白銀のうさぎ〜Magia Notes Part.23〜

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2022-04-17 20:51:20

一羽の子うさぎが春の訪れを知らせにやって来た。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第23話。
※創作女監督生の名前が出ます
※捏造設定あり

Posted by @natsu_luv

凍りつくような寒さが身に染みる冬が終わりを告げた。
柔らかな陽射しが萌黄色の草地を照らす、温かい春の季節の到来だ。
私は中庭のお茶会に持っていくための紅茶を買いに購買部を訪れていた。
温和な気候のこの季節は、中庭で小さなお茶会を開くのにうってつけだ。
ちょうど春限定の紅茶が入荷していたことを思い出した。
この季節になると出回るとサムさんが言っていた、甘酸っぱい苺と上品なラベンダーの香りの紅茶。
苺とバニラのバウムクーヘンも一緒に買い、私は購買部を後にした。

メインストリートからオンボロ寮までの道のりも、彩り豊かな花々で綺麗に飾られている。
一歩ずつ歩いていく度に、目に映る花の色が変化していく。
ふと、賢者の島に伝わるとある伝承を思い出した。
暖かい春の季節が訪れると、美しい春の女神が豊穣の象徴であるうさぎを連れて人々に祝福を授けるという民話を。
そろそろオンボロ寮の門の前までたどり着く。
留守番をしているグリムがお腹を空かせて待っているだろう。
そう思っていた矢先のことだった。

「えっ、こんなところに毛玉……?」

オンボロ寮の玄関の前に銀色の大きな毛玉が置かれている。
一体何なのだろうかと思い、私は徐々に玄関の方へと近寄っていった。
毛玉の正体はふんわりとした白銀の毛並みをした子うさぎ。
何故かオンボロ寮の玄関の前ですやすやと眠っている。
子うさぎが目を覚ました。
子うさぎはきょろきょろと辺りを見回し、私の方へと近寄ってきた。
私の上着の袖を引っ張りながら、子うさぎは小さな手で玄関の扉を指している。

「ん? 中に入れてほしいの?」

子うさぎがこくりと頷いた。
一時的に保護するだけならば大丈夫だろうと思った私は、子うさぎを部屋の中に迎えた。
談話室に入ると、ゴーストさんたちとグリムが私を出迎えてくれた。
グリムは私と一緒に部屋に入ってきた銀色のうさぎを見て不思議そうな様子を見せていた。
くぅとお腹の鳴る音が聞こえた。
どうやら、子うさぎはお腹を空かせているみたいだ。

「うさぎさん、お腹が空いているの? ちょっと待っててね」
「ニコル、オレ様も腹減ったんだゾ!」
「わかったから大人しくしてて」

ひとまず、子うさぎをグリムと並べてソファに座らせた。
私はキッチンへ向かい、冷蔵庫からストックしているツナ缶とキャベツを取り出した。
ツナ缶の蓋を開け、キャベツの葉を小さく千切ってお皿に盛り付けてトレーに載せた。
それから、トレーをグリムと子うさぎが待つソファの方へと運んだ。
グリムの目の前にツナ缶を置くと、一目散に中身を食べ始めた。
一方で、子うさぎは小さな口でキャベツの葉を黙々と食べていた。

お皿いっぱいのキャベツを完食した子うさぎは、こてんとソファに寝転んだ。
そして、そのままぐっすりとお昼寝してしまった。
白銀の子うさぎは食事をしている仕草だけでなく、眠っている姿も可愛らしい。
そっと艶やかな毛並みを撫でると、子うさぎが目を覚ました。
すみれ色のつぶらな瞳で私を見つめてくる姿も愛らしく、私も思わず顔を綻ばせてしまう。
私と子うさぎが笑い合っている様子を面白くないと思ったのか、グリムが私の膝の上によじ登ってきた。

「ニコル、何か歌うんだゾ」
「わかったよ。そうだ、うさぎさんにもお歌を聴かせてあげるね」

私は部屋にギターのケースを取りに行った。
チューニングを済ませ、楽曲のイントロを爪弾いた。
オンボロ寮でグリムとゴーストさんたちに聴かせている歌を口ずさむ。
軽やかな旋律に優しい気持ちが綴られた歌詞をのせた楽曲は、子うさぎにとっても心地の良いものになるだろう。
何曲か歌った後、子うさぎはまた夢の世界へと旅立っていた。

「このうさぎ、また寝てるんだゾ」
「仕方ないよ。うさぎは一日の大半寝てることがあるみたいだから」
「なんだかアイツに似てる気がするんだゾ」
「そういえば、シルバー先輩に似てるかも」

白銀の毛並み、すみれ色の瞳、よく眠るところ。
確かに、シルバー先輩と似ているところが多い。
これは偶然なのだろうか、私とグリムはあれこれ考えを巡らせた。
しばらくすると、再び子うさぎが目を覚ました。
グリムがお風呂に入りたいと言ってきたので、子うさぎの身体を綺麗にしてあげようと思った。
私はグリムと子うさぎを連れてシャワー室へと向かった。
お湯を溜めたたらいに液体石けんを数滴入れ、小さな泡風呂を作った。
グリムと子うさぎに中へ入ってもらい、きめ細かな泡で身体を撫でていった。

「ふなぁ〜、気持ちいいんだゾ〜」
「グリムは相変わらずだね。あれ、うさぎさんは好きじゃないのかな?」

力の抜けた声を上げながら嬉しそうにしているグリムとうって変わって、子うさぎは何処か恥ずかしそうにしている。
ある程度洗い終わった後、シャワーで泡を濯ごうとしたその時だった。
突然、小さな泡風呂のたらいからボワっと白い煙が立ち込めた。
不測の事態に私は思わず腰を抜かしてしまった。
やがて、白い煙が少しずつ晴れてきた。
煙の向こうから見える馴染みのあるシルエットに、私は驚きを隠せなかった。

「ん……? ニコル……、グリム……?」
「えっ……! きゃああっ!」
「ふなぁぁ〜〜〜〜っ!!」

たらいの中にいたはずの子うさぎは姿を消し、代わりに全裸で泡だらけのシルバー先輩がいた。
一緒にたらいに入っていたグリムは、私以上に大声を出して突然のシルバー先輩の登場に驚いていた。
自分の今の姿に気付いたシルバー先輩は、私にシャワー室から出るように促した。
そして、シャワーで自分とグリムの身体に付いている泡を洗い流し始めた。

シャワー室でのハプニングの後、制服に身を包んだシルバー先輩がグリムと一緒に談話室に現れた。
開口一番にシルバー先輩は謝罪の言葉を述べ、私に向かって土下座をした。
オンボロ寮の床にくっつく程に深々と頭を下げるシルバー先輩。
一方で、グリムは驚きのあまりに魂が抜けそうになっていた。

「ニコル、グリム、本当にすまない……!」
「顔を上げてください、シルバー先輩!」
「オレ様、心臓止まりそうだったんだゾ……
「グリム、しっかりして! あなた、前にシルバー先輩と一緒にお風呂入ったことあるでしょ!」
「それとこれとは違うんだゾ……

とりあえず事態を落ち着かせるため、私は紅茶を淹れることにした。
キッチンに向かい、ポットのお湯を沸かせると段々と気持ちが落ち着いてきた。
せっかくだから、今日買ったばかりの苺とラベンダーの香りの茶葉を使ってみることにした。
甘酸っぱい苺と穏やかなラベンダーの香りに、グリムとシルバー先輩もようやく落ち着きを取り戻したようだ。
私は紅茶の入ったカップと切り分けた苺とバニラのバウムクーヘンを談話室へ運び、ちょっとしたお茶会を始めた。

「ふなっ、美味そうな香りがするんだゾ!」
「今日買ってきたお菓子と紅茶だよ。召し上がれ」
「ありがとう。さっそく頂こう」

今、私の目の前にいるのはいつもどおりのシルバー先輩だ。
シルバー先輩とグリムは美味しそうに紅茶とバウムクーヘンを堪能していた。
紅茶とお菓子を囲みながら、シルバー先輩がどうしてうさぎの姿に変身していたのか話してくれた。
シルバー先輩は鏡舎へ向かう途中で悪戯好きの妖精と出会い、うさぎに変身する魔法をかけられてしまったらしい。
ツノ太郎さんたちに助けを求めるためにディアソムニア寮へ向かおうとしたけれど、途中で睡魔に襲われ、たまたま近くにあったオンボロ寮の玄関の前で昼寝をしたという。

「そんな大変なことになっていたんですね」
「ああ、すまなかった。うさぎの姿だと話すことも出来なかったから、ニコルにうさぎの正体は俺だと伝えられなかったんだ」

シルバー先輩は穏やかな口調でそう言いながら、私の頭を優しく撫でた。
私の顔を見つめてくる真っ直ぐな瞳は、うさぎの姿になっていた時も今も変わらない。
ふと、どうして悪戯妖精はシルバー先輩をうさぎの姿に変えたのかという疑問が頭に浮かんだ。
私は思いついた疑問をそのままシルバー先輩に投げかけた。

「そういえば、親父殿から伝え聞いた話があるな。暖かくなると、女神とうさぎが春の訪れを知らせにやって来るという内容だ」
「うさぎは春の訪れを知らせるメッセンジャーなんですね」
「悪戯好きな妖精は俺をうさぎに変身させることで、春が来たことを知らせようとしたのかもしれない」
「面白い発想ですね」

悪戯妖精の魔法には驚かされたけれど、春の到来を告げる白銀の子うさぎは妖精なりの祝福の象徴だったのだろう。
真面目な顔で突拍子のないことを語るシルバー先輩も、あの時のうさぎのように純粋で可愛らしく思える。
そっとシルバー先輩に抱き寄せられ、唇にキスをされた。
二人で過ごす春の季節はまだ始まったばかり。


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