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ともだちのうた後編

全体公開 11 1610文字
2022-08-05 02:21:23
Posted by @uk_plus_



 「月光くんは隠し事が出来ないね」
「なんだそれは」

隣のクラスからやってきた“知己の”女子生徒に頼まれた辞書を渡していたら、越知は突然そう言われた。唐突に振られた話題に首を傾げていると“知己の”女子生徒はくすくすと笑い、話を続ける。

「さっき、見てたよ」
「何をだ」
「あの子と話してるとこ。あんなんじゃばればれだよ~私だったら気付いちゃう」
……

越知は思い当たることがあって内心どきりとした。そしてため息を吐きながら首を横に振る。

なんのことだ」

そしてその一言で話を終わらせようとすると、彼女はまたけらけらと笑い、じろと越知を見上げた。

「誤魔化したって無駄だよ、私にはわかっちゃうからね」
「だから
「それだけわかりやすいんだからさっさと好きだって言っちゃえばいいのに」
「!」

越知はぴしりと固まった。一度だってそんな話は彼女にしていないのに、何故気付かれたのだろうと。

「ほらまた顔に出た」
そんなわけがない」
「そして墓穴を掘ったね?」
……

目の前の彼女はにやにやとした笑みを浮かべている。越知は自分が失敗をしたことに気付き、首筋を掻いた。しかしこのやり取りも長くは続かなかった。“知己の”彼女が思い出したように言ったからだ。

「でも、だとしたらあんまり長く話してちゃ駄目ね」
「何がだ」
「ほら、勘違いされちゃうじゃない?彼女に」

そう言いながら彼女は指で教室のあるところを指し示す。だがそこに思い当たることがあった越知は、即座にその手を自分の右手で下ろさせた。

「やめろ」
「月光くんは行動力があるもんね?」

そんな越知の姿に“知己の”女子生徒は口元を抑えて笑い、じゃあ辞書ありがとうと隣のクラスへと戻って行った。一方の越知は嫌な汗をかきながらゆっくりと己のクラス内を振り返ったのだった。



 例の彼女と話し終えた越知がゆっくりと振り向くのを横目で見ていた私は、すぐに手元のスマホへと視線を落とした。彼女と話し終えたことに胸を撫でおろし、そして浮上した気持ちを落ち着けながら。そしてやっぱり気になって見ていたのがばれていないか、内心ドキドキしながらつらつらスマホを見ていると越知がこちらに近づいてきた。すると越知は私の目の前の席へ着き、唐突にこう言ったのだ。

「従兄妹だ」
「え何が?」
「その今教室に来ていたのは“従兄妹”だ」

突然のことに何の話かわからない私は更に首を傾げる。それと同時に心の中でずっと思っていた重たいものが溶けていくようだった。

「だから、その
何?」

胸の内が軽くなっても、何故越知が突然そんな話をしたのか合点がいかない私は頭にはてなを浮かべたままだ。いや、それ以上に“もし自分が望んでいる状況になっているのだとしたら”という淡い期待が頭を掠める。心の中で頭を振ってそんなものはすぐに払拭させたが。

「お前にだけは、勘違いされたくなかった」

しかし私の振り払った淡い期待はすぐにまた脳内に駆け巡る。越知のたった一言によって。そして丁度いいタイミングで朝礼のチャイムが鳴り、越知は立ち上がった。

……また、後で話す」

 私の想い人はいとも容易く心の平穏を搔き乱してくる。こうしてたまに爆弾発言を落として去って行ったりして。


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「あれ?でも苗字違うよね?」
「従兄妹でも苗字が違うことはあるだろう」
「あーそっか

そそっかしいなと小さく笑った口元を、私は見逃さなかった。


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