X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

言ってしまった

全体公開 1 3 1434文字
2022-08-20 05:52:44
Posted by @uk_plus_



 「えっ今、なんて?」

毛利はたった今自分がした失言にひどく後悔した。それは普段だったら絶対に漏らさない言葉であり、なんなら一番大事な時にと取っておいた言葉でもあった。そして目の前でとても驚いている好きな子である彼女に、なんと答えようか考えていた。

「いや、その、あーっと、なんやっけ?」
「え、だって今、その

しかし起きてしまった事態をひっくり返せるはずもなく、その言葉はどうやら彼女にしっかりと届いてしまったようだ。
 事は好きな子と二人でお喋りをしていた時だった。いつも通り自分の気持ちを悟られないように毛利はその時間を楽しんでいた。話題は他愛ないもので昨晩のテレビのことや部活動についてなどのことで、特別普段と変わりないものだった。

「そんでな、その先輩はめっちゃ猫が好きなんやけど
「毛利君いっつもその先輩の話するよね」
「せやってめーっちゃすごい人なんよ!」

毛利が息巻いて話すと彼女はくすくすと笑いながらうんうんと返事をする。そんな姿に可愛らしさを感じながら、毛利は熱くなりそうな顔がそうならないように我慢をした。しかしそんな毛利の努力は彼女のたった一言で崩壊してしまう。

「毛利君、大好きなんだね、その先輩のこと」

毛利君、大好き

都合の良い所だけ大きめに聞き取れてしまった己の耳を毛利は恨んだ。大好きな彼女の口からそんな言葉が出て、冷静でいれるほど毛利は大人ではなかった。しかも一番大好きな彼女の盛大な笑顔付きだったのだから。

だい、大好き

内心驚いてしまった毛利は両手で熱い顔を覆って、まるで漏らすように呟いてしまったのだ。

はー好きや~

それが毛利の今日一の失言だった。

 驚いてしまった毛利は両手をばっと顔から離し、目の前の彼女を凝視してしまう。そこには同じように目を大きく開き驚き顔をしている彼女がいた。

 「あ、え、っと、せ、先輩のこと、だよね?」

毛利と同じくらい焦っているであろう彼女がフォローを入れてくれたが、その顔はとても真っ赤だった。しかし毛利の顔も同じくらい真っ赤になっており、もうこれは言い訳出来ないだろうと一か八か腹をくくった。

先輩のこととちゃうで」
「そ、それは

ええい、もういったれ!

心の中でひとつ鼓舞して、毛利はぐっと顔を彼女に寄せて小さめの声で彼女に言った。

「あんたの、ことやで」

そしてすぐに顔を離して再び両手で顔を覆いながら言ってもうたー!と盛大に声を上げた。ばくばくとうるさい心音に体を震わせながら、毛利はもう一度彼女の顔を見た。するとそこには先ほどよりも顔を真っ赤にさせながら、くるりと丸い瞳で毛利を見つめる彼女がいる。その表情は毛利の杞憂を吹き飛ばすくらいの威力があった。

「あの、その

口ごもるように言葉を漏らす彼女の口から、毛利が今日一喜ぶ言葉が出るのは数秒後の話だ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ああめっちゃ嬉しいめっちゃ嬉しい!」
「毛利君、ちょっと距離が近い!」






投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.