@tatakawaneba
「どうにもならないな。」
金城が辺りを一通り見回し小さく呟いた。続けて溜息のオマケがひとつ。先程から金城の席の前にはひっきりなしに女性が訪れている。花柄のワンピースを着た可愛らしい女性から体の線を強調させ露出の多い服を着た肉感的な女性まで、その年代からタイプまで様々だ。
「何を言う、さっきから選び放題じゃないか。」
「なんというか、こう…ピンとくるものがなくてな。」
女性陣がいなくなる一瞬を狙って、金城は隣に座る福富に話しかけてくる。会社帰りのスーツ姿で赤ワインを飲む姿が憎らしいほど様になっていた。先程から楽しそうに金城と会話をしては惚けたような顔をして帰っていく女性陣に、今の言葉を聞かせてやったらどうだろうかと福富は考える。他の男性陣は女性陣の元へ我先にとアプローチしているのに対し、先程から金城は一歩も動いていない。にこにこと愛想のよい笑みを浮かべて待っているだけで女性がきてくれるのだ。何十人といる男性陣の中で、どう考えても一人勝ちしている。少しでも対抗しようと福富はワイン代わりのリンゴジュースを口に含んだ。うむ、やはり果汁100%に限る。
ほどほどにアプローチがあるものの、金城と比べてしまえば手持無沙汰な福富はあいた時間を隣に座る金城と女性の会話を聞いて過ごす。仕事だとか、年収だとか、理想の結婚式とか、好きなタイプだとか。どの女性も一様に金城を見る目がきらきらと輝いている。きれいだな。他人事のように思った。
「金城さん、モテそうなのになんで婚活パーティーに参加されたんですか?」相手に困ってないでしょう。女性はそう言って華やかに笑う。
「運命の人を待っていまして。」
澄ました顔で答える金城。女性の鈴のような可憐な笑い声に聴覚が支配される。
「お前、さっき話していた女性と良い感じだっただろう。」
「そうか?」
身に覚えのない問いかけに福富は首を捻る。料理はバイキング形式だ。手持無沙汰気味の福富はエビピラフに狙いを定めてひたすら頬張る。参加費用は決して安くはない、ここで回収しておかねば。はしたないぞ福富。そういう金城も会話の合間に着実にサイコロステーキを消化していっている。大好きな焼きそばは食べなくていいのか?そう聞くとこれが一番単価が高そうだからなと教えてくれた。はしたないのはどっちだ。
「運命の人は来てくれたか?」
「いや、」
横に首を振る。エビピラフは冷凍食品が一番美味いのだと、金城と一緒に住み始めてから知った。きっとこのエビピラフのメーカーは味の素だ。粗方福富が食事を終えたのを見計らって金城は立ち上がる。
「じゃあ、行くか。」
どうやら、俺たちのこの関係もとりあえずは次のパーティーまで続くようだ。両手を合わせ、箸を揃えて立ち上がる。
「ああ、行こう。」
まだパーティーは終わっていない。運営の男性に引き留められるも急用で、と押し通す。二人でエレベーターへ乗り込んだ。閉のボタンを押したところで、先程出てきた会場のドアから先程まで福富と話していた女性が慌ててでてくるのが見える。
目があった。福冨は反射的に手を伸ばす。女性の開かれた形の良い唇が言葉を紡ぐ前に、強い力で抱き寄せられた。体は反転し、視界から女性が消えてエレベーターの無機質な壁が現れる。背後でドアが閉まる音が響いた。金城の体温が、福富の頭から思考を奪っていく。エレベーターを降りる頃には、女性の顔すら思い出せなくなっていた。きっともう二度と会うことはないだろう。
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汐田さんの金福演習に参加させて頂きました。
いつも楽しい企画をありがとうございます。