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捨て猫を見つけた―越知の場合―

全体公開 1361文字
2022-07-30 00:50:25
Posted by @uk_plus_



 「どうしよう

朝の通学路。ふと気づくと電柱の近くにテンプレのように置かれていたひとつの箱には、一匹の小さな猫が入っていたのだ。
私は足を止めて、その箱のそばでしゃがみ込んでいた。もう少しで校門を通らなければいけない時間だったが、このまま放っておくことも出来ずにいるのだ。

 うんうんと悩んでいると、上の方から大きな影がかかった。

「どうしたんだ」

その落ち着いた声はクラスメイトの越知くんだった。私の真後ろに立って、高い位置から声をかけてくれていた。

「あ、おはよう越知くん。実はここに猫が捨てられてて
「猫

私の言葉につられるように越知くんが視線をやりながらしゃがみ込んだ。そして躊躇なく右手を出して、猫の頭を優しく撫でる。その手付きはとても優しく、大きな掌であることを忘れてしまいそうなほどだった。

「いつからだ」
「えっ昨日は見なかったから今朝からかも
そうか」

前髪に隠れた顔が一寸悲しそうなものになった気がした時、越知くんの掌に箱の中の猫がすりと頭を擦り付ける。まるで連れて行けと言っているようなその仕草に私の胸はぎゅっと痛みを感じた。

「どうしようか
「どこか安全なところに連れて行けたらいいのだが」
「安全なところ

私は越知くんの言葉にまたうんと悩む。ここの近くにそんなところがあっただろうか。私が悩んでいたその時だ。越知くんが小さな猫の体を抱き上げて、そして入っていた箱も一緒に持った。

「近くの公園まで連れて行く」
「え、でもそうしたら遅刻しちゃうよ」
「構わない」

そう言った越知くんはさっと私に背を向けて歩き出す。私はそれを見て思わず声を上げた。

「待って!」
「なんだ」
「私も一緒に行く!」

突然に大きな声をだしたものだから、私の息は一寸切迫していた。もしかしたら緊張していたのかもしれない。越知くんと近くで会話したことに。

「お前も遅刻するぞ」

当然のことを返されて、しかし私は首を横に振った。

「いいのいいの、大丈夫」
「しかし

越知くんの濁した返事を、私は隣に立って笑うことで更に否定した。


「もうここまで来たら共犯でしょ!」
「共犯?」
「だって最初に見つけたの私だし」

ね、と顔を覗き込めば越知くんは少々驚いていたようだった。そして口元だけで少し笑って、越知くんはひとつ頷く。

そうだな」
「ね!共犯共犯。さ、行こ」

そして私と越知くんは肩を並べて近くの公園まで行った。小さな命を抱えて。
 もちろん一緒に遅刻を怒られたのは、また別の話だ。

――――――――――――――――――――――――――――

 放課後、またその公園へ行った。越知くんと二人で。

「で、結局この子どうしよっか
「うちで預かろう」
「え!?いいの?」
「先住猫がいるがまあ許してくれるだろう」

そしてその猫は越知くんの大きな手に抱かれて温かい家に帰って行った。


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