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コーベ・ショコラ プロローグSS

全体公開 プロフィール・プロローグ 2460文字
2022-06-11 22:15:56
Posted by @DSSmafia

いらっしゃいませ!初めてのお客さんですね!!
スパ・ムーチョ!

ようこそ喫茶店「スパ・ムーチョ」に!

ここは店名の通りお客様にムーチョムーチョ(もっともっと)安らいで貰えるスパであるように願ってるんですよ!
・・・え?それはおかしい?スパは健康とかそういう意味で休息とはちがう?
そもそもスパはイタリア語でムーチョはスペイン語だって?


ま、まあいいじゃないですか細かいことは!
ほら、お客さん!!そんな入口に立ってないで、冷やかしじゃなったらどうぞ中に。
狭いですけど。


さあさあ、この当店で一番日当たりのよい席に。
窓がないからどこも同じ?
いやいや、暖かさが違うでしょ?


注文はシュリンプとケールのサンドイッチとブレンドコーヒーでよろしいですか?
え、好きでよく食べるんですか。
なんか気が合いますね!私の得意料理なんですよ!これだけは在庫を切らしません!


私の方を見てどうしたんですか?
見つめられても早く出てくることはないですよ?
私一人ですからねー。


はいおまちどう!!


お粗末様でした!御代はちゅうちゅうたこかいな・・・ハイ、確かに!
こちらおつりでー・・・へ?ショコラ?


どなたですか?
え、私の名前?


・・・あーあーあー。
分かってます、分かってます、大丈夫です、大丈夫ですよ。


そ、それよりなんで私の名前を知ってるんですかお客さん?
あ、えーと・・・ドコカデオアイシタコトガアリマシタッケ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・そう、やっぱり無理だったの。」
「いいわ、下がりなさい。」

電話を切り、キィと音を鳴らして椅子にもたれかかる。

彼女の名前は「アルフォート・ルマンド」
NO.3マフィア「ホワイトロリータ」のボスの孫娘であり、
血風とどろくこの「ガトー・アイランド」でも一際その名をとどろかせている女傑である。
そんな彼女は今、行方をくらましこの島の影で動いている。

『魔石エリーゼ』

あらゆる災厄を回避すると言われる石であり「ホワイトロリータ」のボスが継承する遺産でもある。
確かに、あの時までは手元にあった。

まだ不干渉地帯という概念がこの島にあったころ。
そんな場所で珍妙な名前の喫茶店でくつろいでいた時。
わきまえない馬鹿が突撃して銃撃戦になった時。


あの時までは手元にあったのだ。


馬鹿とのケリを付けた後、石が消えた。
あの店そのものがあの場から消失していた。

見つけた時は、あの店は『ああ』なり果てていた。

何かがあったのは間違いない。だが。
入店して会話しても会話が成り立たない。
店を破壊しても破壊されない。
悪意を持って工作しても悪意が悪意として成立しない。


何度も『入店』を繰り返すうちに、壊れていく部下たちが現れ出した。
なんどもなんどもなんどもなんども会話して交渉して脅して殺して拷問して犯して壊して繰り返して――――
それでもなお、平然と屹立するあの『日常』に耐えられない。

スコップでただ穴を掘りただ穴を埋める。それが拷問として成立するように。
人は無駄な行為をし続けることに耐えられない。己の行いを刺激のない『日常』に吸い込んでいくあの店に耐えられない。
やがて病んで田舎に帰る部下まで出始めた。流石にこれ以上の損害は看過できない。

アルフォート・ルマンドは考える。

人は無駄な行為をし続けることに耐えられない。己の行いを刺激のない『日常』に吸い込んでいくあの店に耐えられない。
だがそれは平穏な日常を経験し思い出にしているただの人間だからではないか?

アルフォート・ルマンドは考える。


「敵組織の大将首を一番多く並べた者に、祖父の隠し財産と『魔石エリーゼ』を譲りましょう」


暴力と混沌の坩堝となった「ガトー・アイランド」
島の抗争を加速させる。欲で動く魔人どもの欲望をさらに加速させる。
その中でもとびっきりのワル、よすがとする『日常』などないような人でなしならあの店に対抗できるのではないのか?

人でなしの剪定中にあの店が魔人の抗争に巻き込まれて潰れてもよし。
剪定された誰かが『魔石エリーゼ』を店から奪うときにその漁夫の利を狙うもよし。

アルフォート・ルマンドは考える。

・・・これ以上の消耗は避けたいと、息をひそめ、島の影で考えている。
その機会を待つために、姿を隠し、策をめぐらす。

「おじいさま・・・あの石は、なんなのですか?」
「私たちは、何を受け継いできていたのですか?」

その時は、近い。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


いらっしゃいませ!初めてのお客さんですね!!
スパ・ムーチョ!

ようこそ喫茶店「スパ・ムーチョ」に!


人は無駄な行為をし続けることに耐えられない。己の行いを刺激のない『日常』に吸い込んでいくあの店に耐えられない。
だがそれは平穏な日常を経験し思い出にしているただの人間だからではないか?
ならば、そんな日常に耐えられるのは。耐えられるように成り果て続けている者は。

よすがとする『日常』などないようなとびっきりの『人でなし』ではないのだろうか?


いらっしゃいませ!初めてのお客さんですね!!
スパ・ムーチョ!

ようこそ喫茶店「スパ・ムーチョ」に!


・・・これ以上の消耗は避けたいと、息をひそめ、島の影で考えている。
その機会を待つために、姿を隠し、策をめぐらす。


いらっしゃいませ!初めてのお客さんですね!!
スパ・ムーチョ!

ようこそ喫茶店「スパ・ムーチョ」に!


とびっきりの『人でなし』が、いずれこの島で産声をあげる。


いらっしゃいませ!初めてのお客さんですね!!
スパ・ムーチョ!

ようこそ喫茶店「スパ・ムーチョ」に!


その時は、近い。


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