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ココアノ・マーチ プロローグSS

全体公開 プロフィール・プロローグ 4453文字
2022-06-11 22:30:43
Posted by @DSSmafia

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ダンゲロスマフィア・プロローグ
  ”WHO?”

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「ロケッティア」という映画を知っているか?

なんでそんな話から始めるかって?

そんなことはどうでもいい。

とりあえずは映画の話だ。

『ロケッティア』(The Rocketeer)は、今から30年前、1991年に作られた
謎のロケットエンジンを手に入れた主人公クリフが、ヒーローとして活躍するアクション冒険活劇だ。
ド迫力有りのスタントあり、売れない新人女優とのロマンスあり、大立ち回りありだが、
なんといってもポール・ソルヴィノ演じるギャングのボス「エディー・ヴァレンタイン」の演技が最高だ。
主人公と対立しながら、最後はナチの野郎と手を組むのだけは勘弁なと主人公と共闘する。
その名作がリメイクされ、本年「シン・ロケッティア」として蘇った。そして明日から中央の映画館『カウントパーク』で封切りだ。
だから見とけ。後悔はしないはずだ。

ん、同時公開の「ギャングオブアメリカ」はどうかって?
―――ああ、あれは駄作だから特に見なくていい。やめておけ。ハズレを引く


◆不文律(アンタッチャブル)

ギャングに限らず非合法活動が長く続いた閉鎖的な地域においては、
多くの明文化されない約束事【不文律】が存在する。
それは不用意な共倒れを防ぐためであったり、民衆からの反感を集めすぎたりしないためであったり、
あるいは単なる思考停止の無意味な慣習であったりするわけだが
ガトー・アイランドでも同じ様に幾つかの『不文律』がギャング間で存在するいや、存在した。

その一つは、歓楽街の幾つかの指定施設内での銃器などの武装持ち込み、魔人能力の使用禁止。
酒場や映画館など複数の勢力が”混ざる”場所でこれをやると、文字通り組織ごと『出禁』を喰らう。

この島では娯楽が少ない。殴り合い、殺し合い多いに結構、ただしその少ない楽しみの間を奪うまねはタダでは済まされない、外でやってくれという訳だ。
最終的に一番困るのは各種損害賠償の請求書を回されることになる組織の上層連中であったため、この慣習は長く続いていた。別途の使い道にも使えたからだ。

95分の上演時間を終え、映画館『カウントパーク』の専用出口から意気揚々とした気分で、ぞろぞろと出てくるギャングたち。
いい映画の後は酒場で一杯やるに限るとばかり、通いの店へと足を向ける。
入れ替わりに入るわずかな観客のことなど気にしない。入る側、歯の抜けた席に座っていく連中も同じだ。
VIP用の個室の観覧席に入った大物二人のことも誰も気にしなかった。

彼らはとある組織の幹部と小規模組織のトップであり、最近起こった出来事の話し合いのため秘密裏に逢うことになった、
連れ立った部下はそれぞれ5名。
議題は上映中の「ギャングオブアメリカ」と同じだった。
それは最近潰された島内のNO3組織が残した『莫大な遺産の行方』に関してだ。
ロリータの孫娘からバンブとマッシュに送られたビデオの件は二人も承知している。
ただ踊らされる気などさらさらなかった。とっつかまえて、隠し場所を吐かせればそれでことは済む話だ。
彼らは穏健派といわれる部類であったが、それでも拷問その他に躊躇するような人種ではない。とある筋から寄せられた情報によれば彼女は実は

GYOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

二人の密談は突然のケモノの唸り声に中断された。
二人の視線は同じものを見やる。それは手首を口に加え、部下の上半身を片手に携えた大型の灰色クマの姿だった。
スクリーン上の出来事ではない。ギャング映画にクマなどでない。突如、上映中の室内に入り込んだ巨大なケモノが部下たちを引きちぎりながら、こちらへと向かってきたのだ。

それは島、土着のグリズリー”ぐりすりーくん”だった。
ただ本能のままに人間を食らう害獣。護衛の半数は既に食い散らかされていた。
この突然の乱入者により、室内は騒然となる。こいつに対する対処法なら島に生きる人間なら誰だってしっている。
コイツの間合い(約30m)に入らないこと。間合いに入っていたら? そんな疑問を呈する間抜けはどの道、長生きできない。一目散に逃げ、追ってこないことを祈るだけだ。出口へと殺到する観客たち。

混乱の場内をよそに惨劇は続く。
なにより悲惨だったのは上司を見捨てることのできない”そこそこの腕”と”結構な忠誠心”をもつ護衛達であった。
『話し合い』を前提で映画館を訪れた裏組織のトップと幹部は互いを刺激しないため丁度バランスが釣り合う程度の”戦力”しか手持ちに用意してこなかった。
選考基準として、なにより口の堅い連中を選んだ。逆に言えば襲撃を受けるという可能性を無意識に軽視していた。

――それは只の思考停止だ。
ケモノは手にした獲物を一かじり咀嚼すると残りを不要とばかり投げ捨てた。既に筋力は6倍に達している。
クランキー・クッキー、ブラックサンダーの両名は懐から拳銃を取り出すと全弾目の前の化け物に向って撃ち放った。

――そう「不文律」など既に何の意味もない。思考停止だと知りながら誰もが目を背けていた。それだけだ。

ケモノは彼らからの「贈り物」を彼らの部下の体を使って受け止めると本日の「メインデッシュ」へと取り掛かった。

ーーーーーーーーーーー

全ては腹の中に納まった。いつもの島にある出来事。けれど襲撃時の不自然もまた確かであった。
考えうるのは操作系の魔人能力、何者かが熊を操り、襲わせたのだと。誰がwho???

こんな【掟破り】をするようなやつは【マッシュ】の連中しかいねぇ。兄貴分を殺された、バンブーのメンバーがいきり立つ。
ある者は考える。遺産を求め、首級を上げようと【本気になった奴】がいる。対策を練らなければ。
もはやカタギの連中は逃げ出している。

同じなのだ。死は平等にそこにある。
けれど、いつからか、彼らは誤解していた。自分たちだけは特別だと。
残っている奴はもはや、イカレ野郎か、訳ありばかり。


もはや始まりが『誰』whoの手によるものであったかなど―――『誰』who——も気に留めないでいた。

ただ一つ、誰の目にも明らかなことが、そう一つだけ、
それは今日の出来事が、何かの開幕の『のろし』となっただろうということだけだった。


◆スケコマッシュ

――ちょっと前に騒がせた灰色熊、結局、射殺されたらしいよ。
今日、店でそんな話を聞いたと仕事帰りのアイツが目の前でそう口を開いた。

あの映画館の騒動からの数日間、オレは馴染みオンナの部屋へとしけ込んでいた。
こいつは安酒場を営んでいる女で、5年ほど前にこの地に流れてきて、そのまま島に居ついてしまった変わり者だ。
懇ろになってからは色々べらべら身の上を話してきたが、どうでもいい話だったのでここでは割愛する。
まあ、こんな状況でも島に残っているくらいだから、出来はあまり良くない。馬鹿な女だ。
ただ昔、女優を目指したといってたせいか見てくれは悪くないし、組織の上の方にも入れ込んでるやつが何人かいるので、こうやって『面白い話』を運んできてくれる。
重要なのは利用価値、お互い利益のあるWINWIN関係でいるってことだ。

オレは肩(?)を竦めると目の前に置かれたくたくたになったパスタを啜り、
彼女お得意の燻製にしんとエッグとトマトを和えたジャパン料理をつつく。
絶対ジャパン料理じゃないと思うのだが彼女は母親から教わった自慢のレシピだとして頑として譲らない。
料理ならオレもできる。前に準備してやったら、文句を言われた。
くだらないこだわりだ。自分でやりたいらしい。ただ、妙に上機嫌につくるものだから伝えそびれている。

オンナは咳をした。わざとじゃない。けれどそれはいつもの合図だ。
やがて俺たちはベットへとなだれ込む。面倒くさい関係になったものだとも思う。
いつもの睦時の鳴く声が部屋に響く。
善良な奴の相手は苦手だ。オレの気持ちを縛って絡みついてくる。
ぶち込むならやはり悪党がいい、何より気が楽だ。


◆恩讐の果てに
島のある一室。彼女の元に一通のメールが届いた。

『クランキー・クッキー』
『ブラックサンダー』

それには先日、映画館で殺害された人物の顔写真に大きく×の字が書かれた画像が添付されていた。
著名には”Cacao's March”の文字。

彼女は画像を印刷すると祖父に長年使えてきた執事に見せつけるようにひらひらと振った。
その著名者の名と討たれたギャングの顔写真を見て彼はそっとため息をつく。
ホワイトロリータの『掃除屋』ココアノ・マーチ長く組織に使えていたはずの執事にとっても
多くの未知数が残る相手であった。

「いかがいたしましょうか?どうやら不相当な望みを抱えているようですが」
そんな執事の声に主は、薄く笑って答えた。
「放っておきなさい。こちらの思惑に沿って動いている以上、手出しは不要でしょう。」

執事は思う。確かに”お嬢様”の望み通りの展開になってきている。
クランキー・クッキーとブラックサンダーの死亡も。
その殺害犯と所属が、不明な状況も。
不安定で不穏な空気が、次なる抗争を引き起こしていくだろうことも。
判る。そしてあの掃除屋は組織間の対立を加速させていくつもりなのだろう。
彼女はそれを是とした。

彼の使えるお嬢様は、予想以上に”したたか”で”用心深く”そして”破滅的”であった。
ギャングたちの誰もが今も誤解している。
彼らはあの惨劇の後、首尾よく島から脱出したと思い込んでいる。
「アルフォート・ルマンド」はもう外に逃げ出した後だと。
彼らは知らない。彼女は島外への脱出ルートをお膳立てしておいた自分の手を振り切ると、
死地へと舞い戻り、血濡れの宴を続けるため、かの地の下へと潜ったのだ。

彼の使えるお嬢様は、予想以上に”したたか”で”用心深く”そして”破滅的”であった。
だが、牙を持たぬケモノなど如何に立ち振る舞おうが、食われるだけで終わる。
覚悟だけで喉笛を喰いちぎることはできない。
更なる牙を隠し持っているのかそれとも。そして自分はどう立ち振舞うのが正しいのか
これからの多難さを思い、彼はもう一度そっと、ため息をついた。


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