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わたしをかたちづくるもの

全体公開 916文字
2022-05-03 04:19:12

花山院襲 生誕祝い
三月のパンタシアの『たべてあげる』を聴きながら

何気ないこの光景が、私にとって至上の幸福なのです。

「馨さん、今日のごはんは何ですか?」
眠りから覚めればいい匂いがする。それは洗濯された寝具。それは心地好い初夏の香。それはいとしいひとが作るごはん。
作ってる最中に抱きついちゃだめって言ったでしょう、と諭される。肩越しに、目に眩い黄色が見えた。
「卵!」
やさしい味がするから卵料理は好きだ。甘味とは違う、ふんわりとしたあの甘さがたまらない。
「もう少しで出来るから、ちゃんと身支度して来なさい」
「はあい」
先程まで横たえていた身体を伸ばし、顔を洗って部屋に戻る。髪を梳かし、着替え、髪をセットする。リボンを結ぶたびに何か切り替わる感覚。今日も楽しい一日だといいな。大切なブローチももちろん着けて、またあの場所へ。
「はい。ちゃんと支度、してきましたよ」
「ふふ、ちょうどごはんが出来たところです」
美味しそうな匂いと湯気を立てて献立が並ぶ。このひとが作るものならなんだって美味しい。
いただきます、とそろえて食事をする。目の前に大好きなひとが居て、同じ場所で寝食を共にすることが、一日一日、愛しくて、満たされた。

その日は誕生日だった。毎年欠かさず祝ってくれるのが嬉しくて、今年もつい甘えたになってしまう。
「今年の誕生日もありがとうございます。私、すっごく幸せです」
「気が早いですね。まだ一日は終わってませんよ」
この気持ちはすぐに伝えたいし、たくさん伝えたくもある。好きと愛以外の理由は無い。
誕生日の日の晩ごはんは毎回腕によりをかけて作ってくれる。自分のために作って貰えることだけでも愛であるのに、こんなに良くしてくれるなんて、と舞い上がってしまう。
「貴女のご実家の料理には及ばないでしょうけれど」
なんて謙遜するけれど、作ったものにかけられたものはそれ以上の価値がある。
「そんなこと言っちゃって。どれも美味しいですよ、貴方が作ってくださるものなら」
もはや自分の血肉はこのひとが作っているも同然。自分を想って作ってくれた料理は、自分の心と身体を満たしてくれた。そう、つまるところ、このひとが作るものならなんだって美味しい。今まで食べてきた高級なものよりも。


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