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【サガ男女カプアンソロ】これからもずっと、あなたと共に【鎧の王×村一番の美人】

全体公開 1 4207文字
2022-05-15 22:35:12

魔界塔士サガの最初の世界で出会う、鎧の王と村一番の美人さんの初々しい夫婦のお話です。主人公たちが世界を去った後、という体で書いてます。
また、話の都合上、村一番の美人に名前(セーラ)をつけています。
さらに原作にいないキャラ(村一番の美人の友人・名前付)が出てきます。ご了承下さい。

 冒険者さん達のおかげで、私は心から愛する人と結婚することができました。村の皆さんやお城の皆さんから盛大に祝福され、私はようやく安心して暮らすことが出来るようになりました。
 これで愛する鎧の王とずっと一緒に居られる。もうそれだけで私は天にも昇る気持ちになっていたのです。――けれど、この時の私に言いたい。現実はそんなに甘くないのだと。

***

……はあ」
 城の一角に王が作ってくださった私専用の庭。そこには私が植えた色とりどりの花が咲いています。美しいその花たちは私の心を癒す存在ではあるけれど、溜め息が溢れてしまいました。
「もう五日も王とまともに顔を合わせられないなんて……
 村にいた時、王は三日に一度は会いに来て下さっていました。でも、それは王が私のために時間を作ってくださっていたのだと今ならわかります。
 この世界には三人の王がいらっしゃり、それぞれ土地を治めていました。けれど、剣の王も盾の王も殺された今、この世界を治めるのは鎧の王ただ一人。今は他の王が所有していた土地などの引き継ぎに追われていて普段よりも輪をかけて忙しくされているのです。彼の部下の皆様もそうです。何も知らない村娘だった私の入る隙などこれっぽっちもありませんでした。
「はあ……
 不甲斐なさからか、気が付けば溜め息ばかりが出てきます。何か私にも手伝うことができればいいのに。仕事を手伝えなくて申し訳ないことを伝えれば王は「そなたがいてくれるだけで余は幸せだ」と仰りました。けれど、私は貴方の力になりたいのです。
 私にできることはなんだろうと考えた結果、掃除や洗濯、炊事なら今までやっていたし私でもできると思って申し出てみました。しかし「お妃様にそんなことはさせられません!」と恐縮され断られてしまいました。
 あまりにも遣る瀬無くなった結果、村を出る際に会えなくなるなら文通をしよう、と言ってくれた親友に先日手紙で愚痴ってしまいました。その返事はもうきてもいい頃ではありますが、中々来ません。あんなことを書いてしまって愛想を尽かされたのかなと書いたことを後悔してしまい、また溜め息が溢れてしまいます。
「はあ……今日は何をして暇を潰そうかしら……
「お客様! お客様! 勝手に出歩かれては困ります!!」
 途方に暮れていたその時、兵士さん達の慌てる声が聞こえてきました。誰かいらっしゃったご様子です。城の隅っこに居たものですから全く気づきませんでした。王妃として挨拶せねばと立ち上がれば、聞き覚えのある懐かしい声が届いてきます。
「あのねえ、アンタたち城で生活してるんならあの子の居場所くらい把握しておきなさいよ馬鹿じゃないの!?」
「なんだと!? 小娘の分際で生意気な……!」
「あら、客に手をあげようっての? 王妃様の友人に手を挙げたらアンタの王様の名誉に傷が付くんじゃなくって?」
「ぐぐぐ……
 会話から漂う不穏な気配に慌てて駆け寄ればギリギリどうにか間に合ったようです。ああ、何もかも懐かしい。その声も、その姿も。
「アン! アンなのね!!」
「セーラ! よかった会いたかった!!」
 私は村での大親友だった彼女の名前を叫びました。すると私の声に彼女はすぐに身を翻し、私たちは互いに抱きしめあったのです。

***

「もー、ほんと頭固いわねここの兵士! アンタの部屋に行ったらいなくてパニクるし私が探すって言えば勝手に動くなって怒るし」
「だってそれが仕事だもの。もしも不審者だったら、城の中を勝手にウロウロされたら困るわ」
「ま、アンタに無事に会えたから別にいいけどね」
 とりあえず私の部屋へと案内し、友人と久しぶりに話したいからと兵士さんやメイドさんに説明して二人きりにしてもらいました。アンはと私はテーブルを挟んで私は相向かいに座りました。
「でも驚いた。こっちに来るなんて。ここまで来るの大変だったでしょう?」
「まあね。でもどうしてもアンタに直接会いたかったから。あんな手紙貰ったら確かめたくもなるわよ」
 ふふんと得意げに言う彼女の言葉に、私は気づけばボロボロと大粒の涙を溢していました。遠路はるばる会いに来てくれただけでも嬉しいのに、私のことを心配してくれていたのです。
「アン……よかっ、よかった……
「やだもう泣かないでよ! ……全く、アンタのその我慢出来るところはすごいけど、溜め込んで自分がやばいことになったら元も子もないんだからね?」
 アンがそっとハンカチを渡してくれました。ありがたく借りて溢れてくる涙を拭いますが、あっという間に濡れてしまいます。
「うん……うん……ありがとう……
「まあ、とりあえず溜めてること全部この大親友に言いなさいな。話なら幾らでも聞いてあげるわよ」
 彼女のその言葉に私はまた涙が溢れてきて、私の方へと身体を寄せてくれた彼女の胸を借りて、子どものようにわんわん泣きじゃくってしまったのでした。そしてゆっくり、自分の思っていることを彼女に全て伝えたのです。
……なるほど。つまりアンタは忙しくしてる王様の手伝いがしたいと」
「うん……
「そのこと、王様には言ってみた?」
「私が仕事を手伝えなくて申し訳ないですって言ったら『そなたがいてくれるだけで余は幸せだ』って仰ってたから……なんだか言い出せなくなって……
「王様も王様ね!? っていうかあんたたちもうちょっとちゃんと話をすべきだわ。一方通行にも程がある!」
「でも、今はとても忙しそうにされているから……
「は?」
 その時、アンからは低く地を這うような声が聞こえてきました。あ、これはとても怒っているときの声です。
「五日もまともに顔を合わせない夫婦なんて夫婦の意味がある? 時間は作り出すものなの。待ってくれるものじゃないわ」
「う、うん」
 ずいっと前のめりになってアンが言います。その怒りのオーラと彼女自身の迫力に私は後ろにのけ反りながらコクコクと頷きました。
「セーラ、いい? アンタもっとワガママ言っていいの。もうアンタを縛るような存在はここにはいないわ。仕事が忙しいのを言い訳に家族に迎えた者をほったらかしにするような輩は論外にも程があるわよ」
……いいの、かな。もっと話がしたいと言って」
「いいのよ」
 私のポツリと呟いた言葉に、彼女は微笑みながら肯定してくれました。そこから自分の思いが、やりたいことが、堰を切ったかのように出てきます。
「貴方の仕事を手伝いたいって言っていいのかな」
「いいんじゃない? そうすれば一緒にいる時間も増えて一石二鳥よ」
 そして、ニコニコと笑ってアンが肯定してくれたことに勇気をもらった私は、ついにずっと言えずにいた思いを口にしていたのです。
「もっと、もっと、ずっと一緒にいたいの!」
……だそうですよ王様。この子の話、ちゃんと聞いてました?」
「えっ」
 アンのその言葉に驚いたと同時に、私の部屋のドアが勢いよく開かれました。するとそこには、我が最愛の王がいらっしゃったのです。そうして王はゆっくりと私の元へ歩いてきました。
「セーラ、ごめんね騙すような形になっちゃって。アンタからの手紙を受け取ってから私、直接王様と手紙でやりとりしてたの」
「ええっ」
「我が妻よ……そなたの言い分も聞かず、すまなかった。もっとそなたの話を聞けば良かったのだな」
「いいえ、いいえ、私の方こそきちんと言えば良かったのに!」
「ほら、だからちゃんと話せって言ったでしょう?」
 私たちの話を聞いて、アンがふふんと得意げな顔で言います。
……アン……ありがとう」
「んじゃ、私は帰るから。あとは夫婦水入らずでどうぞごゆっくり〜」
「え、あ、アン!?」
 そうして、彼女は笑顔で手を振りながら部屋を後にしました。後には、私と王が二人きりで残されます。久しぶりにきちんと拝見した王の姿は、何処か疲れたような、けれども嬉しそうなご様子でした。
「いい友人を持ったな」
「はい……あの、ええと」
 完全に二人きりという空間に、私の方が無駄に緊張してしまって、何か話さなきゃ、けれど何を言えばいいのかとしどろもどろになっていると、王の方が私に尋ねてきました。
「我が妻よ。私の仕事を手伝ってくれるという話は……本当か?」
「えっ!? は、はい。政の話はさっぱりな小娘ですが、貴方がどんな仕事をどんな風に行っているのか知りたいですし、貴方の手伝いをしたいのです」
 私が王の目を見ながら震える声で伝えると、王はゆっくり頷いてから答えて下さいました。
「そうか、そなたはそんな風に思ってくれていたのだな……明日から、早速手伝ってもらっても良いか?」
「もちろん! 今すぐだって構いません」
 王から直接仕事を手伝う許可をいただけて、私は舞い上がってしまいました。私が張り切って準備をしようとしたその時、王が笑って声をかけてくださいます。
「ありがとう、我が妻よ。だがな、今日は大臣たちに叱れてしまったのだ。今日はもう休めと」
「えっ、あ、あのどこかお加減でも悪いのですか!?」
 嬉しい気持ちから一転、まさかの出来事に身体が溶けて消えるような恐怖に襲われます。何処か具合が悪いなら、お医者様や薬を手配せねばと看病のことを考えはじめたその時、王が少し言いにくそうに口を開いたのでした。
「いや、その、体は大丈夫だ。ただ……
「ただ?」
 私が鸚鵡返しに尋ねると、王は顔を少し背けながら、喉から絞り出すような声で言いました。
……そなたが、恋しすぎて仕事に手が付かなくなってしまったのだ……
「まあ! それなら私も一緒です。私も貴方が恋しすぎてずっと貴方のことを考えていたのですから」
 まるで子供のような顔で可愛らしいことをいうものだから、私はいじらしくなってそのまま我が最愛の人をぎゅっと抱きしめていました。そうして王も私を抱きしめて下さいます。
「これからは、こうなる前にもっと色々話そう。それに……もっとこうして、触れ合いたい、と思う」
「私もですよ。もっとたくさんお話して、触れ合いたい」
 そのまま私たちはしばらくお互い見つめ合い、ゆっくり顔を近づけ口付けを交わしました。これからもずっと、共にいるのだと願いを込めて。
【終】


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