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【腐】ミードに酔うとか冗談だろう?【ハス探】

全体公開 第五 ハス探 2
2022-01-09 11:16:11

なんでも見られる方向け砂糖ゲロゲロなハス探。支部と同じ内容です。

Posted by @hirop573


この荘園の主は余程宴が好きなのだろう。
残り少なくなったグラスを傾けながら、ノートンは一度も姿を現さない相手を想像して時を過ごしていた。
賑やかな中心には寄らず、しかし声はかろうじて聞こえる程度の隅に留まる。しんしんと降る雪をぼうと見つめていると時間が過ぎるのもあっという間だ。というのはノートンの自論であるが。
賑やかな中、乾いた靴音が近付いてくる。振り向かないまま聞こえるようにノートンは愚痴を零し、隣に並んだ緑のフードを目だけで見やりいつもの相手だと悟る。
ナワーブだ。

「ねぇ、こんなパーティ開いてる余裕あるの?というかこれ何の祝い事?」
「さぁ。荘園主の事はだれも分からんからな。しかし出されたもんは食わなきゃだろ。食おうぜ」

食べ物に罪はない、と含んだような言い方に突っ込みそうになるが、それは自身も同じ気持ちである。人間、腹が空けば口数が少なくなるというもの。とりあえずは腹を膨らませて、それからまた口を動かせばいい。
喧騒の中に身を投げる苦痛は少々あるものの、それは腹を満たす間だけだ。得意の愛想笑いなりなんなり、収集がつかないなら隣のナワーブを犠牲にしたっていいのだ。

「ま、それもそうか」
お前、また変な事考えてないだろうな」

乾いた笑いを返事として、二人は光り輝く食器に手を伸ばした。
そこで聞き慣れた声がノートンの耳に入る。

『おお、ここにいたか』

思わず伸ばした手が止まる。無意識に全神経を声の方へ向け、体が固まって言うことを聞かない。ナワーブは変わらずフォークを掴み、料理を次々に皿に乗せていく。がノートンの異常に気がついたのか注いでいた手を止め、反応したであろう声の主へ目を向けた。

「お、邪神サマも来てたのか」

ナワーブの声を合図に研ぎ澄ましていた神経がすり減ったのか、ノートンはいつも通りに振り向いた。
こちらからは何も話さない、とでも言うかのように邪神ハスターの動向を探っている。ナワーブはそんな彼の反応を見て浅くため息をついた。ハスターの付き添いで来たのであろうリッパーも、なんだか疲弊しているように感じる。

「おい、どうした殺人鬼さん。お疲れじゃ

揶揄い半分にナワーブが言い切るや否や、予想だにしなかった言葉が邪神から放たれたのである。


『探したのだぞ、我が寵愛よ』


………はい?」
「あ?」
「あぁ遅かった。申し訳ありません二人とも。止める気力が

疲弊していた原因は邪神にあったようだ。聞き慣れない言葉にノートンも、果ては聞こえた周りの人物も目を点にして元凶を見ている。真っ先に思ったのは自分を巻き込まないで欲しい。ただこれだけである。じわりじわりと染み付いた言葉を脳内で繰り返すように、ノートンの眉間にも皺が寄っていく。

「もしかして酔ってる?このひと」
「そうですね」

リッパーは大袈裟に肩を竦ませた。返事もどことなく適当さが伺える。
取り巻きが囃し立てるのも時間の問題だろう。いかにしてここを切り抜けられるかノートンは考えていた。
リッパーか、ハスターと折り合いの悪い魔女でもいればそちらに投げられるものの、生憎と前者は疲弊、魔女もこの場では見えずのお手上げ状態である。
そもそも、この邪神が酔うという状態が初めてなのだと思い返す。何を飲んだのか、どれぐらい飲んだのか、ふとそんな疑問と興味がノートンに湧き上がった。
しかし時は待ってはくれず、ああだこうだと言葉を交わしているナワーブとリッパーを他所に元凶は更なる混沌を生み出していく。

『我が今そなたと話をしている。こちらへ来い』

そう言いながらハスターはノートンを引き寄せた。得意の触手を使わず、本来あるべき手で。いつもの多少の荒い方法ではなかったこともあり、驚いたノートンは抵抗する暇もなくなすがまま。そのまま彼の懐に収まることとなった。

「!?」

どよめきすら起こらなかったのは、この邪神がどれだけの事をしているのかを物語るのに充分であった。普段触手で雑に回収されているノートン、という光景を見慣れていた周囲だからこそでもあるが、それにしたってどうなのだ、という空気を漂わせている。
まるで人間、リッパーのいう紳士のような行いに、ノートンは頭の処理が追いつかなかった。そして段々、理解していくと同時に体が火照っていくような感覚に襲われる。
醜態を晒してしまう前に早くなんとかしなければ。
しかしどうやって?ぐるぐると落ち着かない頭で考えるが、直後にそんなものは役に立たないと知る。

………あの、ハスター」
『なんだ』
「ヒッ

覗き込まれたと思った矢先、甘い声色で囁かれ思わず悲鳴が溢れた。目が回る。頭が沸騰しそうだった。
今まで悪態をついてつかれての関係だったというのに、突然のこの甘ったるさはなんだ!
周りも囃し立てるどころか段々と輪が崩れていっているように見える。これは今しかないと意を決してハスターを押しやる。抵抗の力が弱いのは決して腰が抜けたからではない。
決して。

「ぼ、ぼぼ僕用事を思い出し
『我でよければ手伝おう』

ハンターとサバイバーの関係図そのままであった。
何も変わっていない。甘い声色はそのままに、今度は腰に手がまわる。今度は声にもならない悲鳴がノートンから発せられたように感じた、とはナワーブの談だ。

「う……………………

何も考えられない。普段と全く違う行いを一つ二つとこなすだけで、何一つ抵抗が出来ないのだ。普段の寡黙さが鳴りを潜め、まるで子犬のように震えている。真っ赤になった顔を隠すようにハスターの服を握りしめ、メットを深々と被り直した。寄り添う形となってしまったそれにハスターは満足しているのか、応えるようにノートンの頬を撫でる。
ぞわりと肌が粟立って仕方ない。大の男がこんな姿を晒している。それだけで恥だ。意地をかなぐり捨てる覚悟でなんとか助け舟を求めてみたのだが。

「ひ、助けてナワーブ、リッパー

か細い声でようやっと出た言葉。しかし現実は非情であり、自身が見捨てるつもりであった相手に見放されてしまう。
請われた二人は静かに首を横に振った。

「いや、無理」
「無理ですねぇ」

ハスターの撫でる手は止まらない。普段ならやめろ、だの手を払う抵抗を見せられるのだが、まわらない頭ではその選択肢は無いに等しい。
そしてまた吐息を一つ、ハスターはこちらを静かに覗き込む。喉に色んなものが突っかかる。目を逸らせばいいのに、逸らせない。

…………
……!!………!?!?」

目は口ほどにものを言う。
後は、部屋で。何をとは聞けなかった。聞けばまた、溢れ出た湯水の如く止まらず囁くのだろう。それはノートンが耐えられなかった。
いつの間にか抱えられた事に気付いても時すでに遅く、ズル、ズル、と触手が床を擦る音が響いていくだけ。
顔を逸らせず目だけで助けを乞うものの、近くの二人は手を振った。

「幸運を祈る」
「明日でよければお助けしますよ」

この薄情者!と遠ざかっていくノートンから珍しい大声が聞こえたのだった。




………

あの場に留まらず、さっさと自分の部屋に戻ればよかったのでは。とまだまだ熱の冷めない頭のまま後悔していた。
あの場から脱出できたはいいものの、連行されたに等しいこの場所はハスターの部屋。
いつもの相手ならこのまま寛いでも構わないだろう。だが今は何をされるか分からない。そこでノートンはふと思う。酔いがまわっているなら隙も大きいのではないか。
逃げられる可能性はゼロではないのかもしれないと。

「ねぇ、本当に酔っ……!?」

退路が絶たれていく音が聞こえた気がした。
先程と同じく頬を撫で、腰に添えられ、用意周到なのか触手が巻きついて離れない。
頬を伝っていた手はそのまま耳へ移り髪を梳き、それを何十回と繰り返している。
気が狂いそうだった。この邪神は何がしたいのかと睨んでみるものの、見つめていると勘違いしたのか返事をするように覗き込んでくる。

「あ、う何がしたいんだあなたは!僕は玩具じゃない!」

言い切った瞬間、ノートンは息を呑んだ。

「ぁ………

無数の目が、弧を描き歪んでいる様を。
我慢できないと言わんばかりに愉快に笑う声を。
見て聞こえた途端に遊ばれていたのだと気付く。
血の気ももちろん引いていたが、それより厄介だったのが今まで気付けなかった自分だ。
頭の先まで一瞬で沸騰する感覚だった。顔を隠せるはずの腕も、今は触手の餌食で役に立たない。真っ赤に染まったまま、再び羞恥で涙目になっていく。
してやられたのだ、今回も。

『フ、ハハハハハ。我は今気分が良い。普段のそなたからは全く想像出来ぬ反応、存分に楽しませてもらったぞ』

覗き込む角度が更に深まる。ようやっと逸らせた顔とて最早遅く、顔は掴まれそれ以上逃げる事は許されない。
いつからだ。一体いつから。目で訴えれば答えはすぐに返ってくる。

『酒を飲んでから、とでも言えばよいか。なに、我が酔うと思っておったのか』
「〜〜っ!!あなたは本当に!」

初対面も最悪だったというのに、意地の悪さも一流である。そもそも間違いだったのだ。邪神といえど神は神。
只の人間であるノートンが、この存在のあらゆる事象を把握する事など不可能で。
会話を続けながらも、撫でる手や触手は止まらない。
旋毛から耳裏、頬を撫でれば次は首筋へ。
鳥肌が止まらない。体を捻り必死の抵抗をするものの、ふとした瞬間に弱い部分に触れられ力が緩む。

この王はここ最近、まるで人間のように振る舞う事が多くなった。しかもノートン相手に限って。からかい、時には慈愛を向ける。そんな調子なものだからノートンは毎日のように振り回されていた。
意を決して聞けば"そなたの影響だがな"と言い、とてもじゃないが信じられない。
自分を真似た?そんな馬鹿な話があるか。
しかしノートンは思い出した。一度だけ酒の席から酔ったフリをして抜け出した事を。
まさかあの一度きりの光景を覚えていたとでもいうのか。
そうだとしたら確かに自身が原因なのだ。

「あんなの、覚えてたのか。なんで限って、そんな
『誰しも、記憶を刻むのはそれぞれであろう。それに習ったまで。……そうさな』
……?」
『あの時のそなた、負の感情をよく上手く隠せたものだな。よく覚えているぞ』
「!」

だから真似た。酔ったフリをしてみたのだと。
そんな事で。そんな事で!
拳を握りしめるが、出来ることはただそれだけだ。抱き抱えられたままでは何もする事が出来ない。この王の気が済むまで耐えるしかないのだ。

『さぁ。延長戦と洒落込もうではないか、ノートンよ』

最後の抵抗といわんばかりに、ノートンは唸るような声で罵った。

「悪趣味だよ。黄衣の王!!」



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