぐらいはわかっているよ。
でも、いくらだって君の二の句を封じる言葉は用意できる。
僕も、彼女も、君を求めていた。君こそが望みだった。だから文字通り手を取り合って、僕らは『きみ』を手に入れたんだよ。
君の両親のいない世界でさえ――僕らは君に会いたかった。それだけが望みだった。それ以上の理由なんかなかった。
世界に溶け込もうとした君という概念を引き上げた僕たちは、都合よくも空っぽだった彼女の胎内から、『きみ』を創った。ただの人間になりかけの僕らではさすがに十四歳の肉体を創ることはできなくて、きみは赤ん坊になったけれど、それは構わなかった。君にまた会えるのなら十四年なんて大した時間じゃない。君を待つのははじめてでもない。
「おやすみ――シンジくん」
頬を寄せる。滑らかな皮膚を、その体温を感じる。
蕩けてしまいそうなぐらいの幸福がある。君という形をして、ここに。