口説く王が見たくなったので。
@hirop573
『そなたがその様に頬を染める刹那が、我は一等好みであってな』
頭に響く甘い声。普段そんな言葉使わないくせにと悪態を吐こうとすれば口を塞がれ、挙句抱き寄せてこちらを見下ろす。数多の目がギョロギョロと動き不気味に見えるが、しかしその視線の感情は好奇と慈愛。
「冗談ならやめて…ハスター。僕は好きじゃない」
突っぱねるつもりで抵抗の意思を示すものの、ハスターは堪えた様子はない。そもそもこの存在に傷つくという概念もないので今更ではあるが、ノートンは毎度無意識にやってしまう。そしてそれを面白がるハスターという構図が出来上がっているのだ。
『そなたのその行動は照れ隠し、というのであったか』
「言わなくていい。言わなくていいから!」
腰に添えられた手はそのままに、撫でながらハスターは言葉の追撃をやめない。聞きたくもない甘い言葉が響き続けて、ノートンは思わず腰がくだけそうになる。
この現場が自分の部屋で心底良かったと思う。
揶揄われる事はもちろん、奇異の視線を浴びるのが耐えられない。以前の二の舞にならないようにノートンはこの場から動けないのもあり、要は耐えるしかないのだ。だがハスターの普段とは違った行動により、この場から逃げ出したい気持ちが勝ってきてしまう。耐えろ、逃げろと天秤が激しく揺らぐ。
そんな混乱するノートンを他所に、ハスターは流れるように言葉を零していく。
『愛いぞ。無感情より余程良い。幾人かはそなたを愛想が無いというが、我からすれば充分人間そのものだがな。…こちらを見よ、ノートン』
「……やだ……嫌だぁ…」
普段のハスターであれば触手なり素手でなり強引に向かせるのであろうが、今のハスターはノートンを大事な玩具のように、壊さないようにと磨き上げ愛でるだけである。それがノートンにとっては慣れない接し方で肌が粟立って仕方ない。表情を悟られまいと必死に俯いていたが、しかし名を呼ばれてしまえば従わないわけにはいかなかった。
……そういう体にされてしまったのだから。