@satomi8429
雑踏の雨足元に映るネオン人が居れば居るほどに孤独 / 洛竹
失せものがなんだったのか思い出せずに失せたことだけ覚えてる / 風息
せがまれて建てた氷柱瞬きと同じくらいの夏の思い出 / 虚淮
暑いよと右手にひとり左足にもぺたり涼を取りにくる子ら / 虚淮
遊びつかれ木陰にころがる弟の寝顔にそっと蓮の葉の傘 / 洛竹
闇に舞う面にかがり火笛太鼓いつもの兄の着物の匂い / 天虎
立ち上がれ振り向くな走れ持てる者は持たざる者の未来のために / 風息
移りゆく世は理ただどうしても守りたいものがひとつだけある / 虚淮
潮の香を含んだ風になびく髪あの頃のままいられぬ僕ら / 洛竹
人間のかたちになれぬそのままで僕らはまるごとゆるされていた / 天虎
目を閉じてうずめた髪草と日向と土の匂いがしてたいつでも / 虚淮
上向けば額に頬に降り注ぐ雨ひんやりと手のひらに似た / 風息
この花は脚は笑顔は温かい手は君がくれたものだったのに / 洛竹
風の吹く森に原野に延べられた腕今はなくまた陽が昇る / 天虎
かなしみを減らそうとして駆け抜けたのにここにもまた積もるかなしみ / 風息
おかえりといつものように微笑んでかくしごとには気づかぬふりで / 洛竹
魂を賭けて駆けるというのなら振り向くなただひたすらにゆけ / 虚淮
雪解けの河にきらめく薄氷その目とおんなじだと笑う君 / 虚淮
昨日には居なかった葉つぼんでた花おはよおはようようこそ此処へ / 子風息
末っ子が見上げる膝の特等席すくすく育ていやこのままで / 風息
もう大人だから甘やかさないでと並び立てると思っていたよ / 洛竹
帰りたい場所はふるさとではなくて君と笑っていられる世界 / 洛竹
兄の名を冠した場所に立つ俺はどこへ何をぶつければいいの / 洛竹
あの頃はすべてがあった広い空どんぐり木の枝蓮の葉風息 / 洛竹
風息が何を思ってたかなんてわかるわけない弟なのに / 洛竹
何ひとつわかってなかった風息のバカ言えよ大きらい大すき / 洛竹
昨晩の村の祭の踊りまね木漏れ日を踏み遊んでる子ら / 虚淮
末弟を背負い行く秋桜のみち前に弟後ろには兄 / 風息
神さまにそなえる餅をつくと言うなら食べ方も聞いておこうか / 風息
産声を上げる赤子に祝福をようこそ君も森の仲間だ / 風息
奪うごと未来のためと言い聞かす盗人に戻る道などないと / 風息
今はもう戻らぬ森満天の星澄んだ川つないだ小さな手 / 虚淮
森も山も川も変わる人間もかみさまなんてどこにも居ない / 風息
ぴかぴかに磨いた武器は誰のため仲間の未来それとも自分 / 風息
ともに存在を認め合うことが共存ならこの透明さはなに / 風息
奪うより与えたかったそのままで居られず奪えず与えもできず / 風息
この穴はお前がここに居た証だから埋めないこのままでいい / 虚淮
【百年先もきみを想う】
ひとりで生きたことなんかない兄のまぼろしは秋空に消えゆく / 天虎
こそこそと人間のなか暮らしてさもうその歳を越してしまうよ / 洛竹
風息を忘れないよと唇にのせる呪いと祈りを混ぜて / 小黒
あと何百年生きたとしてもあの二百年の光は消えない / 虚淮
【街に住む妖精、舘に住む妖精】
あっけなく楽園の夢は潰えて木が生えたとてそれだけのこと
星が落ち木が街に立つ中空に追われし者の集う楼閣
土恋し苔覆いたる岩恋し空の桟橋故郷は遠し
過去になどしない奴らのいいようになどしない俺の神を殺した
【洛竹と風息】
行かなくちゃならない場所があったんだ取り戻さなきゃいけない場所が / 風息
風息に笑ってほしい叶わないと知りつつなお祈るたなばた / 洛竹
怖がられ疎まれ隠せと言われても誰かの善でありたかったな / 風息
同じ地に生きるものの幸せを踏みつけて築くそれは幸せ? / 洛竹
【虚淮と風息】
音のない白い世界にひとり立つ稜線みどり我らが故郷 / 風息
最期だけは誰のためでもなく己のためだったと言ってくれたら / 虚淮
もし会えたなら頬張り飛ばして言う力不足ですまなかったと / 虚淮
過ぎし日を想い出として歩きゆくには眩しくてあざやかすぎて / 虚淮
【ぼくが選ぶ未来】
ぼくたちはどこへも行ける飛べずとも手をたずさえて補い合って / 小黒
池に咲く蓮青々と茂る枝百年前も百年先も / 風息公園と呼ばれる場所にて
水面に浮かぶ氷花に月光の透けるを眺む子らの面影 / 虚淮
遠き日の手を目を声を思い出す花が咲いても雨が降っても / 虚淮
ひび割れたコンクリにタンポポの花ふるさとはどこ?ひとりでえらいね / 洛竹
夕暮れに帰る烏を見送って迎えに来る兄を待っている / 天虎
さよならもごめんもありがとうもなく去ってごめんと言えずにごめん / 風息
泣き腫らし顔にふ、と湯気のぼる出汁の匂い兄の土産の匂い / 洛竹
胸にある穴を覗けば懐かしき焚き火の夕べ遥か彼方に / 虚淮
思い出は溶かし冷やしてあめ玉にいびつなかたち懐かしい色 / 洛竹
波の音はいつの世もただそこに在るお前がそばに在ると同じに / 虚淮
逆立ちができた日世界は逆さまに映ることもあると知った日 / 洛竹
あのひともこのひとも妖精なんてどうしてここは森じゃないのに / 洛竹
透明なもの硝子窓しゃぼん玉メガネ雨水花瓶妖精 / 洛竹
人間のふりして生きる俺は誰人間じゃなし妖精でもなし / 洛竹
しあわせの形はひとつではないというけど同じ形はなくて / 洛竹
この穴はお前がここに居た証だから埋めないこのままでいい / 虚淮
おかえりとまた言いたくてここに立つお前の帰る場所はここだと / 洛竹
任せたと言って去るのか薄情め言ったところで風が吹くだけ / 虚淮
雨風がしのげる場所を家というならばと公園の樹の下へ / 洛竹
雨風の唸るをふたり眺めた樹のうろを思う今はひとりで / 虚淮
声も手も笑顔もやがて掠れゆく飛行機雲よどうか消えるな / 洛竹
目を閉じていればいつまでも消えない何も視界に入れずにいれば / 虚淮
離れないでとしがみついた遠い夜離れないと翔けていった朝 / 虚淮
雪の朝カラフルに彩られた樹その美しさもわかる寂しさ / 洛竹
霜柱ふみふみ歩く腰ほどの背丈の君の揺れる両耳 / 無限あるいは虚淮
蹴り上げて埋もれ丸めて転がして笑い声の上に白い湯気 / 無限あるいは虚淮
四面楚歌でもひとりじゃない地の底で待ち侘びていた命があった / 風息
故郷がたとえ迎えてくれたとて許せない許さない寂しい / 虚淮
伸ばした手取ってやれずにこれからもこの手は空を掴み続ける / 虚淮
伸ばしたらいつも握ってくれた手を今日も反芻するよおやすみ / 洛竹
神の子が磔になったと聞いたそれでも今日は聖夜なのだと / 虚淮
楽しいと思う直後に苦しいと感じる心切り離せずに / 洛竹
何もない力もないし頭もさでも絶対に憶えているよ / 天虎
笑えてたのはただ知らなかったから兄が背負ってくれていたから / 弟たち
我の名を呼ぶ陽だまりの温かさまどろみ誘う尾に春の風 / 虚淮
いつか見た闇にひしめく朱提灯あれはなにと手ひく子はなくて / 虚淮
欠けようが溶けようが構わなかったのにこのざまだ薄情者め / 虚淮
騒がしい夜は苦手なはずだった賑やかという安らぎを知る
我の手で大きくなれと撫でた葉の伸びるを兄とそっと見守る
青い葉が黄になり赤になり落ちるすべてを目を開けて見届ける / 洛竹
秋晴れの空の向こうにいる君よただ健やかでありますように / 洛竹
大木の下で笑える君の手の掴む未来にさいわいよ在れ / 風息
リスの頬袋のようにまるい腹やすらかな寝息に上下する / 虚淮
提灯の並ぶ地上を見おろせば囃子に混じる兄のうたごえ / 天虎
よちよちと歩く仲間を背に乗せる幼い頃のあの日のように / 天虎
日常に慣れたと油断した途端ふと空耳が心を揺する / 虚淮
雨風の唸るをふたり眺めた樹のうろを思う今はひとりで / 虚淮
青い空したたる緑桃色の花に重なる藤色の影 / 天虎
何もかも血肉になっていたことに気づくひとりの春の夕暮れ / 天虎
思い出すことと思い出さぬこととどちらが生き易いのだろうな / 天虎
「どうかした?」「なんでも」なんて笑顔でさ返せるくらい遠くまで来た / 洛竹
今日までを歩いてきたは茫漠とした白い道ぽつねんと影 / 洛竹
樹の上で枝を透かして見る日の出はつ春の朝この街の風 / 洛竹
雨の日に濡れ歩くものではないと言われさす草色の雨傘 / 洛竹
花が咲くためには冬が必要というけどどのくらい待てばいい / 洛竹
春のような君がいない春がくるそれなら冬の続くがましか / 洛竹
懐かしい夢から醒めて目前の池の氷に咲く蓮の花 / 虚淮
雪が降るただひたすらに積もるだけ足跡もなし呼ぶ声もなし / 虚淮
明けぬ夜は止まない雨はないという世界はかつてそうであったか
想い出は捨てなくていい抱きしめて生きろだなんて残酷な声 / 洛竹
春一番髪も砂塵も舞い上げる滲む涙は砂のせいだな / 洛竹
見上げれば枝に小さな飴色の花もう長い冬が終わるよ / 洛竹
青空を指し連なるは山査子の紅光るつやつやの飴
冬が明けまた冬が来る曇天に閉じ込められた箱庭の森
もう二度と会えぬのならばまどろみのまやかしでいい温度も声も
いらっしゃいと言ってからほほえんでまずはそれだけできればいいわ / 紫羅蘭
慣れるとは麻痺することと同義だと兄を見上げて手のひらを見る / 洛竹
鉢植えの相棒とバックパックと傘だけ持って旅に出たいな
(洛竹とガジュマルの話の短歌三首)
ここから出て行きたいでもではどこへ?木は土なくば生きられぬのに / 風息
もういっそ諦められたら楽なのに手綱を離せば落下するだけ / 風息
苦しいと好きはべったりくっついて捨てたい捨てられない愛しい / 風息
ちょうちょうを追いかけるきみの頭の双葉をそっと揺らす春風 / 虚淮
今ここに生まれ来る幼な子たちの原風景のなか生きている
かみさまが住んでいたんだここにはね昔々の話だけれど
なにもせずとも身は時は未来へと進んでしまう心残して / 虚淮
抜け殻は意味など持たぬあの頃を反芻し続けるだけの殻 / 虚淮
大波にひとり挑んだ跡さえもないもの言わぬ浜があるだけ
爪痕は埋めてならして塗り替えてほら元よりもすてきになった
忘れない忘れたくない忘れさせられたくない忘れてたまるか
「大丈夫」?「力になる」?「元気出してね」?ばかにするなと唇を噛む / 洛竹
とけていく不本意なまま雨の窓映ってるのはどこの誰なの / 洛竹
どこまでも走っていって追いつけぬ風の終わる場所は空の果て / 洛竹
冬は夏とは一緒にはいられない正義の椅子はひとつしかない / 風息
ひと椀の粥を分け合うみたいにはいられなかったさよなら友よ / 風息
よく来たなゆっくりしてけどこへ行く絶望へ?ならほらすぐそこだ / 風息