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越知月光は見ているだけではなくなった4

全体公開 18 2354文字
2022-03-01 15:05:27

続編

Posted by @uk_plus_



 「今日は一緒に帰ってくれないか?」

ようやく越知がそう言えたのは昼休みの時間、彼女と一緒に昼ご飯を食べている時だった。越知の言葉に彼女はきょとんとしたが、すぐにいつもの朗らかな笑顔になり頷いた。

「いいよ」
「待たせてしまうが、大丈夫だろうか」
「平気だよ、教室で待ってるね」

 何故越知が改まって彼女に提案をしたのか。前日友人二人から課題を出されていたからだった。“せめて手ぐらいは繋げ”というミッションを成し遂げなくてはならないからで。デートに誘うことすら精一杯だった己がそしてその時何もできなかった己がそれを完遂することは無理矢理にでも何か約束を取り付けなくてはならないと考えての提案だった。

 昼休みが過ぎて、残りの授業の間と部活の間、越知はずっとそわそわしていた。まずそもそも手を繋ぐために何をしたら良いのか何もわからなかったのだ。

 そうこうしているうちに部活動まで済み、越知は急いで身支度を終えて教室へ向かった。



―――――――――――――――――――――――――――


 改まって提案された時は不思議だったが、私は越知くんとの約束をとても嬉しく感じていた。
 越知くんの部活が終わるまでの間、私は教室で時間を潰していた。そうしながら昼間の越知くんの様子を反芻しては、にやけてしまいそうになる口元を正すのに必死だった。

最近は越知くんから色んなことに誘ってくれて、嬉しいな。

正直な気持ちだった。付き合いだした時もそうだったが、真っ直ぐに何かを伝えてくれようとする彼の姿が大好きだから。
 人もまばらになり、いよいよ教室には自分しかいなくなりそうになった時。入口から大きな影が現れて、すぐに私を見つけた。

「待たせてしまったな」

その姿を見た私もすぐに立ち上がり、準備していた鞄を手に取る。しっかり準備万端の鞄をちらと見て、いかに自分が待ち遠しく思っていたか痛感した私は一寸笑ってしまった。するとそれを見ていた越知くんは首を捻る。

「何か、あったか?」
ううん、なんでもないの。帰ろっか」


―――――――――――――――――――――――――――


 いよいよこの瞬間が来てしまったと、越知は小さな彼女の隣で思っていた。自分の下方で楽しそうに話す彼女に相槌をしながら、越知は機会を窺う。

それでね越知くん?」

すると今まで話していた彼女がふと越知の方を向いて言葉を止めた。

「どうした?」
「ううん、なんかいつもより元気がないかなって思って」
「そう、だろうか」

変わりはないと返事をすればそれならいいんだと笑い返されて越知は一寸どきりとした。その笑顔があまりにも可愛らしかったから。そして感情の起伏がない自分によく気付いてくれることを嬉しくも恥ずかしく感じる一方で、越知は自分があまりにも緊張していることに内心苦笑した。

ただ」
「なに?」
「今日はその聞いて欲しいことがあった」
「え、なになに?」

 以前小柄な友人に言われたこと言わなければないも同然だということを思い出して、越知は思い切って言葉にすることにした。
 越知からの珍しい話題提供に興味津々そうに彼女が覗き込み返答を待っていた。その表情ひとつにも愛らしさを感じ言葉に詰まりそうになるのを堪えて、越知は続ける。

「手を、繋いでも構わないか?」

口にした言葉が宙に浮いてしまったようで越知は慌てた。やはり撤回しようかと越知が言葉を続けようとすると、今さっきまで隣にいた彼女が一歩後ろにいることに気付いた。どうやら越知の言ったことを聞いた瞬間に立ち止まっていたようだった。

「すまない、嫌なら
「嫌なわけないよ!ただほら身長差すごいから越知くん歩きづらくないかなとか色々考えたらその!!」

少々早口でまくし立てる彼女の言葉を聞いて越知は安堵した。どうやら考えていたことは同じだったらしい。そして何より顔を真っ赤にして越知を見つめる姿が何より可愛らしかった。

「俺の方は特段問題ない」
「じゃ、じゃあ、その

おずおずと紡がれる彼女の言葉に合わせて、両頬を赤くした彼女がすっと片手を差し出す。

「どうぞ」
ありがとう」

差し出された小さな手を、それよりも倍はある己の手で包んでしまえば安堵する温かさだった。


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 「おはよーって、なんでお前はまた落ち込んでるんだよ」

朝一の教室で、騒がしい友人はまた自席で肩を落とし丸くなっていた越知に声をかけた。越知は顔を上げずにおはようとだけ返事をする。

「うまく手ぇ繋げたんじゃなかったのかよ」
それはうまくいった」
「ならよかったんじゃねぇの?」

しかし越知はぶんぶんと首を横に振るばかりでその顔を上げようとはしなかった。そして何やらぼそぼそと話すので煩い友人はそっと顔を寄せて細い言葉たちをオウム返しする。

「なになにあんまりにも手が小さくて壊してしまうんじゃないかとずっと緊張しっぱなしで今日は腕が筋肉痛?」

騒がしい友人はそう聞いた途端に越知の後頭部を一発しばき倒した。その内容がどう聞いても落ち込むようなものではなかったから。

「朝から惚気んな!」
「決して惚気などでは
「あーはいはい幸せにやってくれ」

越知の苦難はまだまだ続く。


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