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過ぎた勘違い

全体公開 9 956文字
2022-04-09 20:25:14
Posted by @uk_plus_



 慣れたと思っていたけどいざこうして巨体に詰め寄られると本能的に命の危機を感じるな、と心の隅で私は思った。
「何を隠してる」
「隠してない、何も隠してないです」

ぬっと影を落とす彼の鋭い双眼から顔を逸しても、大きな手ががちりと両肩を掴んでいて私は逃げられない。

「な、なに?」
しばらく俺に対してよそよそしさを感じている」
「そ、そんなことないよ」

否定をしてもどうしても語尾が震えてしまう。そんな私は顔を逸したまま。その様子を見ていた彼はひとつため息をついてぽつりと言った。

「よほどのことなのか、俺に言えないような」
「よほどというか

口籠る私の肩から手を引いたかと思えば、今度は真剣な彼の声が聞こえた。

「俺はお前のことならなんだって受け止めようと思っている」
「お、越知く
「それほどに、お前が好きだ」

その言葉に逸していた顔を向ければ真剣な眼差しが前髪の隙間から覗いていた。どこか悲しげな瞳に私はついに根負けして、盛大なため息とともに彼に聞いた。

「何を言っても幻滅しない?」
「当たり前だ」

すぐに返ってきたその答えに、私はおずおずと言葉を返す。

「お、越知君がお蕎麦が好きなのは、知ってるんだけど
蕎麦?」

場の雰囲気にそぐわない単語が出ると彼の声色は困惑を表し、首を傾げる。

「わ、私う、うどん派なの!!!」
……

訪れた静寂の先、黙ったままの彼の表情は勢いで俯いた私にはわからない。恐る恐る顔を上げるとぽかんと口を開けた越知君がそこにいた。

そんな」
「?」
「そんな、ことか」

そして初めて聞いたような脱力した声で音を漏らした。

「ごめん、ごめんってねえ
「別れを告げられると、俺はてっきり
「本当、本当にごめん!ずっと言いづらくて」
「うどんうどんで俺は

私は数時間、珍しく狼狽えた彼を慰めることになる。一寸可愛いところもあるんだな、なんて感じながら。




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