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ともだちのうた前編

全体公開 1017文字
2022-08-03 23:57:33
Posted by @uk_plus_



 面倒な恋をしてしまった。好きな人に“好きな人がいる”という恋だ。状況は更に厄介で、その人と私はそこそこに仲の良い関係だった。だからこそ余計に見えてしまうのだ、好きな人の“想い人の影”が。もちろん苦痛も伴うが、それでもその人のそばにいられるなら“仲の良いクラスメイト”でもよかった。

 「おはよう」
「おはよー越知!」
「今日は元気がいいな」

ほら、こうして私の想い人はいとも容易く心の平穏を搔き乱してくるのだ。ただ挨拶をしただけなのにその次に繋がる会話を投げてくれるから。

「そうかな、いつも通りじゃない?」
「いつも通り元気、ということか」

結構と言いながら越知はその大きな体を自席に着席させた。
 越知はとても物静かなクラスメイトだ。感情の起伏がわからなくて怖いと言う人が多いが、そうではないことは私がよくわかっている。表情に出すことが苦手なだけで、友人をからかう程度にはフレンドリーな人間だ。
 そしてよく知っているからこそ、機微にもよく気付いてしまうことが苦しかった。
 物静かな越知がたった一人だけ空気を綻ばせる相手がいるのだ。

 「月光くん」

その人は教室に表れて綺麗に彼の名前を呼んだ。
 彼を下の名前で呼ぶのは隣のクラスの子。よくこちらのクラスに来てはこうして越知を呼ぶことが多かった。

 「今日は何を忘れたんだ」
「えーなんでそんなこと言うかなぁ」

聞きたいわけでないのにそばだててしまう耳を呪いたい。そして気付いてしまう越知の些細な雰囲気の違いに、胸の奥が少々ちくりと痛んだ。なんとなく聞こえてしまう二人の会話に机に突っ伏すことで遮断しながら、私は唇を噛む。

 こうした日々を送りながら、私は日毎越知への想いを募らせるばかりなのだ。それでも私は、その人のそばにいられるなら“仲の良いクラスメイト”でよかったんだ。

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 「どうした」
「何が」
「元気がないな」
そんなことないよ」

私の想い人はいとも容易く心の平穏を搔き乱してくる。こうしてたまに私のことに気付いたりして。


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