ドラヒナ前提で、女子会の後ドラルクさんとシーニャ姐さんが会話するお話です。皆でまた百和温泉に来ている理由などのオチが、それより前に上げた「皆と一緒に https://privatter.net/p/9310808」と「太陽からの祝福 https://privatter.net/p/9323933」とリンクしています。
同じAB型なせいか、シーニャ姐さんには親近感がありますね。
2022/08/19に上げたものです。
@kw42431393
はぁ、やっと一段落ついたかな…
ドラルクは、目の前の惨状を見てため息をついた。吸血鬼の自分は、普通のアルコール飲料では酔わない。飲み会で素面の者に待っているのは、泥酔者の介護と後片付けである。
「ほんと何でこんな事になっちゃったのかね、ジョン。いや、原因は分かっているけど。」
散らかったビール缶やおつまみの袋、割りばしや皿を片付け終わって、ドラルクはぼやいた。
ヌン。ドラルク様が処女の生き血を吸いたいって言ってヒナイチくんに催眠蝋燭使ったからだヌ。
ここは退治人シーニャ・シリスキーの部屋で、女子会の二次会場の成れの果てである。
見回すと、だらしなくおっさんの様に大の字になって寝ているマリア、さっきまでニコニコ笑いながら毒舌に磨きがかかっていたター・チャン。いつも通りと見せかけてかなり酔っていたコユキ、そして、ジュースと間違えた缶チューハイで酔ったヒナイチが、思い思いの個性を見せて眠っている。
ふっと処女の生き血が吸いたくなったドラルクは、催眠蝋燭を懐に入れてヒナイチを探しに行ったのが運の尽き。女子トイレに連れ込まれたり、深窓のお嬢様ドラ美として女子会に連れ込まれたり、ヒナイチに吸血しようとした男に殺されたり…なんかわやわやあって、今ここにいる。
「さてと、ジョン。そろそろこっそりお暇しようか。酔った彼女達から血を貰おうなんて、考えた事がバレたら…。」
ドラルクは、周りを確認しつつ、そっとジョンを抱き上げた。
ヌン。シーニャさんにはもうバレてるヌ。早くロナルドくんの所に帰ろ…
「あらぁ、こんな所にいたのぉ?」
いきなり、後ろにゲテモノ調教師シーニャ・シリスキーが現れた。
「ドラちゃ~ん、片付けて手伝ってもらっちゃって悪いわねぇ。ありがと!」
チュッと投げキッスをしてくるシーニャに、ジョンを抱き締めながらドラルクはたじろいだ。
「いやはや、私まで二次会参加させて貰いまして…では、私オータムのクソゲーコラムの締め切り忘れてたので、この辺で…。」
「あら、いいじゃない。ゆっくりしていきなさいよ。まだ、夜明けまで時間あるでしょ?何より…」
主従は抱き合ったまま、ゴクリと唾をのみ込んだ。
「あんたが、さっき言ってた吸血大作戦ってやつが気になるものねぇ。」
「え、えっと、それは、ですな…」
「そぉいう悪~い吸血鬼を退治するのが退治人なのよ?この前はロナルドとのコンビの絆ってのに感動したから、譲ったけどさぁ。もし、そんな事考えてたんなら…」
「も、もしもし?シーニャさん?」
「今度こそ捕まえて調教して…ここから出れない体にしてやろうかしら!?」
どこから取り出してきたのか、捕らえた吸血鬼に着せるハイレグと鞭を取り出してきた。それらを見せつけながら、グイグイと迫ってくる。
「イヤー!シーニャ姐さん、ちょっと待って、お願い!訳とか聞いてー!」
「ヌエーン!」
「問答無用♪さぁ、お着換えタイム…」
と、その時視界が薄暗くなった。
「シーニャさん、やめてやってくれ。」
腰を抜かして座り込んだドラルクがなんとか見上げると、すぐ上にヒナイチの顔があった。膝立ちになって自分を抱き寄せているらしい。
「おや?ヒナイチくん。いつの間に起きて…」
「ドラ美が嫌がってる。こいつは体が弱いんだ。そんなお腹冷やしそうな服を着せないでやってくれ。」
「ヒナイチ君…やだ、なにこの子ったらイケメン過ぎない?」
獲物と見なしていた少女からの救援に、思わず涙が出そうになる。が、すぐにドラルクは焦りだした。顔が柔らかいものに埋もれているのに気付いたからだ。
「ちん?え…ドラル…?」
「おほほほ!ありがとう、ヒナちゃん!」
「うん!さっき助けてくれた礼だ。私がお前を守ってやるからな!」
一瞬、術が解けて危なかったが、なんとか持ち直した。
「と、とりあえず、ちょっと離してくれないかしら?」
「ん~、なんでだぁ?」
「何って、顔に胸が当たってるのよ。」
「女同士だからいいじゃないかぁ、こいつぅ…。」
余計に抱き締めて、グリグリ押し付けてくる。まだ、酔っているのだ。
「エーン!結局助かってない。未成年なのに飲むからー!」
塵になりかけながら嘆いていると、向こうでシーニャがフッと笑った気配がした。
「ぷっ、うふふふ。そう、ヒナちゃん。ほ~んと、ドラちゃんが好きなのねぇ。」
「勿論だ。死にやすくて、守ってやらないとダメなんだが…ご飯が美味しくて、お菓子が美味しくて、最近は弁当も持たせてくれるんだぞ。戦闘で破れた服も繕ってくれるし、可愛い服やぬいぐるみも縫ってくれたり、出かける時、髪も結ってくれたりして…」
「やだ、何それ。まるっきりお母さんじゃない?ドラちゃん、あんたそんな事までしてたの?」
「いやぁ、その…私達は」
「うん!ロナルドとジョンと家族みたいなものだ。わた…し達…みっぴきは…ずっ…」
「ヒナちゃん?」
ふわぁ、と欠伸をしたかと思うと、そのまま彼女はドラルクに凭れてきた。
「うわっ、とと!ヒナイチくん、危ないでしょ。」
ドラルクは塵になりかけながら彼女を支えると、そのまま膝枕をしてやった。さらに、風邪をひかない様にマントで覆ってやると、むにゃむにゃと満足げな声が聞こえてきた。
「いい匂…いだな。冷た…く、て…きも…いい…だい…きだ、ドラル…。」
「ドラちゃんここにいたの。ねぇ、ヒナちゃん知らない?」
「シーッ。皆と一緒ではしゃいでいましたからね、疲れたのでしょう。」
「ヌヌンヌヌ。ヌーヌ、ヌーヌ。」
シーニャに後ろから声をかけられてドラルクは我に返った。見下ろすと浴衣姿のヒナイチが、自分の膝枕で気持ちよさそうに眠っている。ジョンも彼女の横で、よく眠れる様に頭を撫でてあげていた。
久しぶりの百和温泉で退治人達と、またタイミングよく合流してしまった吸対職員や吸血鬼達、オータム書店の者達も、あの時同様の楽しい時間を過ごしていた。お酒も入り、騒ぎは佳境に入っている。
「そういえば、前に温泉に来た時も、女子会の時もこの子は私の膝で寝ていましたな。ガリガリで寝心地よい枕とは思えませんけどね。」
「あんただから、じゃなくて?」
「フフ、そうかもしれませんね。」
そう言ってドラルクは、ヒナイチの頬を撫でる。「ううん…」と身動ぎする彼女は、頬をその手に摺り寄せて蕩けた顔をしていた。
「あら、前と違って余裕ねぇ。ヒナちゃんが出張から帰ってきてから、あんた達に何があったのかしら?」
「前の事は思い出したくないですなぁ。折角この子が止めに来てくれたのに、結局ハイレグ着せられて正座で説教されるし。」
「ヌン。」
「ねぇ、ドラちゃんさぁ。ヒナちゃんの事どう思ってる訳?」
「どうって…?」
「なーんか、あんた見てるとさぁ。ヒナちゃんに対して態度がフラフラしてるっていうの?あんた達は執着する生き物だから、あんたもこの子に少なからずあるわよね?」
「ど、どうも言いたい事が分かりませんな。」
「そうねぇ。あんたのこの子への態度はさぁ、親としての様でもあり、男としての様でもあり、友人としての様でもあり、捕食者としての様でもありってとこかしら?そんな気がするのよね。」
「…」
「この子は実ははっきり決めてるわ、人間の成長は早いのよ。あんた、考えておかないと痛い目見るかもね。」
「実は、私も分かりかねて困っているのですよ。正直、いつかこの子が私の手元から巣立っていくのでしょう、そう思うと心穏やかでないのは確かでしょうな…。」
「あの女子会の後、あんたとこんな会話したの覚えてる?」
「そんな事もありましたな。」
「そ、ちゃんと答えは出せたのよね?」
からかう様に笑うシーニャに、ドラルクは笑って返してみせた。
「その当時はご心配をおかけしました。この間、二人共答えと呼べるか分かりませんが、話し合う事は出来たのですよ。少なくとも、私はとっくにこの子を獲物として見る事は出来なくなった事は確かです。」
「フフフ、それだけかしら?その先の覚悟があるかも聞いてみたいわね。あたしもヒナちゃんの事が心配だし?」
シーニャが探る様に聞いてくる。
ドラルクは、口元に不敵な笑みが浮かべた。以前なら狼狽えて無様な姿を見せていただろう…もう、手放す気がない事を自覚しているだけに自信を持って返事ができた。
その先の覚悟…ですか。うちのお祖父様もお父様も一途な方でしてね、私もご多分に漏れず…という事だったのでしょう。
この子は、私がかつて獲物として見ていた時があったと告げても、私に思いを寄せてくれた。私といたい、と言ってくれたんです。
私の事を「殺す価値もないほど弱く、人を誑かすのに長けた吸血鬼」と知った上で、ずっと私の監視についてくれると言ってくれた。そして、畏怖の念を向けてくれた。
私の大事なこの子達と…その先の子孫の代もこの街を守っていくと約束した、というのは、答えになりませんかな?