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フロウ・H・オフロスキ プロローグSS

全体公開 プロフィール・プロローグ 1751文字
2022-06-11 22:57:31
Posted by @DSSmafia

プロローグ
その場所は紫煙に満ちていた。
薄暗い店内には虚ろな目をした人々が空虚な笑みを浮かべている。
『幸福還り』。
そう呼ばれる症状は、この島でのみ産出される特殊な粉末を吸引する事で得られる多幸感によるものだった。
「で?何か御用ですか?」
店内最奥、一段と豪奢な椅子に座った男はそう言った。
甘いマスク、慇懃な口調。
その男は“王子”と呼ばれている。
ふわふわとした襟巻のついた赤い外套。
ハート柄のスーツ。
そして頭上に黄金の冠。
異様なセンスではああるが。
その男の周囲は輝いているようにすら見える。
バンブー・チルドレン幹部。“幸福王子”タートル・ダ・ベイカー。
その男は島内のドラッグを一手に担う怪物だった。

「何、なんてことはないさ」
美しい銀髪をかき上げて女は事もなげに呟く。
店の入り口からこの場所まで、ただ一人で歩いてきた。
誰も、彼女を止める事は出来なかったのだ。
自動小銃で武装したマフィアも。
武器で武装した巨漢も。
何の意味も持たなかった。
武器は無効化され。
強靭な耐久を持つ防弾チョッキや装甲スーツも消え失せた。
そして彼らは店内の客と同様にスッキリとした笑顔を浮かべている。
「整ったな」
女は露出亜人である。
数日前に部下を率いて入島し武器売買の拠点であるバレットマーケットを壊滅させたという一報は“幸福王子”の元にも届いていた。
「この場所をもらい受けに来た」
その名をフロウ・ハイル・オフロスキという。

「舐めてんのかテメエ」
瞬時に“幸福王子”の脳内にハッピーが充填される。
その能力『幸福還り(ハッピーターン)』は自身の持つ麻薬成分の効用を自在に操るものだった。
(痛覚カット!反射増大!筋力増強!脳内思考高速化!)
(単純な強化系と違って、様々なドラッグの良いトコ取りができるのが俺の能力)
(そういう効能があるドラッグがあれば能力拡張に限界がねえ)
(問答無用で潰す!)
こと肉体強化において彼の右に出る魔人は滅多にいない。
それほどのパワーとスピード。
麻薬さえ用意できればその力は軍の一個中隊にも引けは取らない。
その圧倒的な力と麻薬マーケットを支配する事で島内で恐れられている。
振り上げられた拳は華奢な女性の体を叩き折るには十分だった。

「御風呂道(オフロード)」

女の服が消え去る。
幸福王子の悪趣味な服も消え去った。
「おあ?」
と同時に男の中から力が抜けていく。
「浴場内でのドラッグの使用を禁止する」
治安の悪い繁華街のサウナや銭湯に張り出されるような張り紙が店内に張り出された。
ヒュン。
呆けた顔をした“幸福王子”の股間を美しい足が蹴り上げる。
「!!!!」
声も出せずに悶絶する“幸福王子”を見下して全裸の美女は冷徹に呟いた。
「ドラッグよりもサウナをキメろ」
その言葉と同時に王子の周囲の温度と湿度が一気に上昇する。
「が、があ!熱ッ!な?」
状況が理解できないまま男は股間を抑えたまま転がる。
サウナの温度は90℃にも達すると言われている。
そして一気に冷却、水風呂が男を襲う。
水風呂の温度は10℃前後、その温度差は実に80℃そして蒸気。
「ガハッ?冷!熱い!」
高温と冷却。
それを交互に繰り返される。
「ば、ばぁは~?」
男はもはや思考もままならない。
ただ、頭がすっきりしていくのを感じる。
「こ、これは
目の前の女を見る。
美しい裸体だ。
ドラッグで作り上げた自分とは違う。
「どうだ?」
と女神が囁く。
「気持ちいいです」
とかつて”幸福王子“と呼ばれた男は答えた。
(何もかも。つくりものだった。自分もあのように自然になれたら)

「そうか、お前も整ったな」
と女は微笑んだ。

数年後。
「姐さん!こりゃあ本格的な抗争になりそうですぜ!」
店の中に走り込んできた“ハッピー”が慌ただしく報告する。
男は全裸であった。
そして報告を受ける女も全裸であった。
女は比較的順法精神のある露出亜人なので、外で服を脱ぐことはない。
それは彼女の部下たちも同様だった。
だが。
「これはチャンスだな」
風呂の中では別だ。
「この島を風呂に沈めよう」
フロウ・ハイル・オフロスキ。
彼女は露出狂である。


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