@am_gamered
学校の帰り道。どのお店も華やかなツリーやサンタの人形、ぴかぴかのイルミネーションで着飾っています。
もうすぐクリスマスです。そして……クリスマスの後の、彼と出会った日も近づいていることを、燈子は何日も前から気づいていました。
───手に入れた『これから』の節目を───
サムクサイヌと初めて出会ったのは、静かな雪の夜でした。召喚されたばかりの彼はきれいなアットゥシ(着物)に、大きなエクンネクワ(山杖)。すぐに見慣れたけれど、最初は驚いたものです。
すぐに今風の服を買って……ベストやジャケットを着こなして、爽やかでとてもかっこよかったことを、燈子はよく覚えています。
早足で歩くうち、そのとき買い物をしたショップの前につきました。持っているものと似たデザインの服が、ショーウィンドウに並んでいます。
戦いが終わり春になって、冬のジャケットは着なくなりました。春物のパーカーは、生地の厚さだけでなく色合いも春らしい柔らかなものでした。そういう色も似合うのが、サムクサイヌのすごいところ。
服だけではありません。ふたりでお花見をしたり、サイクリングをしたり。冬にはできなかったことを、たくさん、できたのです。
雨が降ってきたので、燈子は折りたたみ傘を開きます。梅雨の頃に、ふたりで色違いを揃えた機能的な傘です。あの頃の雨は、こんなに冷たくありませんでした。その代わり、梅雨の雨はいつまでも続きます。燈子にとっては毎年の嫌なものでしたが、長すぎる雨と瑞々しく匂うアジサイは、彼にとっては新鮮なもののようでした。
特別なことをするような行事でなくても、しっかり自然を感じ取り楽しむサムクサイヌの姿が(正確には『姿も』)、燈子は大好きでした。
それでも、さすがに夏の過酷な暑さや不快な湿度を『楽しむ』のは、苦労したようでした。テイネポクナモシリ(最低の地獄)はきっとこうにと違いない、と言っていたことを思い出します。
そんな夏でも、楽しい思い出もたくさん作れました。新しい水着を誉めて貰ったし、夏祭りでは屋台ごはんを満喫しました。
白いシャツの袖から見える、筋肉のついた二の腕も素敵でした。サムクサイヌは夏服も格好良く着こなしていたのです。燈子のスマホには、かっこいいご亭主の写真がいっぱい保存されています。
お気に入りの写真はプリントして、家に飾ってあります。帰宅して最初に目につく玄関の靴箱の上には、ぶどう狩りに行ったときの写真が立てかけてありました。春の服よりもシックな色合いで、きれいな緑色のぶどうがよく映えています。
横にいる自分は、アウトドアブランドの多機能ベスト。この頃、ちょっと背伸びをしてオトナっぽいワンピースやトレンチコートを着ることが多かったのですが……サムクサイヌは、どちらも誉めてくれるのです。がんばっておしゃれをしたコーデだけでなく、動きやすくて気に入っているアウトドアコーデも。
だからこそ、燈子は悩んでいます。
ふたりで初めて過ごす、最後の大きな行事……クリスマス。
おしゃれをして、都会でイルミネーションデートを満喫するか。
厳選したギアを使って、キャンプデートを楽しむか。
どちらを提案しようかな、と……数日前から悩んでいるのです。
きっと、どちらでも楽しんでくれるのです。目新しい都会の景色も、静かな山奥の星空も。ふわっとしたロングスカートも、メンズライクの難燃アノラックも。サムクサイヌはそれぞれの良さを見つけて、燈子と共感してくれるはず。
手を洗いながら、燈子は唸ります。いい加減、そろそろ相談しないと予約がとれないかもしれません。かと言って、なんでもいいよと言うのも、雑に考えているようで寂しい。
あの日、決めたのです。手に入れた二人の『これから』、1日だって1分だって、余さず大切にしていこう、と。
窓の外は、きれいな夕焼け色。雨上がりのきれいな光に照らされながら、もうすぐサムクサイヌが帰ってくるでしょう。
───大切な『これから』のために───