とあるスレより「怒りながらも丁寧に士郎の手当てをする凛」というイメージを送られ、とりあえずそのシーンだけ書いてみた次第。割と想像は膨らんだので背景辺りをもう少し深めて書こうと思う。
@GtrLYCTEVqculbA
「ったく。毎度毎度! いい加減に凝りなさいよ!」
遠坂の怒号が耳を刺す。
できるなら言い返したいが、未熟故の怪我の手当てをしてもらっている以上、反論などできる立場ではない。
「いろんなところにおせっかいを焼くのはいいけど、少しは尻拭いをするわたしの事も考えなさいよ。わたしだって暇じゃないんだからね」
「わかったっ、わかったから、湿布を叩き付けるのは止めてくれ遠坂……!? 痛い、痛いから……!」
打撲によって赤黒く変色した背中に、冷たい湿布が叩き付けられる。
ぴしゃりとした冷たさと、ズキズキと鈍い痛みに体を丸める。
「当然よ。半人前の自分への授業料と思いなさい」
俺のせめてもの抗議をきっぱりと切り捨てたあと、フン、と鼻を鳴らして、俺から顔を背ける遠坂。
表面上こそそっけない態度だが、遠坂の怒りは全身から威圧となって放たれている。
が、遠坂の怒りはもっともだ。
そもそも背中の打身は、俺の未熟さ故に招いた負傷であり、そのせいで遠坂の時間を無駄な事に割かせてしまった。
ならば、そんな遠坂に俺が示せることは二つしかない。
「……悪かった遠坂。こういうことは繰り返すだろうけど、次は怪我しないよう善処する」
「そこは怪我はしないと断言するか、繰り返さないと誓いなさい。……まあ、言っても聞かないんでしょうけど」
遠坂は呆れたように顔を横に振る。
それだって、遠坂にとっては正当なもので、俺は文句を言える立場じゃない。
しかし、遠坂に対して、まだ一つしなくてはいけないことが残っている。
「それと、ありがとな。遠坂」
「もうっ、まだなにか……って、なっ!?」
俺の感謝は、遠坂にとって予想外だったのか、遠坂は目に見えて動揺している。
こちらとしては有り難い。
謝罪はともかく、感謝に対してまで怒りを示されたら、いよいよどうしていいか分からなくなる。
「だって、手当てしてくれたじゃないか。それに、遠坂が怒ってるのだって、俺がしなくてもいい怪我をしてるからだろ? だったら、感謝を示すのは当然だ」
第一、この怪我は遠坂とは関係のない場所で負った怪我だ。
遠坂は時間を割いてまで手当てをしてくれているが、別に遠坂に関係のない怪我を、わざわざ遠坂が手当てする義理はない。
むしろ、俺が勝手に負った怪我なら、俺で手当てをするのが筋というものだ。
それでも遠坂が手当てをしてくれたのは、俺の怪我を心配してくれたからに他ならない。
だったら、感謝以外の何を返せというのだろう。
「だから、ありがとう。遠坂」
「……ふ、ふん。解ればいいのよ。次からは気をつけること。じゃあ、少し休憩したら魔術の鍛錬を始めるから、できる限り体を休めておくように!」
があー、とまくし立て、遠坂は部屋から出て行ってしまった。
さて、遠坂の魔術鍛錬はスパルタだ。集中するために、今は体の力を抜こう。
そうして、肩を少し下ろし、ため息を吐く。
「しかし、まいった」
先ほどの遠坂の顔を思い出して、熱くなっている顔を覆う。
本当に申し訳ない。
次からは気をつけるという言葉に嘘はない。
けど、遠坂のああいう顔が見れるなら、また怪我をしてみるのも、その、悪くないと思ってしまった────