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あの日のお返しです

全体公開 第五 探探
2022-07-17 19:54:09

探探な雀モグ。
https://privatter.net/p/8409542 log1本目の後日談。おまけに+迷ロナ要素あり。

Posted by @hirop573






…………

その日は酷い雨だった。モグラは自室で書類に目を通していたものの、外出出来る気配のない豪雨で仕事にならないと走らせていたペンを置いて窓を見始める。すると目線の先、見知った姿を捉えてしまう。

(?雀舌?)

そういえば新聞記事の大きな見出しに中華街の事件が書かれていたな、と思い出す。おそらくはその事件の中心団体だったのだろう。何人か亡くなっていた気がする。
哀愁を漂わせたその姿はすぐに路地裏に消えたものの、より強まった雨の音に思い出して傘を持ち外に出ようとする。
が、しかしそこで思いとどまる。

(私が行って何になる)

余所者の自分が。彼に拒絶されてしまえばここに居る意味もなくなるのではないか。そう思い足が竦んだのだ。
しかし自分が同じ雨の中で死にかけた時、彼は助けてくれた。さながら救世主だったろう。ならば今度は自分の番なのではないか。彼の不安を少しでも軽減出来るのであればそれ以上喜ばしい事はない。それに。

(考えるよりも前に、あの子は来てくれたのだから)

だったら自分もそうしてみよう。
やらない後悔よりやる後悔だ。そう決心出来ればモグラの行動は早かった。

…………………

固く結ばれていたと思っていた家族の絆が崩壊した。
予想できていたことだ。あの男が元から怪しい事はわかっていたし、それを承知の上で義理の母は仲間として引き入れていたのだ。あの男に真意を問いただそうとしてももう不可能で。何せ己で身を絶ったのだから。死人に口なしである。
だからこれは必然。ただ先延ばしにしていただけの延命家族。
それでも。それでも家族でいられた内は楽しかったし、幸せを感じられたはずだ。だから余計に防げなかった自分に腹が立って仕方なかった。
酷く悲しかった、というのも大きい。
雨の中通りすがる街の人々から奇異の目を向けられるものの、雀舌にとってどうでもよかった。もう、どうでもよかった。
けれど。

「雀舌」

ああ。

…………モグラ」

彼の性格上、来るとは思っていなかった。雀舌が一方的に好意を寄せているのだと思っており、その勢いに折れたモグラが受け入れただけ、だと。
彼も雀舌ほどではないが濡れており、急いで来たのだと見て分かる。

………

かける言葉が見つからない、とでもいうようにモグラはこちらを見つめるだけ。それはそうだ。当事者の雀舌ですら自分の感情を制御出来ていないからだ。
いつもの淡々とした態度とは裏腹な振る舞いに動揺でもしているのだろうか。それはさぞかし幻滅した事だろう。雀舌自身も言葉が見つからず立ち尽くしているとモグラが動く気配がした。
その方向へ首を向けるや否や抱擁されたのだ。
まさかの、モグラからだ。
放り出された傘が宙を舞い、豪雨のためかモグラの服もみるみるうちにシミを作っていく。

「モグラ?」

モグラの表情は見えない。だが力強く、それでいて決して離すまいとする意思を感じる。
そして耳元で優しく声が紡がれる。子を諭すように、説くように。

「すみませんね。喋るだけしか能のない余所者の私が、肝心な所で何も言えないなんて。でも決して忘れないで。あの時貴方に助けられたから、私が今ここにいるんです。嫌々いるんじゃないんですよ」
…………

おずおずと雀舌が背中に手をまわす。それに応えるようにモグラが雀舌の背中を優しく叩いた。その反応に思わず目頭が熱くなる。普段なんて事ないのに。強くあれと言われて育ってきたのだ。弱みを見せるなんて、そんな。

「あの時家族だと言ってくれたのは嘘なのでしょうか。私嬉しかったんですよ。家族なんて夢みたいだと思っていましたから。あの方々とは雲泥の差かもしれませんが」
「そんな事、そんな事ない!」
「それは良かった。ね、忘れろとは言いません。ですが私がいる事は覚えておいてくれませんか。家族なのでしょう?」

そうだ。自分が言ったのだ。
家族なのだと。
覚えていてくれた。受け入れてくれた。その言葉が雀舌を奮い立たせてくれる。
降り続く雨の中でもしっかりと聞こえるモグラの声がとても心地よい。

「ありがと。態々こんな所までごめん」
「お気になさらず。あの時の貴方もこうでしたでしょう。……後悔するだけですから」
……うん」






………………

▼おまけ(+迷ロナ)



「モグラ、頼まれていた書類を持ってき、た……

ロナードは扉の取手を掴んだまま固まった。
雀舌は普段モグラの側にこそ控えているものの、それこそ付かず離れずのスタイルだったはずだ。
それがこんな、べったりと抱きついて離れる気配のない雀舌を見ようとは。

「あぁ、ありがとうございます。そこの机に置いてください。あとこの光景はどうか記憶から消し去っていただいて」
「こんにちはロナード」
「どうも。悪いがこれは記憶にこびり付いて無理だ」

ここ数日で何かがあったのだろうが、深入りすると録なことが無いのは分かっているのでこれ以上は触れないこととする。
ロナード自身、常に視線がべったりと纏わりついていて生きた心地がしていないからだ。
しかし最近なんとなく浴びる視線の方向が分かるようになり、慣れてきた自分に小さくため息をついた。
隣で未だに抱きついて離れない雀舌と目が死に始めているモグラを見ながら。





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