twitter に上げた2作目の小説。ジョン視点のドラヒナで書いてました。
この時、ドラルクさんとヒナイチくんの電話内容が気になると感想を頂き、脳内で考えていた事件背景も入れたシリーズものっぽく続いたりしました。
当時は何故か新書ページメーカーの8p以内で終わらせないといけないと考えていて、削りすぎて辻褄が合わない所も出ていたので、こちらでは加筆しています。ロナサン要素有です。
2022/07/29に上げたものです。
@kw42431393
「フ~ン♪♬フフ♪フ♯♫フフ🎼ンフフ」
聞くに堪えない鼻歌というか読経というか唸り声というか、がキッチンに響いている。
アルマジロのジョンは辟易としつつ、ドラルクと彼の手によって完成されていく芸術品を見比べていた。
天は二物を与えずとはよく言ったもので、料理や裁縫は素晴らしいものの音楽や絵画は破滅的というのが現実で…本人はその全てが完璧だと信じているのが始末に悪かった。
「うん、できた!ジョン、どう思う?我ながら素晴らしい出来だと思うんだけど?」
テーブルの上には、味も見た目も栄養バランスも完璧なランチプレートと弁当箱が並んでいる。
ヌン!きっと皆喜んでくれるヌ。ヌンが保証するヌ。
ジョンが親指を立ててウインクすると、ドラルクは胸を張って得意そうに笑った。
「フフフ、ほんと彼らもちゃんとこのドラドラちゃんに畏怖の念を持って…っと、ワッ!」
決めセリフと共にポーズを取ったところで、机に腕をぶつけたドラルクが一瞬で塵になった。
慌てて机から飛び降りたジョンが塵をかき集めると、上半身だけ再生させたドラルクが、頭に手をやりながら照れ笑いをしてみせた。
ヌー!!ドラルク様ったら浮かれ過ぎヌ。
「ごめんて。だって、ほら。ヒナイチくんも帰ってきたし、その上、サンズ女史に半田くんまで来ちゃうと思わないじゃない?あんなに騒いだの久しぶりだから、つい。」
ヌーン、まぁ今回は仕方ない…ヌ。
享楽主義の主からすれば、鼻歌の一つも…出ようというものだろう。同居人達にとっては不本意ながら。
2週間前から出張で事務所にいなかったヒナイチから、一昨日の晩にシンヨコに帰る旨の電話が来た。その時、どんなやりとりがあったかは知らないが、彼女の言葉がドラルクにスイッチを入れたらしかった。
当日、テーブルの上はローストチキンにシーザーサラダ、ドリアにポタージュスープ、ホールケーキにババロア、彼女の好物であるクッキー等々…ご馳走とデザートで埋め尽くされていた。
ストレス発散ではなく、上機嫌でやった事なのは表情で分かる。
家主のロナルドが「うるせぇ、クソ砂!せめて歌うのやめろ!」と暴力を通り越して、げんなりする程のはしゃぎっぷりを披露していたのには、ジョンも同情せざるを得なかった。
その後の細かい事は割愛するが、みっぴきで食事をしていると、窓からクソゲーコラムの進捗を伺いにオータム書店のサンズが来た。折角だから、と彼女も食事に誘ったところに、セロリトラップを仕掛けに来た半田と彼女が鉢合わせとなり…ロナリスト達の戦場となった事務所を片付けた頃には、もうすっかり深夜となっていた。
遅くなった事だし…の流れで事務所に皆泊っていく事となり、ソファーベッドにはロナルドと半田が、床下にはヒナイチとサンズが、今頃ぐっすりと眠っているはずである。
昼の子達が寝静まったところで、ドラルクは4人と1匹の朝食と昼食を作りにかかって今に至る。
ジョンが時計を見上げるともう5時を過ぎていた。
ドラルク様、そろそろ寝ないと…
「おや、もうこんな時間かね。楽し過ぎる時間は早く過ぎるというけど本当だね。」
少し間を置いて、主は再び言葉を紡ぐ。
「ねぇ、ジョン。私、昔お父様にジョンがいるし、積みゲもあるし、死ぬ事もないし…何も問題ないなんて言ったの覚えてる?」
うん、あったヌ。やっぱりドラルク様、お城にいた頃退屈だったヌ?
「まさか。ジョン、君が来てくれてからずっと、辛いとか寂しいとか退屈だとか思った事はなかったよ。」
そう言ってもらえると、ジョンは自分が誇らしくなる。4人の昼食をランチクロスに包みながら、主は言葉を続けた。
「ただ、棺に入る時に明日はどんな事があるのかなって期待する様になったんだよ。シンヨコに来てから毎日…今まで何も考えたりしなかったのにね。なんて、おかしいかな?」
ううん、ドラルク様。ヌンもそう思う。
主を独り占めできなくなったが、夜はドラルクのイキイキした楽しそうな顔が見れる。日中もロナルドやここでできた友人達とお出かけしたり、お散歩したり、買い物にも行ける。
ヌンもドラルク様の使い魔になって結構長生きしているけど、きっと今が一番楽しいヌ。
(本当はギリギリさんもいたら最高なのに…さすがにそこまでは贅沢かヌ…。)
ジョンの胸に、難しい顔をした指名手配犯の顔が浮かぶ。今頃、どうしているだろうか?
「よかった。さすが、私のバディ!私も200年以上生きてて、今が一番楽しいよ。」
そういえば、ドラルクさま…
「ん?なぁに?」
エプロンを外し、寝間着に着替えているドラルクにジョンが声をかける。
ヒナイチくんの電話からずっと嬉しそうだけど、ほんとは何て言われたの?駅に迎えにいって帰ってくる間に、ちゃんとお話しできたヌ?
ヌッヒッヒ、と口に手を当てながらイタズラっぽく笑ってみせると、主も惚気気味に笑ってくれた。
「おやおや。悪い顔してるぞ、イタズラマジロ。ウフフ、そうだね。あの子ったら電話で嬉しい事を言ってくれたものだから…つい…ってアッツ!!」
そこまで言った時、窓から差し込んできた日光が手に当たり、ドラルクは飛び上がった。
「アーッ!!もう朝日出てる!ジョン、私もう棺に入るから皆にお弁当渡しておいてね!」
ドラルクはそれだけ言って、棺桶に飛び込むと蓋を閉めてしまった。
周りは急に静かになってしまった。昔は朝日が昇ると皆眠ってしまって、一族の使い魔達と主の目覚めを待っていた。世界大戦が終わって、日本のドラルク城で1人と1匹暮らしをしていた時は、ずっと1匹で主の目覚めを待っていた。
以前は朝日が疎ましかった。けれども、ここに来てから昔の様な寂しさはなかった。自信を持って、ジョンは朝日を見上げて言った。
今日も面白い事がありますように。
ジョンが寝床に入ってウトウトし始めた頃…
「あー、くっそ。ソファーベッドが元に戻らねぇ。どうやるんだっけ?お前が急に泊りに来るからだぞ。大の男二人には、めちゃくちゃ狭えし、体があちこち痛ぇし。」
「バカめ!貴様が不器用なだけだろう。俺に貸してみろ!こうやってだな…」
「わっ、無茶すんじゃねえ。壊れるだろ!」
「サンズにゃん、早く上がってくれ。出入口はそこしかないんだから、私が出られない。」
「うるさいですよ、床下!ニャー!今度は、胸が挟まって…」
「またか!ロナルドー!サンズにゃんが、今度は胸が嵌って出られないんだ。引っ張ってくれ!」
「サンズさん、大丈夫ですか!?ちょっと、失礼しますね。」
「ウエーン!ロナルドしゃんに、こんな所ばっかり見られるなんて~。」
「フハハハ、無様だな。光のロナリストよ。」
「半田、言ってる場合か!お前も手伝え!なんか、めっちゃ柔らか…わ~!すみません、サンズさん!」
フフ、皆またやっているヌ。
昼の子達の時間が始まった。賑やかな声に安心して、ジョンは暖かい日差しを浴びながらもう一度眠りについた。
今日も、ロナルド吸血鬼退治事務所の賑やかで面白い一日が始まろうとしていた。