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例 ②

全体公開 3
2022-02-24 21:35:10
Posted by @tuzura_ori

「ねぇ、お兄ちゃん。
 シンデレラに出て来る妖精は名付け親なんでしょ」 
「そうだよ。
 だから、フェアリー・ゴッドマザーって言うんだ」
「ふーん、そうなんだ。
 じゃあさ、僕の名前を付けてくれたお兄ちゃんはなんて言うの?
 人間だから ヒューマン・ゴッドファーザー?それともゴッドファーザーだけ?」


あれはまだ、弟が5歳の頃だ。
誰に聞いたのか 部屋に走り込んでくるなり、私の膝によじ登る幼い身体は柔らかく
無邪気な質問も相俟って、愛しい以外の表現が見つからなかった。

あの時、私はなんて答えたのだろう?
15も年の離れた弟の名を決めたのは事実だが、洗礼とは関係ない。
しかし両親が亡くなった今、私は家の長であり、彼の後見でもある。

ああ、そうだ 思い出した。
「ゴッド・ファーザーでは重々しい上に、他人行儀だから『兄さん』でいいよ」
私は弟の細い髪に鼻を埋め、そう答えたんだ。
「兄さん? 兄さんでいいの?」
「うん、それがいいな」
まだ少し舌足らずで、『さ』が上手に発音できない弟が可愛くて
このまま、時が止まってくれればと、心の中で願いながら答えたのだ。



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