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夢の中でも会いましょう

全体公開 第五 ハス探
2022-07-10 19:58:46

夢の中の廃墟群で彷徨うハス探。2ページ目以降は会話文。増えるかもしれない。

Posted by @hirop573



『目覚めたか』

目覚めた開口一番邪神の声。
いつもの荘園の部屋ではない。起き上がれば硬い大理石の上に寝転んでいた事が分かる。
周りを見渡せば見知らぬ景色ばかり。自然で溢れ、豪華な居城であっただろう場所も廃れ崩れており、長年人がいなかったことも伺える。要は自分とこの邪神以外に頼る人物はいないのだ。

そして、これは夢なのだとも。

しっかりと地に足をつけている感覚はある。ただしかし頭ではなんとなく、これは夢だと確信を持っている。

「なんでこんな夢見てるんだろ。夢の中で目が覚めるとか変な感じ」
『さて。我とて万能ではない故な。そうさな散策してみよ。予想は出来ているが確証がない事象がある』

いつもはその提案に難色を示すものの、ここは夢の中だ。たまには乗ってもいいだろう。
夢の中だから、と自分に言い聞かせて。






「ここ、昼がないんだね。朝があってすぐ夜になる。こんなのじゃ仕事も出来やしないな」
『夢の中までその様な話をするか、そなたは。勤勉なのか貪欲なのか』
「五月蠅い」
『今は捨て置け。醒めぬ夢ならば足を動かしてみよ。引き金があるやもしれぬぞ』
分かってるよ」






『ふむ。これは』
「うわ。あなたの書庫みたいだ。……ねぇ、もしかして」
『いや、構わぬ』
「いいの?」
『類似したものが存在するということは即ち我と同類かつ敵意がないもの。これは事故。故に早急に出る必要はない』
「そう」
『触れて良いぞ。我の書庫に無い物もあるやもな』
………ん。でも、いいや」
『ほう。なにゆえか』
「なんとなく」
『そうか』
(あなた以外から得る知識って頭に残らないだろうな、なんて言えない)







「寒い」
『夢幻でも感じるか、難儀よの』
「わ、すごい見てよ。夜になったら鼻水凍っちゃった。あはは」
……危機感の欠如は些か問題であるな』
「だってあなたがいるだろ。僕一人だったらこの辺りの森一帯燃やしそうだし」
…………
「?僕何か変な事言った?」
『いや』







「あなたは夢の事覚えてるんだっけ。いいな」
『人によっては悪夢もあるのだぞ。それでもか?』
「それでもさ。僕は何もかも忘れたくないんだ」
『己が身を滅ぼすぞ』
「そんなの今更さ。中途半端に覚えて忘れてそれなら全て忘れられるか覚えるか、どちらかがいい」
『全くやはりそなたと過ごすと退屈せぬな。そのような思考を持つ人間はそうそうおらぬ』
「それはどうも」







「ねぇ、僕の服って変えられる?」
『可能だ』
「星の服、お願いしたいな」
『ほう。そなたは好かんと思っておったが』
「夢の中ぐらいたまには」
『よかろう。そら』
「ありがとう。やっぱり慣れないなぁ。髪も白いんだろ、今」
『左様。普段のそなたとは真逆よな』
「それ馬鹿にしてる?」
『フ好きに捉えよ』






「僕の夢にしては贅沢だ。四季の星座が全部あるじゃないか。狡い」
『己に嫉妬してどうする』
「人間には一年が長いんだよ。天気が悪いとまた来年になるし、数年に一度しか見られない天体もあるんだから。全部あるじゃないかここ。狡いって言わないでなんて言うんだよ」
『よく囀る。現に戻り覚えていたのなら見せてやろう』
「本当?あ、流れ星。覚えてますように」
『現金な奴よ』






「ここ、昔は豪華なお城だったんだろうな。売ったらいくらになるだろうか」
………。おそらく人間に価値は分からぬものだ。我の知る物質に近い物を感じる』
「そうなの?言われればあなたの居館のものと似てるかな」
『よく見ておるではないか』
「嫌でも見るだろ。ほとんど居るんだし」
『そうかそうか』
「なんでニヤニヤしてるの






「僕が今ここから落ちたら、あなたは助けてくれる?」
『無駄な事を。好奇心か?』
「うん。あの時以上に痛いのかな」
『フフ。そうとなればさせまいよ』
「どうして」
『そなたには生き永らえさせた方が地獄とみた』
「!」
『図星か。さぁ、落ちてみよ。如何様に堕ちようが掬ってやろう』
……やっぱり嫌いだ、あんた。僕の嫌な事ばかりしてくる」






「あなたもどこか好きな所へ行ってもいいんだよ。どうせ呼んだら戻ってくるんだろ」
…………
「何さ。出来ないの?」
『ここはそなたの夢の中と我は言ったな』
「うん」
『そなたの思うがままだと』
うん?」
『そなたの望むまま、だ』
…………嘘だろ」
『離れる事は可能だがよもやここまで導いて分からぬそなたではあるまい?ノートンよ』
「信じられない……僕が望んでるからあなたがずっといるってことなの?」
『クハハ。左様。心の臓で否定しても根底は覆す事が出来ぬ。それが真実だ。そなたが認めようと認めまいと、その欲は在るのだ』
………………
『恥じる事は無い。現に戻れば忘れてるやもしれぬぞ』
「覚えていたら、どうやってあなたと接したらいいか分からない。今だってそうだ。僕、こんなの
『我儘、か』
「!」
『幾年と人間を見てきたが、そなたはほど欲を潜める者はおらぬ』
……
『今はそなたの好きにせよ。我はその願いと共にある』

「ほんっとにあなたのせいで何も出来なくなっちゃうよ」



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