@EYK_adzuraki
1.「おもかげ(1)」
水切り遊びが巧いやつだった。拾った石を投げる。それだけなのに、その石は魔法のようにどこまでも跳ねた。投げ方を教えてもらっても、一緒に石を選んでも、彼の石は対岸まで易易と届くのに、ぼくの石はいつも途中で沈んだ。それを見ながら二人でげらげら笑った。どうしようもなく、楽しかった。
並んで水切り遊びをした川面は、今でも変わらずきらきらと澄んで、宝石を撒いたようだった。思い出す。対岸を凛と見つめる横顔、投擲の動作のしなやかさ、一直線に水を切る小石。まるで一幅の絵画のように完全で、完璧で。
石を拾う。振りかぶる。彼の面影をなぞるように。あのあまりに美しい――二度と戻らない瞬間を、こい願うように。
石が、跳ねる。
(300字/タイトル・スペース除く)
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2.「おもかげ(2)」
石を見ると、あの野郎が居るのさあ。
道端の小石、山奥のでっけえ岩、河原の丸石、立派な屋敷なんかに置いてある、変な形の庭石だって。
ちょっとした模様とかひび割れとか、あるだろ。光や何かの加減なんだろうけどなあ。それがみんな、あの野郎の面影に見えるのよ。やってらんねえやな。
あの野郎、石に宿っちまったのよ。かあっとなっちまって、そこらの石なんかで頭をかち割っちまったのがいけなかったんだな。しくったよなあ。全く、しくっちまった。
次は、もっと考えてやらねえとなあ。石なんざどこにだってあるし、目に入らないときなんて無えじゃんか。こうしょっちゅうあの顔を見る羽目になるんじゃあ、たまんねえもの。へっへっへっ。
(298字/タイトル・スペース除く)