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【Web展示】独歩の誕生日

全体公開 1 3 1692文字
2022-05-22 14:31:32

銃独オンリーの展示用に書いた👔誕のお話です。

五月十五日零時。
一年の中で一、二を争うレベルで一二三が騒がしくなるタイミング だが、今年は少し様子が違った。携帯の画面を凝視する独歩の傍らに寄り添って、その時を静かに見守っている。
この二十数年、独歩の誕生日をいの一番に祝ってきたのは誰でもない一二三だった。登校中の通学路から始まり、携帯を手に入れてからは零時きっかりにメールや電話で祝い、同居するようになった今では独歩の帰りを待ってまでおめでとうを告げるほどである。
そんな一二三だが、今年はまだお祝いの言葉を贈っていない。
今年の誕生日は独歩に恋人が出来て初めて迎える特別な誕生日。今年ばかりは独歩の大好きな恋人におめでとうの一番乗りは譲らなければ、と一二三は心に決めていた。
聞けば独歩の交際相手である入間銃兎は仕事が立て込んでいるらしく、誕生日当日は会うのが難しいものの、携帯でやり取りなら出来るかもしれないとのこと。尚更、一番の座は銃兎に渡すべきだ。
肩越しに覗く独歩の携帯の画面にはまだ通知は現れない。
入間さん、忙しいだろうな。」
独歩の表情は暗い。多分きっと、この後に続くのは卑屈なセリフだと親友歴二十年の勘が告げていた。
「入間ちんの事だから何がなんでも独歩の事は祝うと思うけどなぁ。」
「そ、それはそうだがでも。」
「大事な人の誕生日なんて真っ先に祝いたくて当然っしょ?付き合ってない俺っちだってそんなこと分かんのにさ。」
な?と微笑むと、独歩の表情が少しばかり緩んだ。
ピロリン。
二秒もない軽快な音が鳴った。その一瞬のメロディを独歩も一二三も聞き逃さなかった。
二人して身を乗り出して携帯の画面を確認する。
メッセージの送り主は。
「こ、公式アカウント。」
「あちゃぁ。」
『観音坂独歩さんお誕生日おめでとうございます。』の見出しから始まる、バースデークーポン配布のメッセージのようだった。
深いため息を吐いて肩を落とす独歩の背中をいつもより少し強めにバシバシと叩いた。
「そのクーポンで入間っちと美味いもん食べにいきゃいいじゃん!何なら入間っちも五月だから二人でお得。」
言いかけて、一二三はスマホの画面の小さな文字に目が留まった。細かい部分にまで注意が向くのは流石ホストと言うべきか。
「ちょい待ち独歩!もう一個メッセージ来てる!!」
「へ?」
通知の一覧を表示してホラ!と指さしたそこには、先程のクーポンとほぼ同時に届いていた銃兎からのメッセージの通知があった。
「あっえっ、嘘、ほんとに!?」
「ほら言ったろ!うさぴょんは絶対真っ先に祝いに来るって!」
一二三が得意げに笑う横で、独歩は今にも泣き出しそうな潤んだ瞳で銃兎とのやり取りの画面を見つめていた。
「観音坂さんお誕生日おめでとうございます今年も素敵な時間を一緒に過ごせたらと思います仕事が立て込んでいて簡潔な文章ですみません、ちゃんとしたお祝いはまた後ほどさせて頂きますだって!」
独歩の読み上げた文章と、オオカミにケーキを送るウサギのスタンプ。届いたものは少ないが、独歩には飛び切りの誕生日プレゼントになったことは間違いないだろう。
待ち侘びていた独歩のことを考えていたら、目頭に熱が募った。
なんでお前が先に泣いてんだよ一二三。」
「っ、分かんね。何か俺っちも嬉しくなっちゃって。」
両目にじんわり滲む涙を拭う。
「良かったな独歩、最高の誕生日じゃん!おめでと!!」
ようやく言えたお祝いの言葉を伝えて、ハイタッチを交わした。
独歩の表情は主役に相応しい曇りない笑顔をしている。これまで祝ってきた中で、一番と言っても過言ではないほどに晴れやかな表情だった。
プルルル、と独歩の携帯が鳴る。誰からの着信かは、独歩の嬉しそうな顔を見れば明らかだった。
「ほーら、彼氏サマから電話来てんぞ〜バースデーボーイ!」
「なっ、茶化すな!それにもう俺はボーイって歳じゃ
からかいをあしらって、独歩は応答ボタンを押した。
その声色は、いつもより格段にも朗らかなものだった。
「もしもし、入間さんこんばんは!」


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