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ドライヤー

全体公開 2 23 1093文字
2022-04-19 11:40:49
Posted by @uk_plus_



 「こら!寿三郎!待って!」
「待たんよ待たん!」

 2DKの狭いリビングで大男と私は追いかけっこをしていた。原因はその大男寿三郎がお風呂上りの濡れた頭のままずっと辺りをうろうろしていたことだ。

「そんな濡れたままだったら風邪ひくでしょ寿三郎!」
「そないおかんみたいなこと言うなや!」

巨体のくせにすばしっこい寿三郎に四苦八苦しながらも、なんとかTシャツの端を握った私はぐいとそれを手繰って彼の動きを止めた。

「そら捕まえた!」
「あー!捕まった!」

そしてガチリと腰に腕を回してもっと動けないようにしてやると、いよいよ寿三郎は観念したように私を抱きしめた。

「わーかりましたよ」
「それでよろしい」

はい座ってと促せばしぶしぶと言った感じで寿三郎はそこに座った。私はそばにあったコンセントにドライヤーを繋げて寿三郎の後ろに座る。

「優しくしてや」
「はいはい」

最後の抵抗と言わんばかりに甘えた声で言う彼に呆れながら、私はドライヤーのスイッチを入れた。ごうごうと音を上げるドライヤーの音がリビングに響く。

「なぁー」
「なにー」

濡れた赤毛を手で梳かしながらドライヤーを当てていると寿三郎が少し大きめに声をかけてきた。私の返事も自然と大きくなってしまう。

「毎日こうやってー優しく乾かしてくれんー?」
「自分でしなさいよー」
「ええ~冷たい~」

ドライヤーの大きな音の中、互いに大きな声でやり取りをした。そうこうしているうちに寿三郎の髪の毛は乾いてふわふわになっていく。

「もうちょっとだからねー」

そして全体が乾いたところでカチリとドライヤーの電源を切れば、それを待っていたと言わんばかりに寿三郎は私に抱き着いてきた。

「え、ちょっと、どうしたの」
「ちゃーんとドライヤー我慢したんやからご褒美」

私の胸元に頭を寄せてすりすりと頬擦りをして、寿三郎はより甘えた声でそう言った。乾かしたての癖毛が眼下でふわふわと動く様子に私は笑ってしまう。

「あーはいはいわかったよ。頑張りましたねー」

求められるままに優しくその頭を撫でてあげれば、満足そうに笑う寿三郎の表情が見えた。


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「ドライヤー終わったら必ずすりすりさしてや」
「はいはい」


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