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子守歌

全体公開 3 851文字
2022-04-21 21:56:07
Posted by @uk_plus_



「ねえ月光、なんか子守歌、歌って」
「どういうことだ

布団に入って五分。二度ほど寝返りを打ってから私は一緒に布団に入っている月光にそう言った。

「眠れないの」
「目を瞑っていろ」
「冷たい」

隣で横になっている月光はそう返事をして私に背を向ける。彼氏の冷たい対応に頬を膨らませて、私はそっとその背中に指を這わせた。

「つ、き、み、つ、のばかやろう」
「やめろ」

そう一通り背中に指で書いて言えば、くすぐったかったのか観念したように月光はこちらを向いた。

「どうしたらいいんだ」
「子守歌」
……わかった」

そして私の背中に手を当ててぽんぽんと優しく叩いて、ひっそりと月光はとある子守歌を歌い始める。適度に低く優しい声音がありがちな子守歌を歌った。その歌のリズムに合わせて叩かれる背中に、私はひとつ深呼吸して目を閉じる。とん、とんと取られるリズムとその手の体温がじんわり背中に沁みて、心地よい月光の声が耳に馴染んでいくと、私の意識は微睡んでいった。


―――――――――――――――――――――

 呼吸が一定になって、それが寝息に変わった瞬間を越知は確認した。唐突に告げられた要望に戸惑いながらも、なんとか応えた越知は安堵したようにため息を吐く。

……寝たか?」
……

静かにそう口にしてから隣に眠る彼女が完全に寝入ったことを確認して、越知は自分の楽な姿勢に直った。閉じられた瞼に長い睫毛が縁取られて、その下には少しだけ開いた唇がある。

可愛らしい我儘だったな。

心の中で独り言ちながら、越知は少しだけ微笑んだ。そして今一度じっくりと彼女の寝顔を見てから、己もゆっくりと瞼を落とす。彼女の寝息を子守歌にして。


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