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※ネタバレ、すりぜろ刹夏の最後のシーン写経

全体公開 atnlとかtrpg 5755文字
2022-07-18 23:56:18

文字への書き出しです。
「刹夏」シナリオのネタバレ、「すりぜろ刹夏」セッションのネタバレしかありませんのでご注意ください。

Posted by @aricosyyim

https://www.youtube.com/watch?v=06rc0T0th_4&t=23450s

この辺りからの写経です。
細かいところが違っていたり、
すこしカットしている部分もあります……

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※お母さんの日記を読んだ後くらいからのものです。



夕耶「思い出した……
夕映「そう」
夕耶「思い出したよ……。あの日、母さんが、リビングで泣きながら独り言言ってたの、それを聞いて、この部屋に入ってきて、この日記を読んだこと。僕は知ってたんだ。いや、知らなかったけど、ここで知ったんだ」
夕映「うん」
夕耶「夕映が、僕の兄弟だって……でも、ここには死んだって書いてあるけど」

そう言って、夕耶は服をきゅっと掴む。

夕耶「夕映は、ここにいるよね」
夕映「ああ、僕はいま、ここにいるよ、夕耶」
夕耶「…………うん……っ」
夕映「だけど、こう書いてある以上、きっと僕は、うん……そうだね……
夕映「ここにいることは不自然なんだと思う」
夕耶「別に不自然でも良くないか?」
夕耶「僕が、夕映が、母さんがそれで幸せなら、不自然でも良くないか?」
夕映「うん、それでいいと僕は思う」
夕映「だけど、明日以降もそれが続く保証がない」
夕耶「だったら――……だったら、契約更新でもなんでもさせて、それを無限に延ばしてやる……
夕映「そうするためには、なぜ僕がここにいるのか、しっかりと原因を知る必要があるね」
夕耶「ああ。であれば、それを知って、そんな奴、同級生がおまじないって言ってた。あと、早朝にすれ違ったあのフードの奴。あの時はなんも思わなかったけど、もし時間制限のことを言ってるのだとしたら、あいつが何か知ってる」
夕映「うん。あの人がどこにいるのかはわからないけど、何か知ってるんだったら話しきかなきゃね」
夕耶「うん。この二日間、あの時間で、あの通りであいつに会った。同じ時間にそこに行く。もしいなかったら、あいつは山の方に行った。だから、山の方に多分何かある」
夕映「うん。合ってると思う。調べに行こう。一緒に」


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夕耶「なんか、そう、さっきの悪魔の話だけど、契約の代償に何かを支払わなきゃいけない。そういう話しなのであれば、僕は何かを犠牲にして、それが僕のことなのか、あるいは身の回りのことなのか……、何かを犠牲にしてその契約を結んだ。そういう感じかもね」
夕映「うん、少なくとも僕の倫理観上、許し難い何かを犠牲にして、このおまじないは唱えられたんだろう」
夕耶「そっかそっか」
夕映「でもそのおかげでこうして夕耶に会えた。そのことだけは間違いないよ」
夕耶「うん。過去の僕が夕映をこうやって本当にいる存在として形作るために何を犠牲にしたかはわからないけど、でも、たぶん、その時の僕はそれが本当に正しいと思ったんだし、目の前にこうしている夕映を見て、一緒に遊んで楽しかった。僕を変えてくれた夕映をこの世に呼べて、今も間違ってないと思ってる」
夕耶「だから、覚悟を持って、あの白い奴に会いに行こうと思う」
夕映「そっか、じゃあ、行こう、夕耶」

夕映がそう言って手を差し出す。

夕耶「うん、行こう、夕映」

夕耶はその手を握り返す。

夕映「うん、触れるね」
夕耶「確か……確かにここにいる」


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白いローブの男「お前の選択はどれだ」

夕耶「間違いなく、僕から言えることは、夕映、君を消すことは絶対にしない。だから、最後の選択肢だけは有り得ない」
夕映「うん」
夕耶「ただ、僕はここに来るまでの間、さっき、覚悟を決めてこの選択をすると言った。それはどんな犠牲を払っていたとしても、君の存在は消させない」
夕耶「絶対にこのまま残す。そういった覚悟だった」
夕映「うん」
夕耶「あいつは最後の選択肢はなかったとして、元の二重人格に戻るか、この『夢の世界』と心中するかと言った。……ここは現実じゃないのかな?」
夕映「きっとそうなんだろうね?」
夕耶「そっか。じゃあ、元の世界の僕は、どうなってるんだろうね」
夕映「うん……眠っている?」
夕耶「じゃあ、この夢の世界と心中するってことは、僕はずっと目覚めないまま、寝たきりってことなのかな」
夕映「その可能性が高い。もちろん、彼の言葉から推理するならだけどね」
夕耶「そっかぁ……
夕耶「…………ああ……僕は……僕は、二重人格として、夕映とずぅっと会話しながら、この十六年間生きてきた。だからずーっと一緒にいたと言っても過言じゃない。こうやって体ができる前も」
夕耶「だけど、十六年間ずーっと一緒にいた。一緒に会話して、いろんなものを経験してきた。そのはずなのに、夕映がこうして、実際に体を得て、触れ合うことができて、別々のことができるようになって、そうして初めて、今まずっと一緒にいたはずなのに、もう一人の僕とも言える君のことを、深く知ることができた。僕も変わることができた」
夕耶「それを元の二重人格に戻すなんて、僕にはできない。君だって、せっかくこうして、夢の世界とは言え体を得ることができたんだ」
夕耶「元には……戻りたく、ないよな?」
夕映「……そうだね。僕だってこの体は惜しい。それが、この三日間の中で、日に日に強くなっていくのを感じた。だけど、彼は『この夢の世界と心中する』と言った。いつこの夢が終わるかはわからない。だけど、心中とは命を失うことだ。きっとそれは、夕耶にとって良くないことなんだと思う」
夕映「僕は自分の体がこうなる前から、君の幸せを願っていた」
夕映「君が笑ってると、僕も楽しい」
夕映「君が泣いてると、僕も悲しい」
夕映「子供の頃、一緒に飛行機を作って、空を飛ばして遊んだ。あの時君は僕を『いるもの』だと思っていたみたいだけど」
夕映「そう考えれば、僕は初めから君のそばにいたんじゃない? こうして実態を持たなくても、君と一緒に遊んでたんじゃないかな」
夕映「だから僕は、もとの二重人格に戻ったとして、それを嫌だなんて思うことはないよ」
夕耶「……っ、じゃあ、やっぱり……夕映は、肉体を得たことで、僕と同じ経験をしてきた二重人格から生まれた存在だけど、僕とは少し違うね」
夕耶「僕は、元の二重人格に戻るのは、嫌だよ」
夕映「そう、どうして?」

夕耶は手をぎゅっと握り返す。

夕耶「こう、…………できなくなるじゃないか……っ」
夕映「っ、そうだねっ、でも僕は、こうできなくなるよりも、君の体に何か起きた時の方が、悲しい」
夕耶「ああ……だから、だから……、過去の僕が、このおまじないをしようとした時、僕を止めたのかな」
夕映「きっと、意識を手放して、夢の世界に旅立ってしまう……。そういうことを知っていたのかもしれない」
夕耶「そっかぁ……元に戻るのは……嫌だけど……っ」
夕映「っ、うん、僕も、嫌だよ……、本当はね……?」
夕映「でも、きっと夕耶が生きなくちゃいけないんだ」
夕映「本当は僕自身が消えた方が、きっと、夕耶にとっていいんだと思う」
夕映「イマジナリーフレンドの話があった。人間の人格形成上、イマジナリーフレンドとは子供の頃に忘れてしまうものだ」
夕映「だから、君の中に僕が残っていること自体、きっと不自然なことなんだと思う」
夕映「でも、僕も君といたいよ」
夕映「君が大人になって、どんどん僕と姿が変わっていって、そしていつかはお別れをしてしまうのかもしれない」
夕映「だけど、僕は自然とそうなる時まで、君と一緒にいたいよ」
夕映「そのためにも、現実には帰らなきゃいけない。……この世界は、やっぱり不自然だ」
夕耶「……そっか……っ、不自然でも、別にいいじゃんって言ったけど、元の世界では、もし僕が寝てるとしたら、残された母さんは、泣いてるのか……
夕映「きっと、もっと夏が嫌いになっちゃうかも」
夕耶「そっか……やだなぁ。それも……っ」
夕映「うん。僕はさ、夕耶にも、母さんにも、夏が好きでいて欲しいんだ」
夕耶「夏は……嫌いだったんだ」
夕映「うん」
夕耶「夏は……不運なことが起きる、絶対に、毎年」
夕映「うん、そうだね……
夕耶「けど、夕映がこうやって、一緒に遊んでくれて、僕にまた不運が降りかかった時に、また手をとってくれて、助けてくれて、それでようやく、今年の夏は楽しいかもって思えた。夏が――っ、好きになれたかもしれない」
夕耶「だから、今度は、僕と、夕映で一緒に、母さんを、夏が好きにさせてみたいな」
夕耶「もっと、僕のせいで、夏が嫌いになるなんてこと、させたくないし……僕のせいで、母さんが泣くなんてこと、嫌だな」
夕映「うん」
夕映「もう一つ思い出したことがあるんだ」
夕耶「ん?」
夕映「これは、夕耶の記憶か、それとも僕が母さんの中にいた時の記憶か、それはわからない」
夕映「けど、僕の名前は夕映。この名前は、夕映えという単語からきている。夕映えとは、夕焼けのことだ」
夕映「ある日見た、夏の夕焼けがすごく綺麗で、その光景を忘れたくないと思ってつけられた名前なんだって……そう感じる」
夕映「だから、僕は夏が好きで、夕耶や母さんにも、夏を好きになって欲しいんだ」
夕耶「そっかぁ、……じゃあ……ここには……っ、いられないね……
夕映「うん……
夕耶「じゃあ……一緒に帰ろうか……
夕映「うん」
夕耶「僕たちの、うちへ」
夕映「帰ろう、夕耶」

夕耶は、夕映の手を握ったまま、フードの男の方に向き直り、握った手を前に出す。

夕耶「夕映の体が失われても、僕たちは二人で一つだ。この世界での三日間は楽しかったし、かけがえのないものだけど、『僕』も、『夕映』も、『母さん』も、『現実世界の母さん』も、そのままにはしておけない」
夕耶「この夏の、かけがえのない三日間を、胸の中にしまって、かたくかたく、忘れないようにしまって……っ、そして、その記憶と共に――思い出と共に、二人で一緒に、元の世界に戻る。僕はその選択を取る」

夕耶「僕を――いや、僕たちを、元の二重人格に、戻してくれ」


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二人の意識は暗くなった。

目を覚ます。いつも通りの目覚めだ。
いつの間に、家に戻ってきたのだろう。
あなたは目を開ける。
あなたの視界には、夕映の姿が見えている。
あなたにしか見えない友人が、あなたの人格が、見えている。

母「ただいま~~! お土産持ってくるから手伝って」

そう呼ぶ母親の声が聞こえた。
あなたは慌てて跳ね起きて下の回へと行くことだろう。

夕耶はすくっと起きて、夕映に手を伸ばすが、触れることなく通過する。
伸ばされた夕耶のその手は、夕映が両の手で包もうとする。

夕耶「ああ、そうだよなぁ……
夕映「何を残念がってるのさ、元に戻っただけだよ」
夕耶「そうだね。まぁ、触れないけど、夕映を感じる」
夕映「うん。僕も、君を通して君を感じる」
夕耶「そっか。母さんが帰ってくる前に戻ってこれた。母さんに変な心配させなくて済んだってことかな」
夕映「うん」
夕耶「はあ、良かった。母さんがもっと夏のこと嫌いになる前に、戻ってこれて」
夕映「ああ。本当に良かった」
夕映「ひとつ、夕耶に言っておきたいことがある」
夕耶「ん?」
夕映「僕は君とずっと一緒にいるよ。もし、仮に将来夕耶が成長して、僕のことを忘れてしまう時が来たとしても、夕映えを見るたびに思い出してほしい。僕は君と、ずっと一緒だからねえ」
夕耶「……うん……っ、ああ、そうだ。写真始めるって言ったけど、辞めよっかな」
夕映「どうして?」
夕耶「だって――

夕耶は、ベッドの横にあるスマホを出して、カメラで夕映の写真を撮る。

夕耶「ほら、写ってない」
夕映「う~ん……
夕耶「だから、その代わり、僕に絵の描き方を教えてくんない?」
夕映「そっか。うん。そうしよう」
夕耶「絵なら、『僕が見たもの』を残せるからね」
夕映「うん。『君が見て、そして僕が見たもの』、それを――残そう」
夕耶「うん。それが残れば、一生忘れることはないよ」
夕映「うん、そうだね」
夕耶「よし。……母さんも心配するし、行こうか」
夕映「そうだよぉ。そんなにべそかいてちゃ、母さん心配するよ」
夕耶「はあ~……

夕耶はぺちぺちと頬を叩く。

夕耶「母さ~ん、今行くよ。……よし、行こう」
夕映「うん」

あなたたちの夏は始まったばかりだ。

夏休みはまだまだ残っている。
ふたりで過ごした夏休みの記憶は、まだあなたの中にある。

これからもこうして、二人で生きていく。
『一人』であるあなたたちは、『ひとつ』として生きていく。

あの三日間の記憶は、鮮やかにふたりに残っている。

――青い空
――真っ赤な夕暮れ

すべて鮮やかな、刹那の夏を、覚えている。



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夕耶が写真をやめる理由は「写真では、自分が見たもの(つまり、夕映がいる世界)が残らないから」だし、絵を描きたいと思った理由は(おそらく)「夕映がいる、自分の見ている世界を残せるから」というところで、何度見ても涙腺が崩壊します……

ここからは勝手な妄想なのですが、
このセリフに対して、「君が見て、そして僕が見たもの、それを残そう」っていう夕映……
夕耶にとって「二人が一緒に見たものを残す」っていう意味ももちろんあるのだろうけど、「夕映の存在する、夕耶の世界を描く」という意味もあるかもしれないなと勝手に解釈して呻いています。
夕映は、たぶん、「一緒に見た景色を残す」ということを意識しているように思えていて、
そういうところに少しだけ、この三日間で理解しあった互いの違いが出ている気がして尊い……

本当に、KPPLお三人とも天才すぎる……
あらためて、感謝ばかりがあります。最高の夏をありがとう……っ!!



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