この話は下記を加筆・再構成しリライトさせていただいたものです。
【出典】禍ちゃんねる:新作物真似もあるよ回(2019年1月28日配信)
(https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/522051236)
@saba__uma
1.マンションの女(該当話53:20~)
会社員のAさんから聞いた話だ。
ある時Aさんは出張先で、ホテルまでの帰り道がわからなくなってしまった。
普段ならばちょっとした距離にタクシーを使うのは抵抗があるのだが、不慣れな場所であるしすでに日も落ちていたので仕方なくタクシーを呼んだ。
「どちらまで?」
「○○駅の辺りまでお願いします」
「えっ!それじゃあ、この××通り使ってもいいですか?」
そう言われても土地勘のないAさんはピンとこない。
「まさか遠回りになるなんてことは……」
「いえいえ、ここから○○駅まで最短ルートです」
運転手はいかにも人の良さそうな男性で、嘘をついているようには見えない。
「……それならじゃあ、お願いします」
「そうですか!いやぁ~ありがとうございます!」
運転手はパッと顔を輝かせ、何度も何度も頭を下げながらタクシーを発進させた。
「本っ当に助かりました!お客さんがいなかったらどうなってたことか……」
「はあ……」
いいから前を見てくれ、と言いたくなるほどに運転手は感謝しきりで、Aさんは困惑するほかない。
今日の売り上げやノルマがよほど危なかったのかとも思ったが、それなら近道でこんなにも感謝されるはずもない。
Aさんの怪訝そうな様子を見てとったのか、運転手はミラー越しにえびす顔をこちらに向ける。
「お客さん、ここらの人じゃないでしょ」
「ああ、はい。仕事で来たんですけど」
「そうですよねえ!この辺の人だったら、あの道なんて通らないですもん」
もしかして危なかったり荒れていたりする道なのだろうか、と後悔し始めるがもう遅い。
それにもしそういう道だったとして、運転手が『助かる』ことの説明がつかない。
釈然としないものを抱えたまま、気付けばタクシーはその××通りに入っていた。
周囲を見回しても何の変哲もない町中のように見えたが、道の先のマンションがふとAさんの目を引いた。
既に暗くなっているにもかかわらず、明かりがちらほらとしか点いていない。
外装はかなり立派なマンションに見えるが、ほとんど人が住んでいないらしい。
さらに近付くと、マンションの玄関前に女が立っているのが見えた。
玄関前といっても、歩道どころか半ば車道に身を乗り出すような危うい位置だ。
対向車がおらず運転手が大きく避けてくれたから良かったものの、そうでなかったら接触事故を起こしてもおかしくはない。
危ないな、なんであんなところに立っているんだ。
「うぅ~っ……!」
うめき声にふと運転手へ目を向けると、先ほどとはうってかわって真っ青な顔をひきつらせている。
よく見るとその腕には、アクセサリーとは思えない数珠がいつの間にか巻かれている。
あの女のせいなのか、と振り向いてみると、女は何故か首だけを真横に捻るようなおかしな体勢で、じっとこちらを見ていた。
不気味に思いながらも女の姿はだんだんと遠ざかっていく。
そして角を曲がって女もマンションも見えなくなったあたりでようやく、運転手が大きく息を吐いた。
「え?なに、何ですか?」
Aさんが状況を飲み込めずにいると、運転手はダッシュボードへ数珠をしまいながらぼそりと呟く。
「あの女ね、死んでるんですよ」
「えっ?ど、どういうことですか?」
困惑しきりのAさんをちらりと見やり、運転手は続ける。
「あそこはね、営業所へ戻る時に通らざるをえない道なんですよ。あそこ通るとああして女が立ってますけど、こっちは停めるわけないじゃないですか。もう死んでますから」
「は、はぁ……」
「でも停めないと乗車拒否されたみたいに思うんでしょうね。ヤバいことになるらしいんですよ」
理解も想像も及ばぬ説明に、Aさんは絶句するほかない。
しかし運転手は再び、嬉しそうな顔でこちらを振り返る。
「まあ、今日はお客さんがいるから乗車拒否じゃないんで!いやぁ本当にありがとうございます!お客さんは恩人ですよ~!」
よほど助かったのか運転手は今にも拝み始めそうな勢いで、感謝の言葉はAさんがタクシーを降りるまで続いた。
とりあえずAさんは、その地域への出張はもう断るようにしたそうだ。
2.遺影の女(該当話56:00~)
前話とは別の地域、関西地方でタクシー運転手をしているBさんから聞いた話だ。
その地域には、タクシー運転手の中で有名な女がいるという。
町中で乗り込んでくるその女は全身黒づくめで、夏場に長袖だったり冬場に薄手の服を着ていたりと季節感がおかしい格好をしている。
そしてその服装は喪服のようにも見えるが、斎場とはまったく関係のない行き先を告げてくる。
長く伸びた前髪は何故か鼻の下で真横に切り揃えられていて、目元は見えない。
かろうじて覗いた口元や輪郭を見るに比較的若い女のようだが、どうにも薄気味悪い。
乗せるんじゃなかったな、と走っているうちにタクシーはひと気のない辺りに入っていく。
すると女は鞄の中から遺影を取り出し、前へ向けるように膝の上で抱える。
それも、黒いリボンの掛かった遺影に写っているのは黒づくめで長い前髪を鼻の下で切り揃えた若い女――明らかに女本人なのだそうだ。
いかにも不気味な女ではあるが定番の怪談のようにいつの間にか消えていたり、シートがびしょびしょに濡れていたり、なんてことはない。
指定した場所へ着けばメーターの通りに金を支払い、タクシーを降りていく。
だがその行き先はいつも同じ、高齢化の果てにゴーストタウンと化している団地なのだという。
敷地の入口で降りていくので、女がその後どこへ行くのかはわからない。
ただ、繁華街からも遠く高齢者ばかりが数人だけ残っているような団地に、比較的若いまだ女が住んでいるとも思えない。
幽霊か、はたまた精神に異常を来たしている人間か。
いずれにせよ気味の悪い存在であることに代わりはない。
しかしこの女がタクシー運転手の中で知られているのは、奇行のせいばかりではない。
非常に金払いがいいのだ。
町中から郊外の団地まではかなりの距離があり、タクシーの料金もかなりのものになる。
おまけに女は行き先を告げる以外にほとんど喋らないこともあり、時には万札を数枚出したまま釣銭さえ受け取らずに去っていく。
このため、稼ぎに目が眩んで乗せてしまうタクシー運転手が後を絶たないのだそうだ。
ただ、乗せた後は寒気がしたり風邪をひいたりと、必ず体調を崩してしまうのだという。
「やっぱり健康か金か、どっちをとるかだよね」
Bさんは世知辛い様子で溜息をついていた。
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【出典】禍ちゃんねる:新作物真似もあるよ回(2019年1月28日配信)
(https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/522051236)
猟奇ユニットFEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて過去配信されたエピソードを加筆・再構成しリライトさせていただいたものです。
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