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そんな理由―越知月光の場合―

全体公開 3 1265文字
2022-07-22 01:35:07
Posted by @uk_plus_



 大丈夫、いつも通り。そう言い聞かせながら学校へ行った。昨日のことは引きずっていないはず、そう思いながら。

 「おはよー」

いつも通り友達に挨拶をして教室に入る。大丈夫、いつも通り。まるで呪文のように何度も胸の中で唱えて、自分の席へと着く。するとぬっと大きな影がバッグの中身を出していた私にかかった。

越知?おはよ」
「おはよう」

巨躯のクラスメイトが私の目の前に現れて何か言いたげにしていた。

「どしたの?何?」
「いやその

何か言いにくそうにしながら、頭を掻いた越知は私に向き直りゆっくりと、しかし私にだけ聞こえるように体を屈めて言った。

「目が、腫れているな」

私は肩をびくりとさせて、動かしていた手を止めた。

「な、に?」
「目が腫れている。少し様子も違うと思った」
だ、だから?」
「大丈夫か?」

気遣うように発せられたその声音が心地よく耳に響く。その声に不思議と肩の力が抜けた私の目には、段々と水分が溜まっていく。

「越知、ごめん、ちょっと来て」
「あ、ああ」

もう耐えられないと思った私は、越知の腕を引っ張って教室を出た。


 「聞いてくれる?」

空き教室まで来て、私は越知に背を向けたまま言う。そんな私に越知は静かに返事をして、私の次の言葉を待っているようだった。

「あのね
「ああ」
「あの好きなバンドが、その、昨日解散しちゃったの」
……バンド」

ぽつりと呟かれた越知の声色に私はしまったと思った。

「いやわかってる、わかってるよくだらないよね、こんなことで落ち込むとかさ!越知にとってはどうでもいいよね!おっけ!大丈夫大丈夫、全然平気。全然、全然気にしてない全然ほんと、ほんと

未だ背中を向けたまま、まくし立てた。それと同時に瞳からは重力に逆らわず涙が溢れた。嗚呼格好悪い。涙を流したまま笑っていると、温かい何かが頭にとんと置かれた。それはどうやら越知の掌で、私は越知に頭を撫でられているようだった。

「平気ではないのだろう」
「お、越知」
「好きなものがなくなって、大丈夫な人間はいないだろう」
う、うう」

肩が震え出して、私はいよいよ嗚咽を漏らす。すると越知は今一度頭を優しく撫でてから、また言った。

「無理に我慢はするな」

その声がとても優しくて、私は涙を流したぐちゃぐちゃの顔のまま彼を振り返った。見上げた先には前髪に隠れた顔があったが、その表情もとても優し気に見えた。

「越知ありがとう
「俺は何もしていない」

充分だよと言って、私は流れる涙を拭って笑った。

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 「でもどうしてわかったの?」
……どうしてだろうな」


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