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Spoonful Happiness〜Magia Notes Part.26〜

全体公開 ツイステ二次創作 1 4778文字
2022-06-26 20:58:31

小さな幸せは私達の周りの至るところに存在している。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第26話。
※創作女監督生(名前あり)の正体について言及されてます
※捏造設定あり

Posted by @natsu_luv

小鳥たちのさえずりが聴こえてくる。
窓から射し込む太陽の光を身体中に浴びながら、私は目を覚ました。
隣でシルバー先輩が幼子のような寝顔を浮かべながら眠っている。
昨晩の戯れの温もりがまだ肌に残っている。
その心地良さを感じながら、私はまだ夢の世界にいるシルバー先輩の唇にキスをした。
徐々にオーロラ色の瞳が開いていく。
微睡の騎士の目覚めの時だ。

「ニコル、おはよう。俺を起こしてくれたのか?」
「おはようございます。シルバー先輩」
「そういえば、今日は麓の街に行く約束をしていたな。すぐに支度をしよう」
「そうですね」

私達はベッドから出て身支度を整えた。
部屋を出て談話室へ向かう途中で、まだ眠たそうなリリア先輩とグリムに出逢った。
談話室に着くと、美味しそうな匂いが漂ってきた。
キッチンでセベクくんが朝食の用意をしている。
ツノ太郎さんはその様子を見ながら、ダイニングのテーブルで私達を待っていた。
テーブルの上にずらりと朝食のお皿が並んだ。
さっそく、私達は席に着いて朝の食卓を囲んだ。

「お主たち、今日は麓の街でデートと言っておったな」
「はい、ニコルと一緒にカリムに教えてもらったレストランへ行きます」
「良いことじゃ。楽しんでくるのじゃぞ」
「ありがとうございます。楽しんできます!」

ディアソムニア寮の朝食風景は、普段の寮の雰囲気とは一味違った爽やかな光景だ。
温かいブレックファーストブレンドのミルクティーを飲みながら、私は今日のデートで行くレストランのことをあれこれ想像していた。
そろそろ朝食の時間も終わろうとしている。
食卓の片付けを手伝った後、私達はディアソムニア寮の玄関の扉を開けた。
鏡舎に移動し、ナイトレイブンカレッジの正門まで歩いていく。
途中の道のりでカリム先輩とジャミル先輩にばったり出会った。
行き先を聞かれたシルバー先輩が、今日のデートのことを二人に話していた。

「おっ、あのレストランに行くんだな!」
「せっかくだから、ニコルも連れて行きたいと思ったんだ」
「そうか。二人でゆっくり過ごすといい」
「はい、行ってきます!」

カリム先輩とジャミル先輩に送り出され、私達は正門前のバス乗り場にたどり着いた。
定刻どおりにバスが到着した。
そのままバスに乗り込み、麓の街まで直行だ。
今日のデートではどんな思い出を作れるのだろう。
居眠りをするシルバー先輩の隣で私は心を弾ませていた。
バスに揺られてしばらくすると、麓の街の景色が見えてきた。
木々の緑が初夏の麓の街を鮮やかに彩っている。

バスが麓の街に到着した後、シルバー先輩が目的地のレストランへ私を連れ出した。
以前、シルバー先輩はカリム先輩をはじめとした同じクラスの友人たちとこのレストランで食事をしたらしい。
その時に食べたきのこのリゾットの美味しさに感動し、私にも味わってほしいとシルバー先輩は思ったそうだ。
明るい赤と緑を基調とした外観の建物が視界に入ってきた。
どうやら、このお店が今回の目的地らしい。

「美味しそうな香りがしますね」
「ニコル、楽しみにしておいてくれ。きっと、お前も気に入ってくれるだろう」
「ご予約の二名様ですね。お待ちしておりました。どうぞ」
「ありがとう」

店員さんに案内され、席に着いた私達はグランドメニューの表紙を捲った。
メニューの一ページ目にお勧めのコースメニューが載っていた。
ラインナップはプロシュートのサラダ、マルゲリータピザ、鯛のアクアパッツァにポルチーニ茸のリゾット。
デザートには白桃のパンナコッタとコーヒーか紅茶が付いてくるという。
手頃な値段で人気の料理をひと通り食べられることが嬉しいコースメニューだ。
さっそく店員さんに注文し、料理が運ばれてくるのを待った。

「お待たせしました。プロシュートのサラダです」
「うわぁ、美味しそう!」

瑞々しいレタスの上に大きなプロシュートがずらりと並べられ、パプリカやプチトマトがサラダに彩りを添えている。
見た目でも楽しむことができる、華やかな出立ちのサラダに私とシルバー先輩は目を輝かせた。
プロシュートに野菜を包んで食べると、シャキシャキとした野菜の食感とプロシュートの旨味と塩味を一度に楽しめて美味しい。
焼きたてのマルゲリータピザが運ばれてきた。
冷めてしまう前に小皿に取り分け、ひと口食べてみた。

「美味しいですね。チーズが良い感じにとろけてます」
「気に入ってもらえて良かった」
「カリム先輩にも感謝しないといけませんね」
「ああ、そうだな」

カフェに入って食事をすることは何度かあったけれど、こういったレストランでゆったりとランチを堪能するのは初めてだ。
美味しい料理は二人で過ごす時間にさらなる心地良さをもたらす。
パチパチと水が弾ける音が聞こえてきた。
いよいよ次はメインディッシュのお出ましだ。



弾ける水音とオリーブオイルの香りが食欲をそそる。
私達の目の前に鯛のアクアパッツァが運ばれてきた。
少し大きめの鯛と彩り豊かな野菜が鮮やかで、ひと目見ただけで美味しそうに思える。
さっそく、シルバー先輩が慣れたナイフ捌きで鯛を切り分けてくれた。
シルバー先輩は食べやすい大きさになった鯛と野菜を取り皿に入れ、私に手渡してくれた。

「さぁ、冷めないうちに食べてくれ」
「ありがとうございます。いただきます!」

淡白でありながらも旨味を感じられる鯛、オリーブオイルの風味、火が通って甘味が強くなった野菜。
ひとつのお皿に集まったことで創られる美味しさに、口の中が幸福感でいっぱいになる。
ボリュームのある料理だったけれど、私達はあっという間にお皿を空にした。
次はいよいよシルバー先輩の大好物が運ばれてくる。
シルバー先輩はいつもの冷静沈着な装いではあるけれど、どこか嬉しそうにしているように見えた。

「お待たせいたしました。ポルチーニ茸のリゾットです」
「うわぁ、美味しそう!」
「またこれが食べられるとは嬉しいな……

眉尻を下げた微笑みを浮かべ、シルバー先輩が呟いた。
芳醇なきのことチーズの香りが漂ってくる。
二人揃ってスプーンでリゾットを掬ってみた。
ひと口食べれば、香り高いきのこと蕩けるチーズと固めのお米が見事に混ざり合う。
シルバー先輩が微笑みを浮かべながら、大好きなきのこのリゾットを頬張っている。
スプーン一杯の幸せをしっかりと味わっているように思えた。

「美味しいです。これがシルバー先輩の好きな味なんですね」
「喜んでもらえてよかった」

自分の好きなものを好きな人と共有できることは嬉しいことだ、リゾットを囲みながらシルバー先輩がそうつぶやいた。
やがて、リゾットのお皿も綺麗に空っぽになった。
食後のデザートとコーヒーと紅茶が運ばれてくるまで、私とシルバー先輩はたわいのない話を弾ませていた。

「最近、妙な夢を見るんだ。夢の中でお前にそっくりな男を見かけるんだ」
「私にそっくりな男の人ですか?」
「ああ、そうだ。何度か話しかけようとしたが、すぐに見失ってしまうんだ。ニコル、何か心当たりはないか?」

私を真っ直ぐに見据えながら、シルバー先輩が尋ねてきた。
徐々に元の人格であるニコル・イーリスの存在がこの捻れた世界に近付いてきているのだろうか。
そろそろ、シルバー先輩には自分の正体を話しておいた方が良さそうだ。
私は今までひた隠しにしていた事実をシルバー先輩に話した。

「彼は……ニコル・イーリスは私のオリジナルです」
「オリジナル? どういうことだ?」
「私はニコル・イーリスの分身体に過ぎません」

私が万象の魔導師であるニコル・イーリスの分身体であること、元々は魂だけの存在であったこと。
ニコル・イーリスに闇の魔法を託されていたこと、この世界に来てから実体を得たこと、元の世界に帰ることは魂だけの存在に戻るということ。
全てをシルバー先輩に話した。
私の話を聞いていたシルバー先輩は、ただ呆然とした様子だった。

「前に私には家族が居ないと言いましたよね。そういうことだったんです」
「知らなかった……。ますます、お前を元の世界に帰したくなくなってしまったな」
「シルバー先輩……!」

席から身を乗り出したシルバー先輩にぎゅっと抱きしめられた。
店員さんと他のお客さんたちの視線が私達の方に向いている。
そのことに気付いたのか、シルバー先輩は慌てて席に着いた。
ようやく、デザートの白桃のパンナコッタとコーヒーと紅茶が運ばれてきた。
私達は何事もなかったかのようにスイーツを堪能した。

「桃が瑞々しくて美味しいです」
「コーヒーともよく合うな」
「とても充実したコース料理でしたね」
「ああ、ニコルと一緒に食べられて良かった」

シルバー先輩はしみじみとした声色でそう言った。
好きなものを好きな人と共有したい、その相手に私を選んでくれたことが何より嬉しい。
紅茶を飲みながら、私も微笑みを返した。
全ての料理を堪能した私達は、お会計を済ませて店員さんにお礼を言ってからレストランを後にした。



レストランを出た後は雑貨屋などを見て回った。
だんだんと空の色が茜色に染まりつつある。
私達は停留所まで向かい、ナイトレイブンカレッジへ戻るためのバスに乗り込んだ。
バスに揺られながら、私はシルバー先輩とぎゅっと手を繋いでいた。
私の正体を知ってからも、シルバー先輩は今までと同じように接してくれている。

「そういえば、ナイトレイブンカレッジに黒い薔薇が侵蝕してきた事件があったな。あの時、俺を助けてくれたのも夢の中で会ったお前の元になった男だった」
「やっぱり、そうだったんですね」
「また今度会えた時にはゆっくり話したい。今ここにいるニコルを創り出した男と……すぅ……

話の途中でシルバー先輩は眠ってしまった。
きっと、イーリスもシルバー先輩とゆっくり話したいと思ってるはず。
私はそっと夢の世界へ旅立ったシルバー先輩の耳元で囁いた。
そろそろ、バスがナイトレイブンカレッジに到着する。
シルバー先輩を起こし、私達はバスを降りてナイトレイブンカレッジの停留所の地に足をつけた。
正門をくぐり、鏡舎までの道のりを歩いている途中で私達は再びカリム先輩とジャミル先輩とばったり会った。

「おっ、今は帰りか? デートは楽しかったか?」
「ああ、今日も楽しい一日を過ごすことができた」
「それは良かったぜ! そうだ、実はあのレストランにはこんな逸話があるんだ」
「どんなエピソードですか?」
「あのレストランで食事をしたカップルは、将来結婚するって言われてるんだぜ!」

カリム先輩が太陽のように眩しい笑顔で言った。
その発言に私は思わず顔を火照らせてしまった。
シルバー先輩もそんな逸話があることを知らなかったのか、戸惑いを隠せない様子でいる。
慌てふためく私達をジャミル先輩が落ち着くようにと宥めた。

「驚かせてしまってすまない。カリムがサプライズをしたいと言って聞かないから、俺もその逸話のことを言えずにいたんだ」
「そうだったんですね。でも、嬉しいサプライズになりました」
「そうか、安心したよ」

ジャミル先輩が安堵の笑みを浮かべた。
カリム先輩とジャミル先輩と別れ、私達は鏡舎までの道を歩き続けた。
手を繋いで一歩ずつ進んでいく。
繋いだ手の温もりにも、スプーン一杯の料理にも、小さな幸せは確かに存在している。
私達はあらゆる場所に転がっている小さな幸せを分け合って日々を過ごしていく。
今までもこれからもずっと。


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