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猫の月光2

全体公開 14 1377文字
2022-05-19 22:18:15
Posted by @uk_plus_



 「ああはい、すみませんが、そういうことで」

猫がスマホに向かって話している姿はなかなかシュールだ。二三言やり取りした後たしりと前足で画面にひとつ触れて、猫の月光は通話を終了させたようだった。

「お仕事、休み取れた?」
「問題ない」
「ほんと、喋れてよかったね」

机の上に座っていた月光が私の座るソファに飛び乗りひとつ伸びをした。そして私の膝の上まで来て私を見つめた。

「お前とも意思疎通ができるのは助かる」
「ほんとだよ猫のこと何にもわからないもの
「俺が俺であることには変わりないが」
「そうでしたね、蕎麦食べるもんね

猫の月光が平皿に乗せた蕎麦を食んでいた姿を思い出して、私は苦笑した。

「猫、というよりも猫又に近いのかもしれない」
「猫又?」
「猫の妖怪だ」
「妖怪
「長く飼われていた猫などがなるものだ」
「博識だね月光は」

そう言いながら目の前の月光の頭をひとつ撫でてあげるとぐるぐると彼の喉が鳴る音がする。しかしすぐに彼はハッとして、私の手から頭を避けた。

「なんで」
「猫ではあるが、そういったことは、いい」

長い毛に隠れた目が少し見えて、きらりと光った気がした。どうやら猫になった現実を受け止めつつも、猫のように振舞うことは良しとしていないようだった。

「ここまで猫なんだから諦めたら?」
「そうは言っても俺は俺だからな」
「ほんと、変なとこ頑固だよね」

そう言いながらもう一度撫でようと手を出すと月光は膝からトスンと降りた。

「やめろ」
「はいはい」

私は諦めて立ち上がり寝室へと向かう。そろそろ夜もいい時間になっていた。

「もう寝るのか」
「色々ありすぎて疲れちゃったよ」
「そうだな」
「月光も寝る?」
そうしよう」

私が提案すると猫の月光はするすると足元に近づいてきて、くるりとひとつ回った。その姿を見て、私はそのまま寝室へと足を動かす。そしていざベッドの所まで来たところで、月光は床でころりと丸まった。

「え」
「どうした?」
「一緒に寝ないの?」
寝ない」

自然な流れでついてきていたから、てっきりこのまま同じ布団で寝るものだと思っていた私は思わず声を上げてしまった。しかし月光の意志は固いようで床に頭を置いた。

「そんなところで寝たら風邪引いちゃうよ?」
「猫だから平気だ」
「寂しくない?」
「猫だから平気だ」
「それ猫関係ある?」

そこまでやり取りをしてまあいいかと私も布団へ足を滑り込ませた。そしてしばらくして私は意識を手放した。


 「んあれ?」

ゆるく開いた目はぼやけていて、じんわりと部屋の天井が視界に映った。そこまで意識が浮上した段階で、私は腹部に何か重みがあることに気付いた。

「月光?」

そこには寝る前に床で見た形のままに、丸まった猫の月光が布団越しに私のお腹の上に乗っていた。

「やっぱ、寂しいんじゃんか

ぼんやり苦笑しながらそう言って、私は今一度目を閉じた。


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