私の愛する微睡の騎士がこの世に生を受けた素晴らしい日。
夜空に瞬く星のように煌びやかで美しい薔薇を捧げよう。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第24話。
※創作女監督生の名前が出ます
※捏造設定あり
@natsu_luv
蒼く澄み切った空が果てしなく広がっている。
遠くから小鳥のさえずりが聞こえてくる。
温和な太陽の光が降り注ぎ、緑色の大地を優しく照らす。
彩り豊かに咲き誇る花々には、初夏の歓びと希望が満ち溢れている。
私の愛する人がこの世に生を受けた日も、こんな風に穏やかな日だったのだろうか。
今日はシルバー先輩の誕生日、素敵な一日になりそうだ。
パーティー会場のディアソムニア寮を訪れる前に、私はエースくんとデュースくんと一緒に麓の街へプレゼントを買いに行っていた。
まずは、私とシルバー先輩がよくデートの時に足を運ぶ雑貨屋へ向かった。
うさぎの看板が飾られた玄関をくぐると、新しく入荷した白い仔馬のグッズが目白押しだった。
「うわぁ、可愛い!」
「そういえば、シルバー先輩は馬術部だったな」
「そうだよな。馬の抱き枕とか良さそうじゃね?」
「抱き枕か……。あっ、これ良さそう!」
私は仔馬グッズの棚の上段に置かれているぬいぐるみ型のアームレストを手に取った。
シルバー先輩はよく警棒を使っているし、馬術部では手綱を握っている。
腕を休めることができるグッズがあれば、きっと重宝するかもしれない。
エースくんとデュースくんも「これは良い」と同意してくれた。
シルバー先輩への一つ目のプレゼントは白い仔馬のぬいぐるみ型アームレストに決まった。
さっそく会計を済ませ、私達は次のお店へと向かった。
二軒目のお店は生花だけでなく、様々なプリザーブドフラワーも扱っている花屋。
この時期は薔薇の花が満開になる季節というのもあり、店頭にあるプリザーブドフラワーのほとんどが薔薇である。
大輪のものから小ぶりな花のもの、色も赤やピンク、黄色などバリエーションが豊富だ。
ふと、青みがかった薄紫の薔薇が視界に入った。
薔薇の名前を目にした時、私は即座にシルバー先輩への贈り物にしようと決めた。
「この薔薇の名前、シルバー先輩の名前が入ってる」
「スターリング・シルバーというのか。いい名前だな」
「へぇ、こんな偶然もあるんだなぁ」
愛する人と同じ名前を冠した花籠の中にある大輪の薄紫の薔薇。
オーロラ色の瞳を輝かせながら、花籠を持って微笑むシルバー先輩の姿が容易に浮かぶ。
二つ目の贈り物を買い、私達はナイトレイブンカレッジへと戻ることにした。
三つ目の贈り物はパーティー会場に行ってから用意する予定となっている。
今年のシルバー先輩の誕生日パーティーも楽しみだ。
ナイトレイブンカレッジに戻った後、私達はすぐにディアソムニア寮へと足を運んだ。
門の前でリリア先輩とグリムが出迎えてくれた。
ちょうど魔法のバースデーダイスに選ばれたプレゼンターによるインタビューが始まる頃だという。
私達はインタビュー映像の撮影の邪魔にならないよう、パーティー会場の隅へと案内された。
定刻になり、バースデーインタビューが始まった。
プレゼンターとして現れたのはルーク先輩だった。
最初に行われたプレゼントの授与式で、ルーク先輩はシルバー先輩にポラロイドカメラを贈呈した。
その時にルーク先輩が披露した見事な開脚ポーズに、撮影現場の近くにいた私達と寮生たちは必死で笑いを堪えていた。
その後も二人による和やかな会話のやり取りが繰り広げられた。
インタビューが終了し、次はいよいよ幸運のギフトの贈呈式。
紙皿の上にシェービングクリームが山盛りの状態で載せられている。
よくテレビで放送されているバラエティ番組の罰ゲームなどに出てくるパイ投げに使われる品と同じものだ。
ルーク先輩は力強いアンダースローで幸運のギフトという名のパイ皿をシルバー先輩に目掛けて投げつけた。
しっかりと幸運のギフトを受け止めたシルバー先輩は、髪をかき上げながらクリーム塗れの笑顔を見せていた。
バースデー記念映像の撮影が無事に終了した。
次はお待ちかねの誕生日パーティー、私はリリア先輩と後から合流してきたカリム先輩とケイト先輩と一緒にステージの設営を始めた。
エースくんとデュースくんは、カリム先輩と一緒に来たジャミル先輩とセベクくんと一緒に料理を運んでいる。
パーティー会場の設営が終わり、私達は開始時間を心待ちにしていた。
定刻になり、ツノ太郎さんがパーティー開始の挨拶を始めた。
「今日はシルバーの誕生日だ。皆で盛大に祝ってやろう」
「誕生日おめでとう!」
祝福の言葉が発せられたと同時に、シルバー先輩が談話室に姿を現した。
部活や自身のイメージが描かれたワッペンの付いたスタイリッシュなスタジアムジャンパー、黒のシャツ、ライムグリーンと黒のストライプ柄のベストと蝶ネクタイ。
普段のシルバー先輩とはひと味違った素敵な装いだ。
参加者たちに温かく出迎えられ、眉尻を下げて微笑むシルバー先輩。
その姿を見るだけで私の心は充分に満たされていた。
本日の主役が到着し、盛大な誕生日パーティーが始まった。
談話室中にクラッカーの音が鳴り響く。
セベクくんとディアソムニア寮生たちがシャンメリーを注いでいく。
グラスが参加者全員に行き渡った後、ツノ太郎さんが乾杯の音頭をとった。
皆がそれぞれお皿の料理を取り始めた。
待ってましたと言わんばかりに、グリムがお皿いっぱいに料理を盛り付けている。
「腹減ったんだゾ! ごちそう食べるんだゾ!」
「ちょっと、グリム! 欲張りすぎだよ!」
「心配はいらない。料理はまだたくさんある」
「すみません、シルバー先輩……」
謝る私に対してシルバー先輩は寛大な態度で接してくれた。
いつの間にかお皿の上の料理が空っぽになり、いよいよ誕生日ケーキのお出ましだ。
セベクくんと寮生たちがケーキをシルバー先輩の目の前に運んできた。
三段重ねのピスタチオクリームのケーキは、この日のために用意された特別なもの。
麓の街の有名パティスリーに作成してもらった特注品だそうだ。
シルバー先輩がケーキの頂にそびえ立つろうそくの火を吹き消した。
火が消えた瞬間、会場内に拍手の音が鳴り響いた。
「さて、次はケーキ入刀じゃな。ニコル、お主もこちらに来るといい」
「はっ、はい」
「マーベラス! では、私がシルバーくんにプレゼントしたカメラでキミたちの愛の共同作業を写真に収めることにしよう!」
「ありがとう」
リリア先輩がシルバー先輩に剣型のナイフを手渡した。
私はシルバー先輩の隣に立ち、ナイフの柄に手を添えた。
重なり合う手と手の温かさを感じる。
カメラを構えるルーク先輩やリリア先輩たちに見守られながら、私達は剣型ナイフの鋒をケーキにそっと入れた。
カメラのシャッター音が鳴り、拍手と歓声が響き渡る。
入刀されたケーキはセベクくん達によって回収され、切り分けられていった。
寮生のひとりが紅茶のカップを参加者全員に手渡している。
紅茶とケーキが行き渡り、私もさっそくケーキを頂いた。
「このケーキ美味しいですね」
「オレ様、いくらでも食えるんだゾ」
「そうか。喜んでもらえて嬉しい」
「シルバーくん、ニコルくん、さっき撮った写真が出来たよ」
「うわぁ、綺麗に撮れてますね!」
ルーク先輩が撮ってくれた写真の中にいるシルバー先輩と私が幸せそうな表情を浮かべている。
ケーキを存分に堪能した後は、参加者からのプレゼントの贈呈式。
まずは、ジャミル先輩からのプレゼントだ。
中身はスリムタイプの魔法瓶の水筒、ジャミル先輩らしい実用的な贈り物だ。
ケイト先輩からのプレゼントは、鮮やかなライムグリーンが目を惹くスポーツタオルだった。
「ありがとう。部活や鍛錬の時にでも使わせてもらおう」
「シルバー先輩、次は私からのプレゼントです」
まず最初に、薄紫の薔薇の花で作られたプリザーブドフラワーの花籠をシルバー先輩に手渡した。
花籠の中で咲き誇る薔薇を見た瞬間、シルバー先輩の顔が綻んだ。
その姿は色とりどりの花々を愛でる美しい姫のようだった。
「綺麗な薔薇だな。俺のために選んでくれたのか?」
「はい。実はこの薔薇の名前、シルバー先輩と同じ名前が付いているんですよ」
「そうなのか……!」
私はこの薄紫の薔薇の名が『スターリング・シルバー』であることを伝えた。
今日のこの日の主役であるシルバー先輩に相応しい、優美でありながらも凛とした姿を見せる薔薇の花だ。
夜空に瞬く星のように強い存在感を持つ薄紫の薔薇に、シルバー先輩はすっかり魅了されているように思えた。
「シルバー先輩、こちらの箱もどうぞ」
「ありがとう。中身は……白馬のぬいぐるみか?」
「こちらはアームレストです。疲れた腕を休めるための枕のようなものですよ」
「そうか、ニコルらしいプレゼントだな」
シルバー先輩はそう言って眉尻を下げた微笑みを浮かべた。
白馬は馬術部で活躍するシルバー先輩によく似合う動物だ。
そう思い、私は麓の街の雑貨店で売られている白い仔馬のグッズを贈ろうと決めたのだ。
次はいよいよ三つ目の贈り物。
リリア先輩が私に合図を送ってくれた。
カリム先輩とケイト先輩とも合流し、私はステージの方へと向かった。
シルバー先輩が好きだと言ってくれる私の歌声、これが三つ目のプレゼント。
スタンバイ完了し、一曲目のイントロが奏でられた。
シルバー先輩に贈るバースデーライブの開演だ。
讃美歌を連想させるオルガンのイントロが談話室に響く。
この楽曲はシルバー先輩が気に入って聴いている、希望に満ち溢れた歌詞と力強いメロディが印象的なもの。
オルガンの旋律が鳴り止んだ瞬間、曲調に激しさが加わった。
流れるようなエレキギターの主旋律をベースが奏でる低音とドラムのリズムが支え、より華やかな雰囲気を演出していく。
私は声高らかに明日への希望を描いた歌詞を歌い上げた。
一曲目の演奏が終わり、会場内に拍手の音が湧き起こった。
「ありがとう。俺の好きな曲を演奏してくれて嬉しい」
「次の楽曲もシルバー先輩のお好きなものですよ」
「よし、さっそく始めるぜ!」
カリム先輩がドラムのスティックでカウントをとった。
カウントの後に力強い響きを持つイントロが奏でられていく。
速いテンポで展開される勇壮な旋律、真っ直ぐな志を抱く戦士の姿を描いた歌詞が特徴的なこの楽曲。
ひとりの戦士が勇猛果敢に闘う姿を想像しながら聴いている、そうシルバー先輩が前に言っていたことを思い出した。
一心不乱に剣を振るう戦士になったかのように、私は気迫を込めて歌い上げた。
演奏が終わった後に眉尻を下げたシルバー先輩の顔を見た時、楽曲に込めた想いが届いたと確信できた。
二曲目の演奏も終わり、いよいよ最後の楽曲。
最後の曲はインストゥルメンタルの楽曲を持ってきた。
私はアコースティックギターを持ち、ツノ太郎さんにもステージへ来てもらった。
愛用の黒いバイオリンを構え、ツノ太郎さんが最初の旋律を演奏した。
後を追いかけるように、私達も音を奏でて楽曲に彩りを加えていく。
こうして、私達は輪廻転生をテーマにした生命力の溢れる楽曲を観客たちに届けた。
「素敵な演奏だった。皆、どうもありがとう」
「シルバー先輩、誕生日おめでとうございます。楽しんで頂けて嬉しいです」
バースデーライブは大成功。
パーティーもだんだんとお開きの時間に近付いている。
シルバー先輩がテラスで夜空を眺めていた。
私もテラスの方へ歩み寄り、シルバー先輩の隣に立った。
ディアソムニア寮の空に幾千の星が瞬いている。
ふと、シルバー先輩に捧げた薄紫の薔薇を思い出した。
真っ黒な空で出来たキャンバスの上に光る一等星のように凛とした美しさを持つ薄紫の薔薇の姿を。
「今日は誕生日を祝ってくれてありがとう。またひとつ、俺にとっての大切な思い出が増えた」
「シルバー先輩、私もこうしてお祝いできて嬉しいです」
夜空を背景に微笑むシルバー先輩の姿は、華やかに咲き誇る大輪の薔薇のように美しかった。
私は愛する微睡の騎士の名を冠した薄紫の薔薇に想いを馳せた。
シルバー先輩にそっと抱き寄せられ、見つめ合った後に口付けを交わした。
煌めく星たちと花籠の中の薔薇が私達を優しく見守っているように感じた。