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洋菓子交差点

全体公開 2 1885文字
2022-03-15 21:54:28

真田の場合1

Posted by @uk_plus_



「あーその、真田、無理すんなよ」
「何?俺は無理などしておらん」
「そうか?にしても、お前が頑張ってうちに来てくれるなんてその女の子はよっぽど可愛いんだろうな」
「なっ!」

丸井はカウンターを隔てて、慌てふためく旧友を温かい目で見た。そんな視線を向けられている当の真田は、落ち着かないのかそわそわとガラスケースの中を睨みつけながら、何やらぶつぶつと言っていた。

「記念日か何かなわけ?」
「た、誕生日なんだ」
「へえ」

誕生日、ねぇ。

丸井はふんふんと話を聞きながら、ふと思ったことを口にした。

「つか、彼女なの?その誕生日の子」
「ぐっ……

ただなんとなしに思っただけだった。本当だ。他意はない。なのに、にもかかわらず、真田の顔は茹蛸のように真っ赤になり額に変な汗をかきだした。

こりゃ、違いますな。

少し呆れながらもあの真田が好意を寄せる女性のため頑張ろうとしている姿に、一肌脱いでやるかと丸井は更に真田に聞いた。

「プレゼントに何か送ろうと思ったものの、物じゃ重たいだろうかとか考えた末に、ケーキっていう食べたら残らないけど女子が好きそうなもの、って結論に至ったわけね」
「ま、丸井……蓮二みたいだな……

まどろっこしい質問は、真田に対しては返ってよくないことを丸井はよく知っていた。だから代弁するように推察できたことをぺらぺらと話してみる。そうすると図星だったようで、うろたえながら小さく真田は口にした。

「真田にしてはいい案だと思うぜ」
「俺にしてはとはどういう意味だ」
「けどなぁ誕生日だろ?普通のケーキじゃ少し寂しいなぁ」
「そ、そうだろうか……

かと言ってホールを渡すのも何か違うだろう。丸井は腕を組みながらうんと悩む。すると真田は先程とは違い落ち着いた顔をしてぽつりと言った。

「俺から何か贈るのは、迷惑にはならないだろうか……

恋人でもないのだ。たしかに、それは一理あるかもしれない。しかし真田がここまで考えて、普段来ないような店に足を運んでまでそうまでして祝おうと思った相手なのだから。

「そんなことはないさ」

丸井は世辞や嘘ではなく、そう言った。本心だった。あの彼にそれほど思われる女性なのだから、きっと真田のこのまっすぐな気持ちも、受け止められずともわかってはくれるだろう。だから。

「だからそんなことは考えず、俺の自慢のケーキを買っていけよ」
「丸井……
「よっし!わぁかった!しかたねー特別だぜ?」
「な、なんだ……?」

突然の丸井の大きな声に、真田は目を丸くした。

「おい真田、彼女の誕生日はいつだ?」
「ら、来週だが」
「来週か……まだ余裕あるわ。おっし真田」
「なんだ」
「来週の彼女の誕生日、デートの約束取ってこい」
「でっ……!」

この様子じゃ食事もしてねーんじゃね?なんて丸井は思いながらも、乗りかかった船だと自身を奮起した。

「来週のデート前に俺の店に寄るんだ。そんとき買ってけよ。俺が作った特別バースデーケーキ」
「と、特別……?」
「ケースに並んでねー彼女だけのケーキを、俺が作ってやらぁ」

唐突な提案に、真田はぼやりしているようだったが、カウンター越しに丸井は彼の両肩を掴んだ。

「それで彼女にちゃんと言って来い、おめでとうと、好きだって」
「すっ……!」
「恥ずかしいとかはしたないとか思うんじゃねーぞ。お前彼女が他の男と一緒にいてもいいのかよ!」
「それは……
「よくねーだろ、そんなの。他の奴にやりたくねーだろ」

だからさ。そこまで言って丸井はようやく真田の肩から手を外した。

「お前のために、どんなプレゼントにも負けないケーキ用意しとく。だから真田も、彼女に思ってることちゃんと伝えろ」

お代はいらねーとまでは言えないけどなと笑いながら、丸井は真田の肩をぽんぽん叩いた。

「丸井……
「そんな顔すんじゃねーよ。彼女の前でもそんな顔すんのかよ」
「いいや……大丈夫だ。ありがとう」
「そうそう。そういう感じだよ。頑張れよ」
「ああ」

ケーキの相談だったのか、恋愛の相談だったのか。どちらにせよ、入店した時よりも和やかな表情で店を出た友人の背中を、丸井はほっこりとした気持ちで見送った。


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