初めてtwitter に上げた吸死小説です。色んな方々からいいね、頂いてビビった思い出があります。その節は皆さんありがとうございました。
ご主人を捜して三千里してた頃の子ジョンの話。
2022/07/26に上げたものです。
ジョンは、シンヨコに来るまで日中寂しかったんじゃないかな、と個人的に思っている。
@kw42431393
はやくよるになればいいのに…
夕暮れが雄大な南米の草原を染めていく。草原の中に全く場違いな洋館が建っており、もちろんそれも紅く染まっていた。
バカンスに来た吸血鬼一家に保護されて早数ヶ月、ジョンと名付けられたアルマジロの子供は、棺桶の上に頬杖をついて、自分の主ドラルクが起きてくるのを待っていた。
この屋敷の者達は、太陽が昇ると棺に入って眠ってしまう。
眠る前に食事や必要なものは用意してくれているし、チュパカブラや他の者達の使い魔もいるから寂しくはない。でも、ついほとんどの時間をここで過ごしてしまうのだった。
「ニュン…」
ため息をついて、恨めし気に夕陽を見上げていると、ふいに周りが暗くなった。
「どしたの?オリハルコンZ。」
見上げるとこの館の主ご真祖様がジョンを覗き込んでいた。この人だけは、昼間でも南米の日差しの中を飛び回っているのは何故だろう?
「ドラルクが起きてこないから、寂しいの?一緒に遊ぶ?」
ドラルクがいたら、ジョンを抱えて抗議していただろうが…
だいじょうぶ。ニュンはドラルクさまのつかいまになるマジロだから、いいこでまてるニュ。
ジョンが、胸を叩いてそう伝えるといつも無表情なご真祖様が上品に笑ってくれた。
「そ。じゃあ、頑張り屋さんにはご褒美をあげよう。でも、ドラルクには内緒。怒られちゃうからね。」
ご真祖様はマントの裏からかわいいカップケーキを取り出して、ジョンの手に乗せてくれた。
ありがとう、ごしんそさま。
話している間に、また少し外が暗くなったようだった。
ジョンがカップケーキを食べ終わった頃、中から欠伸をした様な気配がした。飛び降りて隙間から覗き込むと、ギギ…と重い音を立てて蓋が開いた。赤い目と牙が月明りに反射していた。
ドラルクさま、おそいニュ。
泣きながら声をかけると、ドラルクがゆっくり起き上がった。
「ジョン、おはよう。寝坊しちゃったかな?ごめんね、お詫びに何でも好きなものを作ってあげよう。」
ジョンを抱き上げた主は、元々眠そうな目を擦りながら、困った様に笑ってくれた。
いいニュ、こんやもあえただけでうれしいから。ずっとずっといっしょだニュ。
「どうしたの?ずいぶん今日は甘えん坊さんだねぇ。」
ザザァ…チャプチャプ…
ギィギィ…
グー、スピー…
波の音、ハンモックの揺れる音、船倉で眠る船員達の寝息や鼾…そして、頭を撫でてくれる暖かい手の感触。
ルーマニアに帰ってしまったドラルクを追って、ジョンはヨーロッパ行きの船に乗せてもらっていた。
言葉はちゃんと通じないが、健気なジョンは船員達に可愛がられ、船員の青年の腕の中で目を覚ましたのだった。
主と違って、昼の子は温かかった。筋張った華奢な手と違って、筋肉質でも柔らかかった。でも、ジョンが望むのは…。
窓から外を見ると、主によく似合った満月がジョン達を見下ろしていた。
よるなのに…
いつもなら、夜になれば皆に会えた。賑やかだった。楽しかった。夜が明けるのが寂しかった。
「んぁ?ごめん、マジロ。起こしちゃった?」
ジョンを抱いて眠ってくれていた青年が、すまなそうに眼を擦った。
ううん、だいじょうぶ。こっちこそおこしてごめんニュ。
青年の仕草に夢を思い出して、ジョンは青年の腕の中に戻った。
「明日は、港に着くからね。ちゃんと寝ておくんだよ。」
そう、かなり主のいる所に近づいたのだ、と期待に胸が高鳴った。
ドラルクさま、ニュンのしあわせをかってにきめないでニュ。ニュンはもうきめているんだから。
温かい青年の手に包まれながら、満月を見上げる。
だから、まっててね。なんねんかかってもあなたにあいたい。