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SH7_shinkan_mizore&miyu_NOVEL

全体公開 5931文字
2022-04-04 17:21:59

プロローグ 春来たる山に未知の社
 春の日差しが眩しい史縫高原しほうこうげん
 その中にある一つの神社、木野森神社きのもりじんじゃ。比較的広い境内は、隅々まで掃除が行き渡っている。
 ここは当代神主の水夜岐みやぎとその巫女である狼月ろうげつの二人が管理しており、先代神主である深淵夜花ふかふちやばなミゾレと先代巫女の天之道あめのみち水結みゆも一緒に暮らしていた。

 朝日を浴びに来た私は、神社が麓にある天津岳の異変に気が付いた。
「なあ水結、あそこに神社がないか?」
「ほんとだー確かにあるねー」
昨日まであの場所になかった筈だ。となると、一晩で出来たのか?
 私達は、その疑問を解決すつため勢いよく神社を飛び出した。





第一章 深く澄み渡る川(神想川)
 透き通る水が流れる神想川。かすかに水の音をたてながら流れている風景は平穏を感じさせる。
「さて、調査に行くか」
無理やり水結を連れてこさせ、目の前にそびえたつ天津岳へと足を向ける。
 すっかり観念したのか、水結は私の後ろをついてきている。
「水夜岐たちに言わなくても大丈夫なの?」
「大丈夫だろ」
書き置きなど全くもってしていないが、あの二人ならきっと察してくれるから大丈夫だろう。
「どこに行くんだ?」
聞き馴染みのある声が後ろから聞こえた。

 クラオカミ様――本名は木野山神河闇きのやまがみかくらだが私たちはそう呼んでいる――がそこに立っていた。
 いつもは木野森神社の本殿か拝殿にいるはずなのだが。
「クラオカミ様。今から天津岳へ向かう予定です」
「そうか。何か用があるのか?」
水結は天津岳の山肌を指差した。
「あそこに変な神社があるの」
「そこの調査をしに行くところ」
その返事を聞き、少し戸惑ったのか神妙な顔をした。
「なるほど……あいつか。なら、私と勝負をしようではないか」
その一言とともに、弾幕戦が開始された。

撃破後

 弾幕戦を終えたにもかかわらず、クラオカミ様は一切息切れることがなかった。
「では、行って参ります」
私がそう言うと、クラオカミ様はこちらに振り返った。
「ああ。だが、あいつに勝てる可能性は半分ほどだろう。」
その一言に、水結は疑問を抱いているようだ。





第二章 水縹流水(草の生い茂る道)
 ミゾレと水結はクラオカミ様との弾幕戦を終え、神想川の脇にある草木の生い茂る道をすすんでいった。
 腰の高さほどまである草は移動を困難にさせるほど邪魔だった。
「全く……この道は全然整備されてないな」
「仕方ないでしょー。ここを通る人なんて一切いないんだから」
水結は草をかき分けながら進んでいるようだった。

 少し歩くと、二人の足音のような音が聞こえ、後ろを振り返った。
 お、あいつらじゃないか。
「まさかここにいるとは」
「へ?」
向こうは少し戸惑っている様子だったが、
「あ、久しぶり!」
水結は構わず手を振っていた。

 当代の木野森神社の神主と巫女である「水夜岐みやぎ」と「狼月ろうげつ」だ。おそらく、私たちがいなくなったのを不審に思って探しに来たのだろう。
 水結は私の元を離れ、軽やかな足取りで水夜岐たちの元へと進んでいった。
「元気にしてた?」
水夜岐は少し呆れたのか、少し楽になったかのように話す。
「つい先日会ったばっかりでしょ」
「だが、なぜここにいるんだ?」
一応、ここへ来た目的を聞いておこう。もしかしたらまた別の用事があったのかもしれないから。
 すると、水夜岐の横にいた狼月が答えてくれた。
「ミゾレさん達を探すためです」
「探す?」
よかった。私が思っていたことが正しかったようだ。
 そして水夜岐も続けて話した。
「ええ。急に居なくなったからどこに行ったのかと」
まあ急に人がいなくなったら心配するよな、と考えていると、水結は天津岳の方向へと指さした。
「私たちはねーあの山に行こうとしてたの」
「あの天津岳へ?」
狼月は半信半疑で聞いているようだ。
「あそこに神社があるでしょう」
と、言いながら私は山の中腹あたりを指さした。
 勘の鋭い水夜岐は、感心したように頷いている。
「確かに……昨日までは無かったはず」
「今からそこに行くところだったんだー」
今から水結と二人で行くつもりだったが、どうせなら
……そうだ。こうしよう」
「うん?」
「私たちと勝負をして、あなた達が勝ったらあの神社へ調査しに行く。もし私たちが勝ったら私たちがあの神社へ調査しに行く。こうしてみないか?」
当代の神主と巫女の力をもう少し知っておきたいため、このような勝負方式にしよう。
「いいね……そうしよう!」
水夜岐のその一言ので、弾幕戦が開始された。

撃破後

水夜岐と狼月はその場にしゃがみこんだ。
「負けた……
「では、私たちが行こう」
どうやら、まだ私たちの方が力が強かったようだ。
「頑張ってくるねー」
「ああ」
水結は狼月に手を振りながらミゾレと共にあるいて行った。





第三章 粉砕された鉱石(幻珠加工場)
 草木の生い茂る道を進んでいくと、煙の臭いと共に開けた場所へ出た。
 この開けた場所は、「幻珠」と呼ばれるものを精錬している加工場だ。
 幻珠とは弾幕を張る上でとても重要な役割を果たす物であり、所持者の魔力を増強させて弾を作りだすという効果がある。
「ここは加工場か……
ミゾレはゆっくりと周りを見渡していた。
「へー、結構コケが生えてるんだねー」
結構以外だった。てっきり綺麗な場所で作っているのかと思った。
「まあ結構古くからあるらしいからな」
「悪かったな。遺跡みたいな場所で」
聞いたことのない声が聞こえた。

「そこまで言ってないよー。で、誰?」
オレンジの服を着た誰かは、大きな鉄のシャベルを持っている。見るからに重そう。
鉱道彦あらがねみちひこだ。ここで鉱石の精錬をしている」
「で、だ。あの神社は見覚えあるか?」
ミゾレがすぐに聞いてくれた。すると、道彦は驚いたような顔をした。
……あれ、あんなところに神社ってあったか?」
と、言うことは見覚えがないということかな。
「そうか、分かった。じゃ」
 ミゾレもそれを察したのか、身体を180度回転させようとした。
「なあ。ちょっと待てよ」
「うん?」
急に呼び止められた。振り返ると、
「どうせなら一戦やっていこうぜ」
幻珠を持った道彦が空を飛んでいた。

撃破後

 幻珠の破片が散らばる傍に道彦が倒れこんだ。
「お前ら強すぎだろ……
弾幕勝負の実力は私たちのほうが上だったらしい。まあ2対1だから負けて当然だと思うけれどね。
「じゃあねー」
水結はミゾレに手を振り、天津岳へと歩いて行った。





第四章 結界的流域(天壌の滝)
 生い茂る木の葉によって日光が分散され、地面に斑点模様が描かれる。
その地面を踏みしめながら山を登っていくミゾレと水結。
幻珠加工場から山を登っていくと、一本の滝が見えた。
「この滝……すごい綺麗だな……
「こんな場所もあったんだねー」
ミゾレは感心したようにこの滝を見上げている。長年住んでいる私でも知らなかった。こんな滝があるなんて。
「あら」
ふと横を見やると、見知らぬ顔が見えた。
 白いドレスのようなものを身に纏った誰か。
 私が聞くよりも先に、目の前の人が答えてくれた。
「私は天水分澪あまみくまりみお。貴方達はそこで何をしているの?」
「この先に行きたいんだ」
「この先に神社があるんだってさー。だからさ、通らしてくれる?」
私はミゾレの後を追うように言った。私が考える限りでは、この滝から流れる川に沿って結界が張られていると思う。
 この結界を通るためには、この結界を張っている人物の力が必要だ。その結界を張っている人物こそが目の前にいる澪だろうと考えてる。
「ふーん……ならさ」
嫌な予感がする。
「うん?」
ミゾレはまだわかっていないらしい。この雰囲気はもちろん……
「私と勝負することね!」
弾幕勝負のみだ。

撃破後

 澪は手に持っていた棒のようなものを投げ捨て、倒れこんだ。
「負けた……
「じゃ、通らせてもらうねー」
「じゃあな」 
ミゾレと水結の二人は、川にある石を器用に歩きながら渡っていった。





第五章 鬱蒼とした森の川(天壌川 上流)
 川の上流付近に行くにつれて石がおおきくなっているため、足場が非常に不安定だ。
 そんな中を、ミゾレと水結は突き進んでいった。
 この川は天壌川と呼ばれるらしく、先ほどあった滝から「神想川」と「機静側」の二つの川に分かれているらしい。
「神想川ってこんなに続いてたんだな……
まさかここまで続くとは思ってもいなかった。
というか、今までで一度も神想川の上流にいったことが無かった。
「確かにそうだねー。あ、キレイな石見っけ」
水結は水結で相変わらず気まぐれな行動をしているようだ。
すると、
「何してるんだ」
低い声が聞こえた。

「誰だ?」
私はその人物へと問いかけた。
「[[大雷耕樹>おおいかづちこうき]]。崇高なるオオイカヅチだ」
自分で”遂行なる”なんて使う人は初めて見たが、あまり気にしないでおこう。
「で、何してるんだ?」
「迷子」
私は簡潔に答えた。そう、それで合ってるはず。
「はぁ?」
「迷子になったから連れてって」
耕樹はものすごく呆れた表情を浮かばせた。
「どこにだよ」
「この山にある神社に行きたいの」
水結がすぐに答えてくれた。すると、
……そうか」
少し神妙な顔をした後、こう言われた。
「お前らはここで山の養分になる必要があるな」

撃破後

「で、負けた気分はどうですか?」
比較的強いと思っていたが、どうやらそれは間違いであっさりと倒してしまった。
「くそっ……
「じゃ、おとなしく道案内してねー」
水結の言葉と共に、耕樹は道案内をさせられることになった。





最終章 山に神は存在するか?(廃れた神社)
 木々のカーテンは真昼の光を透かし、地面には半透明の木の葉の影が映っている。
 無数の階段を登ってきたミゾレと水結はやっと目的地に着いたが、もう息切れ気味だった。
……来たな」
ここが私の探していた場所だ。ここにあの人がいるはず。
「ええ。そうね」
水結は口調が変わっていた……というか人格そのものが変わっていた。
 水結には人格が二人ある。一人は脳内お花畑――自分でそう言っていた――の水結で、もう一人が冷静で好戦的な水結だ。人格は自由に変えることができず、いつ変わるか分からないらしい。
「さすがにお前も変わるな」
こう言うのもあれだが、この時の水結の方が頼りになる。あの水結は一緒に過ごしていて楽しいが、勝負となると少し弱い。
「そりゃそうでしょ。あんな脳内お花畑なあいつで任せられるとでも思ってるの?」
「まあそうだな」
どうやらこの水結もそう思っていたようだ。
「よく来たね」

 山を守る神である大山積花峰おおやまつみはなみねだ。
 木野森神社の祭神でもあり厄介なことをする神でもある。
「はぁ……また何か作ったんですか?」
呆れ気味に聞いた。また何か思いついてこの神社を建てたのだろう。
「ええ。ここが新しい私の神社よ」
ほら、やっぱり。というか一晩で建てれたのは凄いな……
 そんなことを思っていると、
「嘘つけ。こんなのただの幻想にすぎないでしょ」
水結が突然そう言い放った。
「うん……?」
オオヤマツミ様は神妙な顔をして水結を見ている。
 水結は何を考えているんだ……
「この場所は霊がよく湧くから、それをばら撒いて脳に干渉させることで幻覚を見せたんでしょ」
「そうなのか?」
ということはこれは幻覚にすぎない……そんな感覚はなかったのだが。
……うん。さすがね。霊には脳に干渉させる力があることを知っていたのね」
ということは、幽霊を脳に憑りつかせて幻覚を視させるようにした……ということか?
 この時の水結は意外と頭が切れるらしいな。
「で、何のつもり?」
水結は強めに尋ねた。そうだ、私もそれが気になっていた。幽霊がどうのこうのあって話が逸れたんだ。
「ここに呼ぶためよ。それくらいしないとあなた達はここに来ないでしょう?」
直接呼べばいいのにな……。まあいっか。
「ということは、勝負をしたい、ということか」
「そうだな。なら、私達からいこうか」

撃破後

「はぁ、はぁ……
つらかった。さすがに神相手だと結構体力を使うな……
「じゃ、帰りましょうか」
「あ、ああ。そうだな……
まだ元気そうな水結と共に、この山を下りて行った。



 やっとの思いで天津岳を下山すると、辺りはもう暗闇に包まれていた。無数の星々が輝いている。
 半日ぶりの木野森神社には明かりがともっており白い煙が立ち昇っていた。
「疲れた……
「あ、ミゾレさんと水結さん。おかえりなさい」
「ただいまー!」
餅を食べている水夜岐と狼月の傍には桜の木が咲き誇っていた。
 そうか、夜桜か。風情があって良いじゃないか。
「せっかくですし夜桜でも見ませんか?」
「ああ。そうさせてもらう」
風に靡く桜の木を眺めながら、私たちは一夜を過ごした。

懐かしさと儚さが感じられた。

GOOD END B 夢色の春の夜桜



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