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なにも知らない12

全体公開 2 1123文字
2022-05-04 23:29:38

△関係

名前変換
Posted by @uk_plus_



 三年次を迎えた春。何度過ぎたかわからない資料室での時間と、ごくたまに訪れる両親が留守にする時間の己の自室。そうして過ごした時間たちは確実に二人の関係を作っていった。決して他人には言えない関係を。

 今日もそうして越知の自室で二人は肌を重ねた。越知の両親の帰宅が遅い日の決まりごとになっていたそれは、二人がゆっくりと何かを話す機会でもあった。
 露わにされた肌はそのままに二人して寝具に包まれている時だった。越知のスマホがメッセージを知らせる音を知らせた。

毛利か」
「毛利?」
「後輩だ」

横になったままスマホに手を伸ばした越知はすいとそれを操作してひとつ返事をする。その様子を見ていた名前はすりと越知の腕に頬を寄せた。

「たまに話してる男の子?」
「ああ、そうだ」
「ちゃんと先輩してるんだね」

意外そうに言う彼女の言葉に苦笑しながら越知はスマホの画面電源を落とす。

「心外な反応だな」
「ご、ごめん」

意地悪気味に言ってやれば名前はおずおずと謝り体を丸くした。その仕草が可愛らしくてひとつ頭を撫でた越知は、名前に向き直った。

「別に責めていない」

二人でいる時間をスマホに割いたことを詫びるように、越知はもう一度名前を撫でる。その手に目を細めた彼女もくすりと笑いわかってるけどと返事をした。そしてどちらからともなく笑い合って軽く唇を重ねた。

「越知くん、今何時?」
もうすぐ、七時半だ」
「そっか」

名前は時刻を聞いてからすっと寝具から立ち上がった。そして床に散乱する衣服を拾い始める。それに倣うように越知も上体だけベッドから起こして、彼女の背中を見た。綺麗な腰回りのラインが眩しくて越知は目を細める。

「帰るのか」 
「うん、遅くなっちゃう」
送って行く」
「ううん、大丈夫だよ」
「しかし

そこまで出た越知の言葉は続かなかった。下着を身に着けた名前が右手で口を塞いだからだ。すっと離された手が名残惜しい体温を越知の口元に残して。

「大丈夫」

そう言って朗らかに笑った彼女は、いつも学校で見ている姿そのものでそれ以上言葉を続けることは越知にはできなかった。踏み込めない薄い壁は融解を迎えた今もまだ一枚存在しているようだった。そして越知は名前の背中を玄関先で見送った。



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