イベントで展示するキン肉マンの夢小説です
名前変換
@87imbi
一覧です(昔、展示していた作品なので新章の設定が反映されていない作品があります。)
2p、デッド・シグナル/JK夢主(ほのぼの)
3p、2世サンシャイン←夢主←チェック/悪魔超人夢主設定(ちょいシリアス)
4p、(故)ブロッケンマン夢/JK夢主設定(恋愛要素なし、ギャグ)
5p、ヒカルド(+ペレ&ガンキュー)夢/JK夢主設定(ほのぼの、ギャグ)
6p、スニゲーターJr.夢/アトランティスの娘設定(悲恋、死にネタあり、DV要素あり、夢主オリキャラ寄り)
7p、キン肉マンネメシス夢/スプリングマンの娘設定(ネメシスにムッツリ&ラッキースケベ属性あり、少々シリアス。夢主オリキャラ寄り)
デッド・シグナル/JK夢主
【雨上がりの後の標識】
私が普段バイトに行くときに通る横断歩道は人通りが少ない。
今日は特に午後から降った雨のせいでこの横断歩道の青の信号待ちをしているのは私と向こうの歩道に居る標識の超人、しか居ない。
デッドシグナル。
HF2期生の卒業生で地球を守るため日夜平和の為に頑張っている標識の超人。
そんな超人に会えるなんて、私今日雨だったけどついているかな。しかし、彼をよく見ると本当に色んな意味で不思議な顔と身体をしている。
ざぁぁ…。
信号の赤の真下に居る標識顔の超人の身体は大粒の水でずぶ濡れだ。
……今日、午後から雨降るって天気予報で言っていたのに見てなかったのかな。ていうか目どこにあるんだろう?
口はよく見るとあるらしいんだけど、と考える間にもざぁぁと雨が彼の固い身体にボタボタと滴る。
あんなに濡れて寒くないのかな。
ざぁぁ…。
超人って風邪とか引くのかな。
「…。」
信号が、青になった。
私はビニール傘を頭に挟みながらバックの中からいつも入れている折りたたみ傘を掴み、素早く広げた。
たった、と走るように雨で濡れた足元を気にせずに歩道を渡ると私はさしていたビニール傘を標識超人の手に滑り込ませた。
「あげます。」
「グギ?」
ふと、自分の腕時計が目に入る。
あ、ヤバい。
標識の超人の不思議そうな声が聞こえたが、私は、バイトに遅刻しそうな時間だと気付いたので、折りたたみ傘を片手にバイト先まで一直線に走った。
「グギー」
デッドシグナルは手渡されたビニール傘をさし、もう遠い少女を見つめた。
ビニール傘を渡された時に触れたあの温かい手の感触がふんわりとデッドの手にまだ残っていた。
「グギ?」
デッドは、傘の掴む場所に小さく書いている「名前」と字を見つける。おそらく、彼女が盗難防止の為に傘に書いた名前だろう。
「グギー、名前…」
彼女の名前を呟き信号を見ていたら、既に青のランプは点滅し始めたのでデッドは急いで歩道をビニール傘を片手に渡った。
***
バイト帰りの名前は立ち止まった。
すっかり雨が止んだ信号の下でとじているビニール傘を持ち立ち尽くしている標識の超人を見つけたからだ。
「!グギ……名前」
初対面の標識の超人が、どうして自分の名前を知っているのかと思ったら、あのビニール傘には盗難防止のために「名前」と掴む所にサインペンで書いてたことを思い出した。
じっと自分を見ている名前を見て、デッドは慌てたようにごめんと、名前が傘の掴む所に書いてたもんだから、頭をツルツル掻いた。
「雨もあの後晴れたもんだから……、名前にこの傘を返そうと思っていたんけど……どうしたら会えるか分かんなくて…ここウロウロしてたら…」
名前に会えた、とデッドシグナルはビニール傘を差し出した。
ビニール傘だから別にそのまま貰っても良かったのに、とどこかぎこちがないデッドに名前はくすりと微笑んだ。
「……有り難うございます。デッドシグナルさん」
「グ、グギ」
どういたしまして、と頭を更にツルツルと掻き明後日の方向へと顔を向けるデッドに名前はもう一度礼を言うと信号が青になった歩道を渡ろうとした。
「まっ、待て!」
びっくりした名前に、女の子の夜道の帰りは危険だから超人の俺が家まで送る、とかなりうわずった台詞を付け足した。
名前はびっくりした顔のままデッドを見続ける。
そういえば超人好きの友達から聞いた事がある。超人は人に助けられたら、その人が困っていたら絶対に助けなきゃいけないって。雨降っている中、ビニール傘をあげた小娘もこの例の中に入るものなのかな。
ん~と暫く唸っていた名前に彼女の心中を知らないデッドはハラハラしながらそれを見届ける。
「はい」
「…!」
にこりとしながら、お願いします、と笑顔で答えた。
「グギー」
何故かガッツポーズをとっているデッドシグナル。
そして、向こうの信号は既に赤になっていた。
自宅であるマンションの前。
「デッドさん、有り難うございました」
グギー超人として当然だ、と言うデッドさんはどこか照れていた。
可愛いな。
でも、もう、この姿も、今日限りで見れないんだろうな。
一緒に帰る途中、デッドさんと色んな話しをした。交通安全とか超人プロレスの事とか友達の事とか色んな事。
もう、会えないんだろうな。
なんだかとっても、寂しい。
テレビを見ればまた会えるのに。
もう、デッドさんと話せない。
「…」
「グギ?名前」
黙った私にデッドさんは首を傾げた。
「あの、また会いませんか?私、もっとデッドさんと仲良くなりたいです」
自宅のマンションの前、自分が言った台詞に少し照れた私と顔に書かれている「止まれ」の文字が顔の色と同色化したデッドさんが居た。
end
2世サンシャイン←夢主←チェック/悪魔超人夢主設定
「お前はチェックと一緒に行かなくて良かったのか?」
はい、と即答に答えた[FN:名前]にサンシャインはパチパチと炊き上がる焚き火の中の魚をむしゃりつくと皮肉笑いを浮かべた。
悪魔6騎士、d.M.P悪魔超人首領の肩書きをなくした。そして手塩をかけて育てた愛弟子の一人は、正義超人に殺され、一人は、正義に目覚め自分の元を離れた。
今の自分に残るのは、年月を重ね歳をとってしまった体と悪魔超人という誇り。
そして、十数年に拾った名前という細い少女だけ。
「…私に同情しているのか?」
このワシがお前みたいな小娘に同情されるまで落ちぶれると思わんかった、とサンシャインはグフォフォと開き直ったように笑いながら名前に言ったが、彼女はいいえと言わんばかりに首を縦に振った。
「私は、アナタの全うする悪魔道を信じて生き抜いていきたいだけです。」
「超人パワーが50以下の雑用係の小娘がよく言うわい」
はん、と鼻で笑い再び魚にむしゃりつくサンシャインに名前はそぅと口に魚を運ぶ。そもそも、とサンシャインが口を入れた魚を飲み込み酒瓶を口の中に注ぐと弟子2人と名前に何百回も言い聞かしたであろう己自身の悪魔超人時代を語ろうとした時、ふぅと腹を撫でた名前がしゃべるための口を開いた。
「ヘッド、50パワー以下でも、私は女だから超人強度が高い悪魔超人の子供ぐらい産めますよ?」
ぶふぉ、と酒がサンシャインの口から勢い良く噴射された。
「…」
酒の一気飲みのせいで赤くなった顔を青くしながら、いまだ腹を撫でる名前をガタガタと図体のデカい身体を震わせながら見つめる。
そんなまさか、名前は、子供だ。
しかし、いまだに腹を撫で続けるサラサにサンシャインは身体と心に汗を掻き続けた。
いや、子供と思っていたのは自分だけだ。髪も伸び、丸かった顔は綺麗に整った。
レックスもチェックも少なからず彼女に好意を持っていたし、d.M.Pに居た頃は悪魔超人以外にも残虐超人、完璧超人に言い寄られた[FN:名前]を弟子二人が追い払ったのも一度や二度ではなかった。
チェックに関しては、名前も一緒に正義超人になりましょうと、熱が籠もった声で手を握りしめ誘った程に彼女に情を傾けていた。
そんな二人を草葉の隙間で見ていたサンシャインは、コートを肌着に気付かれぬようにその場を去り、寝床についた。
愛弟子と愛娘の未来に幸あれと、別れを心の底から惜しんでサンシャインは泣きながら眠りについた。
そして朝を迎え、目を覚ました頃には既に愛弟子は、去っていた。愛娘は「おはようございますサンシャインヘッド」といつも通りの挨拶を告げながら自分とサンシャインの為の朝飯を作っていた。それから何事もなかったかのように彼女との生活を続けていた。
そう、チェックがサンシャインの元から去ってから1ヶ月。
「……まだ、早い!」
突然、唾を吐き散らし形相を恐ろしくするヘッドに名前はクスクスと笑う。
「大丈夫ですよ。私まだ結婚なんてしないしそれ以前に恋人もいませんから」
だから安心して下さいサンシャインヘッド、とにっこりと笑う名前にサンシャインの顔が緩む。
「名前…お前チェックとは…」
「?チェックがどうかしましたか?」
「………。」
急に首を元の位置に戻したかと思うとサンシャインは酒瓶の中身を飲み干した。かぁーと砂色の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
「飲み過ぎると身体に毒ですよ」
耳を貸さず二瓶目を飲み干すサンシャインにもう長生き出来ませんよ、と口を尖らせ名前は好い加減に焼かれた魚を焚き火から取った。
パクリとそれを口に入れ三本目に突入した砂男にため息を送った。
「そんな貴方が大好きですよ」
もうベロベロでいびきを掻いている元悪魔の首領に名前は毛布をかけてあげながら呟いた。
end
(故)ブロッケンマン夢/JK夢主設定
【軍人レスラーさんとの幽雅な出逢い】
「フロイライン、フロイライン」
ある日、男性の声がベッドに眠るわたしの隣りから聞こえて来た。
風呂のライン?何だそれ?
ん、と寝ぼけたわたしはうっすらと目を開ける。
すると軍帽を被っている知らない上半身裸の男がにんまりとしながら怪しく笑ってわたしの右隣へと堂々と横たわっていた。
「やあ、フロイライン。」
皮手袋をしてる片手を上げて、もう片手で頬杖をつく血色が悪い男性。
「―――――――!」
それを目にしてしまったわたしは、深夜にも関わらずこの世に産まれ落ちた時以上の泣き声を叫んだのだった。
***
「―――――という事で私の姿はフロイライン、君にしか見えない、つまり他のヤツには見えない!つまり私は怪しいものでは無い!!」
だから私を幽霊だと信じてくれ!と力いっぱい叫ぶ謎の幽霊こと怪しさ満点な(故)男は皮手袋をしている手をどんと自分の胸に大袈裟に当てる。そんな真面目な表情をしている彼は頭に軍帽、血色が悪い顔、上半身黄色の皮膚と黒の入れ墨のマーブル、パンツ一丁、黒ブーツと言ったなんとも印象濃い姿をしている。
まあ、分かりやすくいえば中途半端な軍人レイヤーだ。
なんとか落ちつき取り戻し、目がさっぱり覚めてしまったわたしはヤツをじっと見る。
「…。」
とりあえずこんな姿の男を自分の部屋で見かけたらとりあえず警察に連絡する事をお勧めしよう。もちろん、それは生きている人間であった場合であったならの話し。
死んでぷかぷかとそこらに浮かんでいる(故)中途半端な軍人レイヤーだったら止めといた方がいい。不審者扱いされるのは確実にそれが見えるわたしなのだから。…ていうかわたしはいつからこんなに濃い幽霊が見えるほどの霊感少女になったんだろう。
ちらりと、中途半端な軍人レイヤーをチラ見した。うん。怪しさ満点。
「…あなた何?誰?」
早くあの世に帰ってくれない、という言葉をびくびくしながら飲み込んでそう聞くと腕を組んで足を組んで優雅に浮かぶ(故)軍人レイヤーは、ん?とした顔を作る。
「HAHAHA、そうか。まだフロイライン名前は、私の名前を知らなかったのか。だったら今すぐ覚えておいてくれ。私の名前はブロッケンマン、出身はドイツのベルリン。そんな私が今日から君の守護霊だ!」
「…は?」
ブロッケンマン、と名乗る幽霊の長々とした色々ツッコミどころがある台詞を聞いて、わたしは口を思わずあんぐりと開けてしまう。
いやいや何でわたしの名前知ってんの?てか何をほざいてんだアンタ?言っとくけどアンタが幽霊じゃなかったらとっくに警察に連絡してるんですけど?と言う前にブロッケンマンはHAHAHAとマイペースに笑いながら空中で胡座をかいている。 そんなマイペースな姿にイラって来る。
「いやぁー、まいってしまったよ!超人墓場の労働をちぃーとばかりサボっただけのに地獄閻魔に絞られてしまって、そのサボった罰として人間の守護霊に憑けとか何とか言われてしまってな!」
なんかさらにイライラっとした。
私的にはジュニアの守護霊が良かったのに、とはあとため息を深くするブロッケンマン。いやいやわたし的にもパンツ一丁の守護霊が憑くのもやなんですけど。そのため息は何だ。アンタが言ってる事はさっぱり分からんがすごいムカつくぞ。
「…じゃあ、わたし守護霊とかいなくても平気なんで、ジュニアって方の守護霊になったらどうですか」
できるだけ、丁寧に、アンタの訳分からない戯れ言なんざこれ以上聞きたくないよ的な感情を抑えながらわたしは言った。そんなにわたしに憑くってのが嫌だというならジュニアって人に憑けばいい。アンタなんてこっちから願い下げだ。そう思ってるとブロッケンマンは軍帽の下で影になっている目を急に見開いた。
「……フロイライン」
声も震えていた。きっとわたしの守護霊じゃなくてジュニアって人の守護霊になれるんで感激しているのだろう。わたしはいつの間にか二足歩行で立っているブロッケンマンから目を背け、続ける。
「わたし本当に大丈夫なんで」
「……」
「だからジュニアって人の所にいって」
守護霊になって下さい、と言い掛けた台詞を完成しない。
ひやっ、とした感触。ぞわりと鳥肌が立つ。何事かと後ろを振り返ったら、ブロッケンマンは跪いて、私の左の手の甲を両手で包み込むように掴んでいた。
え?ちょ?えぇ?
そんな風に戸惑っていると、ブロッケンマンはふわり、と微笑んだ。
「フロイライン… 名前、自分の身など返りみずに、私の気持ちを第一に優先してくれるなんて…君は何て心が広くて優しいフロイラインなんだ…」
真剣な声を、真剣な表情を、帽子の陰に隠れてる真剣な形になってる蒼い瞳を、全て私に向けるブロッケンマン。
三分前とまるで別人のブロッケンマンの変わりようにあ然としているわたしは口をパクパクと開ける。
え?ちょ?何事?何この人?二重人格?
ブロッケンマンの予想も出来ない行動に頭の整理がつかなく混乱しているわたしに、
ちゅっ
と、ブロッケンマンは冷たい唇でわたしの手の甲に軽くキスをした。
「フロイライン名前、私は君を護る為に君の一生に憑いていこう。」
そう言って、ふわりと笑うブロッケンマンは、わたしの顔にムキムキの胸板を押し付けるような勢いのハグをした。
「だから、君は私の二番目の子どもに思う事にするよ!あ!私の事はファータって、呼んでもいいぞ!」
ああもう!私の可愛い二番目の子どもー!とぎゅうぎゅうとブロッケンマンに抱き締められるわたしは、ただ呆然するしかなくて。
数分後、この状況の全てを理解した時には、
「……………。」
なんていうか全部が遅すぎて、固まった。
ハート乱舞を撒き散らしているブロッケンマンを突き飛ばせないまま、わたしの意識はそのまま、飛んでいった。
しかも、目覚めた翌日、ブロッケンマンがわたしの隣りで寝ていたので、わたしは再度、意識を失って、その日学校に遅刻をしたのだった。
end(うわぁぁ!もう何で夢じゃないのよ!)(HAHAHA、どうしたわたしの娘よ。低血圧かい?)
ヒカルド(+ペレ&ガンキュー)夢/JK夢主設定
【あれっ?】
こんにちは、名前と申すものです。
突然ですが、私、攫われました。そして(六畳間のアパートに)拉致されております。
「フイギュー」
私の目の前で机に向かってカリカリと何かを真剣に書いている目つきの悪い白い超人はヒカルド。
元正義の悪行超人ヒカルドです。私を攫った張本人です。
「で、こうだと思うんッスけど」
「それでこれでこうしたらいいと思うんッスけど」
そしてヒカルドのそれぞれの右左の隣りに座って真剣なヒカルドと一緒にアドバイスをしているのはガンキューにペレ。2人曰わく、「俺達はヒカルドさんの一番子分だぜ!」らしいです(本当はどちらが一番子分かは知らないけど)。
私はそんな様子を真面目だなーと感心しながら眺めています。
三人は、高校帰りの私を誘拐しました。人質(私)を取って、正義超人達に挑むのだそうです。
けれど、人質を取ったはいいが、綿密な計画をうっかり立てていなかったので今立ててるのだそうです。悪行超人の集団なのに慎重だなーと思いながらポコポコと私は自分の分とその他三人分のお茶を煎れました。
「あ、お茶煎れたんでどうぞ」
「フギュ、サンキューな」
「お、気が利くじゃねぇか人質」
「流石はヒカルドさんが選んで攫った人質だな」
私をお礼を言いながらヒカルド達は私が煎れた茶をなんの躊躇いも無く受け取り、ゴクゴクと飲み干します。悪行超人とは言え勢いよく美味しそうにお茶を飲み干す私は何だか嬉しくて少しだけ笑ってしまいました。
「フイギュー!何笑ってんだよ!」
「人質の癖に生意気なー!!」
「そーだ!そーだ!」
はははは! 、と豪快に笑う悪行超人三人。
三人共、何だか楽しそうに笑うので私もさっきより笑ってしまいました。
***
「あ、てか今何時?」
人質を取って正義超人共をぶっ倒す!という計画から早三時間。時計を見れば午後7時を回っていました。
計画は未だにまとまっていません。お母さんには一応心配かけないように友達と遊ぶから遅くなるね、と携帯でメールを送ったけれど、これ以上遅くなると流石に…と時計と睨み合っていたらヒカルドがフイギューと低い声で言いました。
「名前、お前門限大丈夫なのか?」
「一応遅くなるってメールはしたけど…潔く人質に取られてるから今日帰れないって言った方がいいかな?」
「っておい、泊まる気でいたのかよ」
「…だって私人質だし」
むむ~と唸り出したヒカルド。腕を組んで三分たっぷり俯きました。
「フイギュ、名前、お前明日学校だし、これ以上遅くなるとアレだから今日は帰れ」
「え、でも…」
「人質を攫って正義超人を襲う計画なんていつでも出来るだろ?だから、また今度人質になってくれな」
「ヒカルド…」
「たく、ヒカルドさんの優しさに感謝しろよな」
「今回だけだぜ名前」
「ペレ、ガンキュー…」
じぃんとなっている私にヒカルドは私の腕をヒョイと掴んで立ち上がりました。
「女一人帰ってたら危ねぇから送ってやるよ」
ヒカルドの言葉に俺達も!と言うペレとガンキューにヒカルドは三人いたら目立つだろーが、と止めました。
こうして、(悪行超人通販で買ったらしい)人間の男のオーバーボディを着た(近所に人質を取られた事を騒がれると厄介だと判断した)ヒカルドと私は家の帰路を歩いてました。
「フイギュー、今日はすまなかったな名前」
「ううん、私の方こそ人質のくせに図々しくしてごめんね」
あははと一緒に楽しく笑いながらヒカルドは私を家であるマンションの前まで送るとそのまま帰ってしまいました。
後日、私は凛子達に「カッコいい男いたじゃん!誰よ!彼氏!!?」と言われてしまいます。
それを真っ赤になった私が「違うよ!彼氏じゃないよ!」と否定するのはまた別のお話しです。
end
スニゲーターJr.夢/アトランティスの娘設定
【人魚の涙】
名前は悪魔超人アトランティスの娘。
父とは違い人間の肌を持ち、目は白の部分が無く、赤い宝石の様にキラキラ輝いてる。豊かなウェーブがかった長い緑の髪を背中に流し、下半身は美しい緑の鱗に覆われている魚の尾なのだ。
つまり人魚である。
魔界の地で卵から孵った名前は魔界でアトランティスに育てられた。弱肉強食が基準である魔界での暮らしは決して楽なものではなかった。
だが、父であるアトランティスは実力をつけて魔界で数少ない兵隊のポジションの座に就き名前の取り巻く環境と生活は変わった。寂れた住居から魔界の城の部屋に移り住み、食事も質素な魚から豪快な肉の塊になった。
しかし、住む場所も食べるものも変わっても二本の足を持たない人魚の名前が小さな水槽に閉じ込められることは変わらなかった。
「待ってろ名前、いっぱい活躍して金を稼いでもっともっと大きな水槽を買ってやるからな」
アトランティスが古代から続いていた水棲の一族にしか伝わらない言葉で名前に伝えると名前をきゅぴ、と滅んだ一族の言葉で嬉しそうに返した。
本当はもっと父に構って欲しいが、忙しいのだ。仕方ない事だ。自分に自分で言い聞かせ、名前はアトランティスが居なくなった部屋の水槽の中で過ごす。
水槽の中は4面の鏡だ。全ての鏡に名前が映し出される。これが全部わたしの兄弟だったらいいのにな。そしたらいっぱいいっぱい遊べるのに。鏡に映る自分を見ていつもそう思う。
しかし叶わない願いだ。
名前は一人娘で、母親は卵だった時に人間に殺されてこの世にいない。母親は卵の中にいた自分を最期まで護りきって死んだのだと聞かされていた。きっと素敵な人魚だったんだろう。父は母を今でも愛しているし、これからも愛し続けるだろう。素敵な話だ。
名前も父のような素敵な超人と出会って、その超人と母みたいに深く愛し合う日が来るのだろうか。
ぼぅ、と夢想に耽っていたその時にガチャとドアが開く音が聞こえ、その振動で浸かっている水が微かに揺れるのに気付いた。父だろうか。いつもより随分と早い帰りに名前は水面から上半身を出して顔を輝かせた。
しかし、この部屋に入ってきたのはアトランティスではなく、三つの顔を持ち、六本の腕を生やした青い肌の男だった。
「ん?何だお前は?」
そう言った男。
しかし、アトランティスが喋る水棲超人の言葉以外聞き取れない名前。突然の侵入者に固まる名前に男はズカズカと足を踏み鳴らし水槽の前に立つと、名前の頭を鷲掴みにした。
「…人魚の超人か。珍しい。とっくに絶滅したと聞いていたが…アトランティスを訪ねて来てみればとてもいいものを見る事が出来た」
「…っ!」
きゅぴきゅぴと濡れた髪を振り乱して暴れるが男の掌の力は強く、振り払えない。
「アトランティスも珍しいモノを飼っているんだな。しかし平の悪魔のアイツには人魚なんて高価なペットなんて似つかわしくない。私が頂いていこう。カーカカ」
高笑いを上げた男は名前が浸かっている水槽ごと軽々持ち上げるとそのまま部屋を出て行ったのだった。
きゅぴきゅぴと水槽から身を出して泣き喚く名前だったが、男に睨みつけられ、水槽をごんと一回叩かれてしまいすっかり怯えしまった。
ぽちゃんと水の中に潜り込み、ガタガタとゆらゆら揺れる水の中で身を縮こませた。父アトランティスの顔を思い浮かべて助けてと念じたが、一向に現れる様子がなく、名前は溢れ出る涙を水に溶かしながらただただ時間が過ぎるのを待った。
「おい、起きろ」
暫く時間が経って水槽をごとりと置かれたかと思ったら、いきなり両脇を抱えられ、上へ無理やり引き上げられた。目をぱちくりしている名前の前に薄紫色の肌をした女と目が合った。男と違い、腕は6本ではなく4本しか無かったが、三面の顔を持っていて男と同じ種族の超人に見えた。
「見ろ、イボンヌ。珍しいだろう、人魚の超人だ。顔も中々器用で鱗も美しい。中々のものだろう」
「えぇ、とても可愛い子だわ。でも…一体どうしたの。この子をどこから連れて来たの。まだ子供のようだけど親はどうしているの」
「細かいことはいいじゃないか」
「でも……」
そぉ、と薄紫色の肌をした女の細い手の面が名前の顔に触れた。名前は驚き、がぶりと条件反射で女の手首に噛み付いた。
「いたっ…」
「イボンヌ!この…生魚がぁ!」
男が何かを叫んだかと思ったら何と男の横の顔と真正面の顔が入れ替わり、それは恐ろしい表情になった。その気迫に名前は一瞬で身動きが取れなくなった。
「待って、アシュラ君」
修羅の表情をしている男にそう言って女はそっと名前が噛み付かれた手で、名前を優しく胸に抱き寄せる。
「アシュラ君の怒鳴り声にこの子はびっくりしているわ。まだ子供なのに可哀想よ。ほら、震えてるわ」
「しかし、こいつはお前の手を……」
「きっと私がいきなり触ったらビックリしただけよ。」
「きゅぴ…」
温かい。
名前はそっと顔を上げて女の顔を見つめると、女は優しく微笑んでいた。
「わたしは何もしないわ、大丈夫よ。安心して。…怖くないわ」
その声が、表情が心地良かった。
言葉の意味まで理解できなかったが、名前は女の4本の腕に包まれ、柔らかい胸に顔が埋もれたまま目を閉じた。
良い匂いがする。
ぐりぐりと頭を擦り付けたら優しく撫で撫でされた。それがむず痒くて、でも嬉しくて魚の尾をピチピチ上下させた。
「あ、こいつ……」
「しっ…ほら見てアシュラ君。この子寝ちゃったわ。寝顔がとても可愛い子ね。あら…アシュラ君、何処に行くの?」
想い人の胸の中に眠る小さな人魚に嫉妬しぶつけられない鬱憤を晴らすべく、アシュラマンはあの生意気な人魚の所有者であるアトランティスを探しに、顔を怒りの面にしたまま部屋を退出した。
*
アシュラマンは他の仲間とスニゲーターの稽古を受けているアトランティスに掴みかかった。何も知らず呆然としているアトランティスにアシュラマンはよくも訳がわからない生物を飼っているな、と怒鳴った。
その怒鳴り声に言葉の意味を理解したアトランティスの頭の血が引いた後、カッとのぼった。俺の娘をどうしやがったんだ!と叫びよりも牙が光り、アシュラマンの腕に食い込んだ。
アシュラマンは激怒したが、負けずにアトランティスも激怒した。
お互いに取っ組み合い血の拳をぶつけ合った。
突然始まったふたりの喧嘩にポカンとしていたスニゲーターと6人の悪魔超人は我に返り、ふたりを止めたのであった。その騒ぎを聞きつけ、名前を抱えたイボンヌが駆けつけたのであった。
*
「だったら名前ちゃんをわたしに預かさせていただけないかしら?」
そう言ったのは大人しい名前を膝に座らせているイボンヌだった。イボンヌ曰く、悪魔超人の巣窟で幼い女の子を一人きりで留守番させるのはとても危ないので自分がアトランティスが帰る時間まで預かって面倒を見るーーつまり託児の提案だった。
その言葉に包帯だらけのアシュラマンとアトランティスは猛抗議したが、イボンヌの決意は固く、周りの説得もあり、アトランティスが帰宅するまでイボンヌが名前を預かることを決定したのだった。
名前は言葉がわからなかった。
しかし、アトランティスがいなくなる間、ひとりぼっちではなくなったし、何より自分と遊んでくれるイボンヌが大好きになった。
イボンヌに少しずつ言葉を教わり、人の言葉が分かり少しずつ話せるようになった。
そして、自分からイボンヌの屋敷で少しずつ仕事覚え、イボンヌの使用人として住み込みで働くようになった。
時々、アトランティスの練習風景を車椅子に乗ってイボンヌと見に行ったり、アトランティスの昼のお弁当を一緒に作ったりした。
「時々でいいから身体が弱い俺の息子の遊び相手になってくれないか?」
アトランティスの鬼師匠のスニゲーターにそうこっそり頼まれたのはアトランティスが外へ走り込みに行ってる時だった。
父が尊敬する師匠の頼み事を断わる理由は何処にも無かった。すぐさまYesと返事をしてスニゲーターの息子の元に向かった。
スニゲーターの息子、スニゲーターJr.は身体が弱く小さかった。
だけども、心優しい少年で、名前はスニゲーターJr.と仲良くなった。
やがて、友達になり、その関係は恋情と変化して相思相愛なるのには時間がかからなかった。
「Jr.くん。本当にわたくしで良いんですか…?」
「勿論だよ、名前。僕は君が居なくちゃ生きていけない……そんなこと言わないで」
「でもわたくしはアトランティス一族の人魚。貴方と違って他種族との超人じゃないと子孫が残せない身体をしているんですよ…」
「構わないよ名前。僕は君さえいれば…それより君こそいいの?僕は普通の超人と違って身体が小さく病気がちだ。きっと君に迷惑をかけてしまう……」
「そんなこと決してありえません。わたくしはJr.君、貴方に愛されてこれ以上にないほどの幸せを手に入れたのです。悪魔超人には愛というものは存在しないというけれどもわたくしたちの間にはきっと…」
「… 名前」
「…Jr.くん」
心が重なったふたりは晴れて恋人同士になった。
悪魔超人には愛はない。魔界の決まり文句だ。それゆえに、ふたりは自分達の関係を秘密にしていたが、当人たちの父親や他の悪魔超人たちは全てお見通しだった。
しかし、必死で隠している当人たちを悪魔超人の癖に愛し合うなと責めず静かに温かく見守るのだった。
ふたりは蜜月を重ねた。
誰にも邪魔されない幸せで愛おしい時間を共に過ごした。7人の悪魔超人、悪魔六騎士が正義超人達に敗れ、バッファローマンが脱退しても、ふたりは悪魔超人達のサポートをして悪魔超人達に尽力を尽くし、またお互いも愛を深め合っていった。
だが、幸せの時はいつだって、手のひらから砂がこぼれるように落ちていくものだ。
悪魔超人達と完璧超人達の戦い、否、スニゲーターがガンマンに敗れ、死んだことをきっかけに、名前とスニゲーターJr.の愛の形に深いヒビが入ったのだ。
自分の父親アトランティスを亡くした名前の心は深い悲しみに染まったが、スニゲーターJr.は心から尊敬するスニゲーターの死が、相当酷いショックで毎日荒れて名前に八つ当たりをした。
「愛がなんだ…愛がなんだっていうんだ!!僕に力さえあれば…僕に超人プロレスラーとしての素質があれば父さんは…父さんは…!」
「…Jr.君、やめて、お願い…」
「うるさい…お前なんかに何が分かる!子孫を残せない身体のお前に何が分かる…!」
「ごめんなさい…Jr.君、ごめんなさい…」
身体以上に心が痛かった。
しかし、名前は耐えた。
いつか、愛するスニゲーターJr.がいつもの優しいスニゲーターJr.に戻るまで待ち続けた。だが、現実は辛く重く非情だった。
「俺は魔界を出る。お前とはお別れだ、名前。永遠にな」
スニゲーターJr.は名前にそう告げるとまとめた荷物を背にずんずんと歩いて行った。呆気を取られた名前だったが我に返り、スニゲーターJr.を追いかける。
「え…?待って!Jr.君、待ってよ!」
魚の下半身を一生懸命前進させながらスニゲーターJr.を追いかけるが追いつかない。
「待って!Jr.くん…!嫌よ!嫌!行かないで!わたくしを置いてかないで!」
名前の必死に呼びかけにスニゲーターJr.はくるりと振り向いた。思い直してくれたのか、と笑顔になる名前。
しかしスニゲーターJr.は吐き捨てるように言った。
気付いたときにはスニゲーターJr.の姿は何処にも無かった。今になって大きな震えが、身体中に襲ってきた。
「あぁ……」
涙が、大きな涙が滝のように頬に流れ落ちた。泣きはらした名前は静かにイボンヌの屋敷に戻った。何も知らない子どものときのように大好きで尊敬できるイボンヌに泣きついて慰めて欲しかった。
だが、今、イボンヌは魔界の城でジャスティスマンに重症の状態になっている恋人のアシュラマンに片時も離れずに必死に看病しているのだ。
そんな状態のイボンヌに泣きついてもきっと困らせてもっと悲しませてしまう。
だが、イボンヌはそれでも自分を慰めてくれるだろう。イボンヌはとてもとても優しい人だから。
名前は自分の部屋に行って荷物をまとめた。
「今までお世話になりました、イボンヌ様…ちゃんとしたお別れを言えなくて申し訳ございません」
イボンヌから教わった魔界の文字で書いた手紙を机にそっと置いて、名前は魔界を後にした。
*
名前は日が当たる地球に来たのは初めてだった。
魔界とは違い、広く青い海に驚いた。試しに、海に飛び込み、潜ってみると魔界の海では見られなかったカラフルな魚や輝くサンゴ達が名前の赤い瞳に映り込む。
「…綺麗、これが地球の海、わたくしだけの海」
何かも鮮やかでうっとりするほど美しく素晴らしい世界。
くるりくるりと海中で魚の尾ひれで舞い踊る。ここは名前だけの世界。
他には誰もいない。
アトランティスも、イボンヌも、スニゲーターJr.も、みんなみんないない。
名前の孤独の世界。
流れ落ちる涙は大きな海の一部となって混じった。
人魚の涙はいくら流れても真珠にはならない。
人魚である名前が誰よりもその事を一番知っていた。
END
キン肉マンネメシス夢/スプリングマンの娘設定(ネメシスにムッツリ&ラッキースケベ属性あり、少々シリアス)
【思い出の兎】
青々と澄み渡る美しい空、その下に広がる無限の草原に咲き誇る美しい花畑は子鹿や兎が休まる憩いの場所となっている。これら全てが一人の超人の男の能力によって創り出された幻覚(ミラージュ)とは思えないほどの光景だ。
「お前が創る幻覚はいつ見ても凄いなミラージュマン」
「褒めても何も出ないぞ、ネメシスよ」
ゴパァゴパァと特徴的な笑い方をして白い髪を己が作った幻影で靡かせて花畑に座り込み、幻影と思えないほど巧妙に創られた兎と戯れるネメシスの隣に並んだ。
「ここの生活には慣れたかネメシス」
「まあな。ここの連中は下等超人とは違い心身共に気高く強い連中だからとても気があう。俺は完璧超人に生まれ変わって本当に良かった。いや、元々完璧超人になる運命だったのだ」
表情を変えないネメシスの言葉に感情はない。しかし、膝に乗った兎をとても優しく撫でていたのでミラージュマンは聞いてみた。
「兎は好きなのか?」
「好きでもなければ嫌いでもない」
「そうか」
「…ただ思い出すだけだ」
「ん?」
首をかしげるミラージュマンの隣でネメシスの腕の中の兎が気持ち良さそうに赤い目を細めていた。
ーーー私が知っている兎の目はあの空のように青かったな。
*
地下に幽閉されて幾月の年月が経ったのだろうか。いや、もうそんな事はどうでもいい。逃げるのだ。キン肉星ではない別の場所へ。ずっとずっと遠くへ。見張りがついてないキン肉星王家の無人の宇宙船があったのは幸いだった。遊びのつもりで子ども時代に覚えていた宇宙船の操作の仕方で忌まわしき故郷の星を飛び立った。もう二度とこの星には戻らないであろう。
キン肉星を振り向かず宇宙船を前進させた。目指すのだ。全ての超人の始まり地の地球へ。
*
ゴポゴポと音を出しながら沈む宇宙船を捨てて私は広い湖を泳いでいた。宇宙船は目立つ。もし追っ手が来ても乗り捨てられた宇宙船さえ見つからなければ捜査は難航するだろう。
泳いでいる内に足が地についた。砂利を踏みながら一歩一歩着実に進む。慎重に歩き、見えない地面を目指した。せめて、月の光が射して周りの景色でも見えればいいが、黒い空は雲が多い。真っ暗でよく見えないのだ。
「くしゅっ!」
寒い。身体が水が冷える。早く陸に上がらなくては。気持ちが焦って早足になった。それがいけなかった。
「っ!」
足のつま先が大きな岩にぶつかり、私の身体は前のめりになったが倒れなかった。ふにゅり、と両の掌が大きく柔らかい感触を捉えたからだ。それを掴んで為、私は何とか踏み止まる事が出来た。しかし、これは一体何なんだろうか。
とにかく柔らかく、触り心地が気持ち良い。何回か揉んで感触を味わった。なんとも不思議な感覚だ。揉めば揉むほどずっと揉み続けたくなる。暫く揉んでるうちに、その柔らかい物体の真ん中にまた柔らかい突起物がある事に気付いた。これも一体なんだろう。右の掌をそっと離して、その突起物を触れようとした瞬間、雲の間を抜けた強い月光が湖を照らしてーー水に濡れた女の裸体が現れた。
「な……」
いや、現れたのではない。最初から此処に、彼女は私の前に立っていたのだ。私は彼女の二つの膨らみを、つ、つまり乳房を……
「……ぐっ!」
顔が熱い。いや、身体全体が熱い。数分前まで芯まで冷え切ったのが嘘のようだ。ぶしゅり、と鼻の穴二つから血が勢いよく噴出した。血を止めようと慌てて、鼻を抑えた瞬間、私はーーー彼女の全てを見てしまった。美しく妖艶で全ての男を虜にさせてしまう魅惑的な女の裸の、全てを。
「う、ぐぅぅ…!!」
鼻血が止まらない。意識が朦朧とする。血が服と周りの水を赤く染め上げる。駄目だ、ここで意識を失っては!駄目だ!必死に自分に言い聞かせるが、視界が霞みがかってしまい、私はついに意識を失ってしまった。
***
…温かい。夢心地の感覚で私は眼を覚ました。温かいのは久しぶりだ。子どもの頃は温かい布団の中で眠りについていたが、成長して投獄されてからは寒く薄暗い地下牢の中で薄い布団を被り、夜を過ごして……待て。私は兄上の進言により処刑される前日に脱獄をして、それからーーー。
「気がついたかい?」
近くで聞こえた女の声に私はびくりとした。そして身体と(兄さんから別れの餞別に頂いた)着用しているコスチュームが既に乾いている事に気づく。辺りは暗く、まだ夜のようだった。布団の代わりらしいかけられた布を掴んでゆっくりと上半身を起こした。ぎこちない動きでその声の方へ振り向けば焚き火を挟んで対面側に女が座っていた。長い兎の耳を立たせて白い短髪の下の青い眼を細めて、ニコリと笑っている。どうやら、この女は若い年頃の兎の化身の超人のようだ。キン肉星の者はマスクを被って一生を過ごすが、地球に住むほとんどの者は素顔で暮らしているとゆうのは本当だったのか。キン肉星に育った私にとっては不思議な風習だ。しかしこれが地球の女超人の素顔とゆうものなのか。母上が被るマスク以上に素顔が整っている。地球の女超人の顔はみんなこんなものなのか。すごいな。首の下はマントを羽織っていて、どんな服を着ているか分からない。服の下は素晴らしい身体だったが。いや、そうじゃない。そうじゃないだろ、私。意識を切り替え、女を睨みつけ、一呼吸をする。
「….お前は何者だ。あ、あそこで何をしていた」
「しがない旅人のようなもんさ。水浴びをしていたんだよ。この湖はお気に入りの場所なんだ。月の光を見ながらの水浴びは気持ち良かったけど、急に雲で月が隠れて、巨大な何かが落ちてきて何かと思って近付いてみたらお前だったんだよ」
「……」
そうだったのか。…だから裸だったのか。…裸。
女の裸を思い出してしまいそうになったなるべく私は思い出さないようにして再び女に聞いた。
「な、何故私を救ったんだ?」
「そりゃあ、目の前でいきなり人が水の中に倒れて溺れていたら助けるに決まってるじゃないか」
実にシンプルな答えが返ってきた。態度からすると嘘をついてないようだが果たしてそうだろうか。この女が万が一にもキン肉星からの刺客とも考えられる。
「…それだけか?」
「他に理由があるのかい?」
「……」
警戒して念の為に聞いた質問もきょとんした表情で兎の耳をぴょこぴょこしながら即答に答えられてしまった。よく考えらボンクラなキン肉星の追っ手がこの私の考えを予測して、私の殺人を依頼した地球の超人に先回りさせているはありえない。もし仮に先回りしていたとしても私が気絶した時点でキン肉星の黒歴史として私の命を奪っていた筈だ。どうやらこの女は本当に私を親切で助けてくれたらしい。全ては私の杞憂だったのだ。
「……そうか」
会話が終わり、静かな森の中でパチパチと焚き火の音が響く。なんて重い空気なんだろうか。気まずい。果てしなく気まずい。冷静に的確に考えれば故意じゃないとはいえ年頃の女の裸の胸を鷲掴みにして勝手に興奮して鼻血を出して失神した後、介抱してもらった上に最初に吐いた言葉が上から目線で「何故あそこで裸でいた」「何故私を救った」だ。せめて簡潔に「先程は失礼な事をしてしまってすまなかった。介抱してくれてありがとう」と言う感じにに言うべきだったのだ。こんなの失礼し過ぎるではないか。馬鹿か私は。どうして謝罪と感謝の言葉が出ないんだ!この馬鹿!!
ーーぐぅぅぅ。
「!!」
ぐるぐると女性に対して罪悪感に苛まれて自分を責めていたら突然私の腹の虫が大きく、鳴いた。かぁぁと顔が熱くなり、腹を抱える。そりゃあ今までキン肉星でロクなものを食べていなかったし、地球に到着するまで飲まず食わずだったとはいえこんなタイミングで鳴るときがあるか!腹の虫のバカ!
「お腹が空いてるのかい?」
「……!」
女の言葉に身体全体が熱くなる。恥ずかしい、恥ずかし過ぎる!あんな事言って、あんな態度を取った後なのに!身を縮みこませ、無言を決め込んでいたが、ふわりと美味しそうな匂いに鼻が擽られ、更に腹の音が鳴った。腕の隙間から見たら、女が茶色に焼けて汁をたっぷり垂らしホカホカと湯気を出している香ばしい匂いの鳥の肉を私の目の前に差し出していた。
「食べるかい?塩で味付けしたから美味いと思いよ」
「……」
私の口からは涎が垂れていた。女は串に刺さっている鳥の肉を手渡してくれた。
***
「本当にすまなかった。…それに加えて貴重な水と食べ物を分けてくれて本当に感謝している。本当にありがとう」
「別にいいさ。わざとじゃないんだろう。」
なんと心が広い女なんだろうか。わざとじゃ無いとはいえ見ず知らずの私の行為と態度を許してくれるなんて。キン肉星の臣下たちにはこの女の爪の垢を煎じて飲んで欲しいものだ。はうはうと熱い肉を頬張り、じぃんと胸の奥が熱くなる。飲み水を渡されて、それを受け取りごくごくと飲んだ。なんて冷たく、美味いのだろうか。生き返った気分だ。無我夢中で飲み食いをしている私を微笑ましそうに見つめながら女は水をひとくち飲んだ。
「余程腹が減っていたんだね。見てるこっちが清々しいよ」
「ああ、最近ろくに飲まず食わずの生活だったからな」
「へぇ、最近の超人は大変だね。しかもお前は空から勢いよく落ちてきたし何かの修業の特訓かい?」
「……あぁ、そんなもんだ。超人たるもの厳しいトレーニングはかかせないからな」
「凄い音だったよ。真っ暗闇の中、隕石が落ちたかと思ったらお前が出てきたからね。本当に驚いた。どうやったらあんな落ち方が出来るんだい?」
「…そうか、驚かしてすまない」
思わず誤魔化して返事をしたが、もしかして、この女は私が乗っていた宇宙船を見ていないのか。まあ月光が出なければあの闇の空間だ。何も見えなかったかもしれない。
「まあいいさ。…でも強くなりたいからって自分を追い詰めるのはよくないよ。もっと肩の力を抜いて生きないと人生楽しくないからね。超人でも息抜きが必要だよ。」
「……」
母親のように嗜める女の言葉に食事する私の手が止まる。人生、か。私の今までの人生は一体何だったろうか。子どもの頃はキン肉王家の超人として生活して幸せだった。しかし成長するにつれ私の優れた才能が周囲に恐怖を陥れ、投獄される身になった。次期王位継承者の兄タツノリだけが私に定期的に会いに来てくれた。いつかお前を必ず出してやる。待っていてくれ。そしたらまた昔みたいに兄弟で助け合って仲良く暮らそう。会うたびに目尻に涙を溜めながらそう繰り返した兄さん。私の処刑を止める事が出来ず涙を流し、私を逃がしてくれた兄さん。今頃何をしているんだろうか。
少し前のことが大昔のような出来事に感じてしまう。過去を思い出してぼんやりとする私をジッと見て女は神妙な顔を作った。
「……もしかしてお前も「聖なる完璧の山(モン=サン=パルフェ)」を目指しているのかい?」
「!」
女の言葉に、私の身体はピクリと震えた。
「な…「聖なる完璧の山」だって!?」
「ああ、この森は「聖なる完璧の山」のすぐ近くにある」
「何だと!?」
女の答えに私は声を荒上げて、女の肩を乱暴に掴んだ。
「聖なる完璧の山」。そこに行けばどんな超人でも強くなれると言われている幻の島。キン肉星にいた時に噂を少しだけ聞いた事があった。まさか、本当に実在したとは。信じられない。行くあてがなかった私に希望が見えた。まさに、その島こそ私が行くべきところなのだ!!そこに行って強くなり、心優しい兄上を泣かしたあの忌まわしきキン肉王家に鉄槌をくらわしてやるのだ!そして認めさせる!!奴らが犯した罪と罰を!!
「教えてくれ!どうやったら「聖なる完璧の山」に行けるのだ!」
私は叫びに近い声を出しながら女の肩を揺らした。
「お、落ち着け…」
「落ち着ける訳がない!さあ、今すぐ、今すぐ教えてくれ!」
「ゆ、揺らすな…あ」
「…!」
気持ちが高ぶり揺らしてしまった彼女が耐えきれず後ろに倒れた。不意をつかれた私も一緒に倒れたが顔面が柔らかいクッションに突っ込んだ為、痛くはなかった。ん?柔らかいクッション?柔らかい……
「…っ!!」
違う、これはクッションではない。こ、この感触は……!ま、マント越しではあるが……お……お、おっぱ……!!
「いたた…重い。そろそろどいて…ん?」
女の声が遠くに聞こえたが、急激に熱が上がり、意識がブラックアウトしている私には聞き取れなかった。
***
チュンチュン、と鳥が鳴く音が聞こえ朝日が射す。もう朝か。むくりと身体を起こすとしゃがみこむ女と目線があった。
「ゆっくり寝れたかい?」
「…!」
思わず後退して後ろの大木に頭をぶつける。
「さ、昨夜はその……!」
「わざとじゃないんだろう?大丈夫、気にしてないよ」
「……っ」
恐らく真っ赤な顔をしている私に女は美味しそうに焼けた大きな魚を差し出した。
「食べるかい?朝食だよ」
「………」
私が返事をしない代わり、私の腹が図々しくぐぅと鳴った。
*
「「聖なる完璧の山」まで案内しようか?」
「本当か!?」
魚を全て平らげ水を飲み干した私に女がそう言った。驚いて立ち上がる私に女に本当だよ、と水をひとくち飲んだ後、言った。
「ただ、本当に行くつもりなら覚悟が必要だよ」
「覚悟だと?」
女はこくり、と頷く。
「ああ、死ぬ気の覚悟さ」
女の表情から笑顔が消える。青い瞳が吊りあがり冷たく光る。ただならぬ雰囲気に変わった女に一瞬だけ背筋に冷たいモノを感じた。
「着いてきな」
女は立ち上がり背を向け、歩く。私はただただその後を無言で着いていった。
*
「さあ、着いたよ」
「……!」
案内された場所は平面の海だった。が、私の中の超人としての本能が海にとても強く惹きつけらる。見えない海の彼方が私を呼んでいる。ふらりふらりと冷たい海に片足を突っ込んだ。しかし、女が肩を掴んで引き止めた
「待ちな、足元を見るんだよ」
「…!」
女の言葉を聞いて足元を見ると無数の骸骨が其処ら中に浮かんでいた。
「これは…」
「「聖なる完璧の山」を目指してたどり着けず死んでいった超人の亡骸だよ。強さを求めて「聖なる完璧の山」まで泳ぐ超人達は後を絶たないが、其処まで泳ぎきる事が出来る超人はほんの一人握りさ。」
「何故、そんなに詳しいんだ?」
「昔、よくここに来てたからね。どんな超人が「聖なる完璧の山」を目指して、たどり着けるかを観察していたんだよ」
…過去形?
「…まさかお前も「聖なる完璧の山」に行こうと考えいたのか?」
「違うよ。ここを眺めてある超人を探していたんだ」
「ある超人?」
「昔生き別れた父親だよ」
「……父親?」
「強さとか興味がなかったけど…それでもやっぱり超人だから「聖なる完璧の山」に向かった可能性があるかもしれないって思ってね…当てが外れたけどね」
遠い目をして女は遥か彼方を見つめる。彼女が見ているものは果たして何なんだろうか。少なくとも「聖なる完璧の山」ではない。遠い過去の記憶だろうか。彼女の何かを懐かしむ表情に親近感を覚えた。どんなに幸せな出来事も時間が過ぎ去れば手から零れ落ちて戻す事なんて出来ない。だが、彼女が父親は生き別れただけだ。生きていれば希望が持てる。生きていていても絶望するしかない私とは違うのだ。彼女はまだ人生をやり直す事が出来る。
「いつか、父親と会えるとないいな」
「ありがとう」
寂しく笑う彼女に、チクリと胸が小さく痛んだ。何故、痛むのか分からない。だけど見ていられなくて、思わず彼女の身体を引き寄せて抱き締めた。どうして、そんな事をしてしまったのか分からない。ほぼ無意識の行動だった。
「……あ」
その時、むにゅり、と私の掌が何かを掴んだ。マント越しの彼女の尻だった。柔らかい。兎の耳だけではなく、兎の尻尾も生えていたのか。…って、そうじゃないだろ!!
「す、すまない!なんとゆうか、その…慰めたくて…いや、そういう意味じゃない!すまない!本当にすまない!!」
慌てて引き剥がし、何度も何度も頭を下げて謝った。ぷっ、と彼女の吹き出した音が聞こえ、恐る恐る顔を上げると彼女はとても可笑しそうに笑っていた。
「いや、いいよ。二度ある事は三度あるってゆうし。特別に許してやるよ。…それにお前とはこれっきりだと思うしな」
「……」
彼女は私の考えを全部見通している。そして悟っていた。
「私が何言っても行くんだろう?「聖なる完璧の山」に」
「……」
ぽん、と頭を撫でて彼女はにっと歯を出して笑う。優しく頭を撫でられ、動揺する私に微笑みながら続けた。
「無事に「聖なる完璧の山」まで泳ぎ切ってたどり着きな。頑張るんだよ」
「……」
頭を撫でてもらうのはいつ振りだろうか。頑張れと最後に励まして貰ったのは何時だったろうか。ポツポツと胸の奥で何か温かいものが感じる。目の奥まで熱くなったのは潮風にあたって久々の日光を浴びたからであろう。決して彼女の言葉が胸に突き刺さったからではない。
「……」
私は彼女の手を振り払い、海の中へ入って行った。もう何も思い残す事はない。私は死ぬ気で「聖なる完璧の山」にたどり着いて見せる。決意を固く決めた私の後ろから彼女の言葉が聞こえた。
「そういえば言い忘れていたね。私の名前は名前。聞き忘れていたけど、お前の名前は一体何て言うんだい?最後に覚えておきたいんだ」
「……」
もう何も答えない気でいた。だけど、世話になった手前、少しだけ振り返り私の本名を告げた。すると彼女は嬉しそうに兎耳をピンと立てて手を振った。朝日を浴びて微笑む彼女はとても美しく、慈愛を司る女神のようだった。その光景は私の脳裏に強く焼きついた。きっと一生忘れる事ができないだろう。そしてもう一生会える事などないだろう。
「ありがとう、名前。さようなら」
私は前を向き、海を泳いだ。ひたすら「聖なる完璧の山」を目指して全力で泳いだ。振り返る事は二度となかった。
***
手の中の兎が逃げた。ぴょんぴょんと跳ね回り、仲間の兎たちの元に駆け寄った。ミラージュマンが創り出した幻覚だというのになんと生き生きしているのであろう。ネメシスは関心のため息を吐いた。
「本当に無駄に完璧なクオリティだ。温かくて、柔らかくて、生き生きとしている」
「時間だけはたっぷりあるからな。創り出す以上、本物以上のクオリティを目指すつもりだ」
「そうか。お前はやはり凄いな」
「ゴパァゴパァ…褒めても何も…」
ん、とミラージュマンはネメシスの顔を覗き込み、仮面の下の瞳を大きく見開いた。
「どうした、人の顔をジッと見つめて」
「ネメシス……お前、鼻血が出てるぞ。それに顔も赤い」
「!!!」
ミラージュマンの言葉を聞いて、ネメシスは顔を真っ赤にして血がタラタラ出る鼻を抑えてその場から立つと早足で歩く。
「何処か調子が悪いのか?だったら……」
「なんでもない!ほっといてくれ!!」
ミラージュマンの気遣いの言葉を怒鳴り返してしまった。
言えなかった。兎を触って柔らかく優しい(無自覚の)初恋の人の身体と顔を思い出して、気持ちが高ぶってしまったからだと口が裂けても言えなかった。ドキドキと早まる鼓動に急かされながらネメシスは急いで共有の湧き水の場所へと駆け出した。
end