X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

猫の月光3

全体公開 13 1344文字
2022-08-08 23:22:19
Posted by @uk_plus_



 「どうしても?」
「だめだ」
「そこをなんとか!」

休日のリビングで、私と月光は先程からこういった応酬を繰り返していた。

「ほら、楽しそうじゃない?」
「お前がな」
「絶対月光も楽しいよ~ほら~」

私の手には一本の猫じゃらし。対する月光はといえばたまにグルーミングをしながらも、ぷいと横を向いたまま。つまり私は今“猫の”月光と遊ぼうとしていた。握っている猫じゃらしで。しかし何故だか月光はさっきからそれを拒否しているのだ。

「いいじゃんか~折角猫になってるんだし」
さして興味はない」

私は未だ横を向き続ける月光の目の前に猫じゃらしを持ってきて、何度かひゅんひゅんとそれを動かしてみる。月光はというと耳を何度かぴくぴくさせつつも、特にそれを追う動作は見られない。

「も~なんでよいいじゃんケチ」
「ケチで結構だ」

静かに佇む月光を睨みながら頬を膨らませて見せても、彼は一向にこっちを向こうとしなかった。いよいよそんな彼に根負けして、私はソファにぼすりと腰を沈め、握っていた猫じゃらしをぽいと床に放った。

「もういい、不貞寝する」

そしてそのままソファに横たわり強く強く目を閉じた。消えた視界の端に映ったのは変わらずグルーミングをしている猫の姿だった。



 どれくらい眠ったのだろう。ふと目を覚ますと、腹部にのしりと重たい感覚があった。それはどうやら月光のようで、私が眠ってしまった後に私のお腹に乗って昼寝をしていたようだった。

「だからどうしてお腹で寝るの

私は悪態をつきながらも腹部の大きな毛玉をなんとなく撫でると、それとは別に硬く細いものが指先に触れた。それは先程まで彼が拒絶していた猫じゃらしだった。

なんだしっかり興味あるじゃん」

ため息を吐きそう言ってから、私はもう一度寝直そうと目を瞑る。お腹に温かい重みを感じながら。


――――――――――――――――――――――――――――――――

 「……

越知はソファに横になった彼女をもう一度ちらりと見て、ゆったりと寝息を立てていることを確認した。そして床に放ったままにされている猫じゃらしに顔を近づけて、くんくんと匂いを嗅ぐ。
 越知は葛藤していた。実は内心猫じゃらしが気になっていた。いや、気になってしまっていたと言った方が近いだろう。それはどこか自分の気持ちなど関係なく、本能的に抗い難いものがあったのだ。

――さして興味は

そこまで思って、もう一度猫じゃらしを見る。そして触れるだけならと、ちょいちょいと手の先で猫じゃらしに越知は触れた。操る主を失っている猫じゃらしはもちろん動くことはなく、ふわふわとした毛先がそよと揺れるだけだ。

……さして、興味はない」

興味はないがとりあえずと、越知は猫じゃらしを咥えてソファにひょいと飛び乗り、そして彼女の腹の上でくるりと丸まった。そのそばに猫じゃらしを置いて。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.