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突然に

全体公開 1458文字
2022-10-13 22:57:32
Posted by @uk_plus_



 急な話だが彼氏の寿三郎に何故か兎の耳が生えていた。

「な、なんやこれ~」

両耳を両手で触りながら困惑している寿三郎は今にも泣きそうな顔をしていた。目の前にいる私も驚きながら、しかし冷静な手付きでスマホで写真を撮っていると白い耳をぴんとさせた寿三郎に怒られた。

「何しとんの!今はそんなことしてる場合やないやろ!」
「ご、ごめん、つい……

ぷりぷりと怒っていた寿三郎だったが、次の瞬間には白耳をへたりとさせて肩を落としていた。私はそれを見て居ても立っても居られず、ぽんぽんと寿三郎の頭を撫でる。

「どないしよ……

寿三郎がそうぽつりと呟いた時。私は更にすごいことに気付いてしまって思わず声を上げてしまった。

……?あっ」
「え、な、なんや」

困惑する寿三郎の声に言うべきか否か悩んでいると、どうやら追うように気付いてしまった彼が更に驚きの声で言った。

「し、尻尾~!?」
「みたいだね……

そう、寿三郎のお尻部分に丸みを帯びたふわふわのものがくっついていたのだ。絶句してしまった寿三郎がへなへなとその場に座り込んでしまう。余程ショックだったのだろう。心配した私は彼の顔を覗き込むようにしゃがみ、もう一度頭を撫でた。

「寿三郎……
「ほんまに、どないしたらええんや……

こんなに落ち込んでいる彼を見るのは初めてだった。いつもにこにこしている寿三郎からは想像も出来ないほど落ち込んでいるようだ。

「そうだ!」
「な、なに……?」
「帽子を被ればいいんじゃない?尻尾は長い上着で隠そう!」
「せ、せやけど今手元にないで……?」
「じゃあ私今から買ってくるよ!」

それなら解決でしょ?と未だしょぼくれている寿三郎に言うと、今度は眉を寄せて二つの瞳をうるうるとさせながら抱き付いてきた。

「あかん!」
「え?」
「頼むから行かんといて……!」
「な、何……

ぎゅうぎゅうと抱き付いてくる彼を一寸引き剥がしてよく話を聞くと、どうやら彼は“寂しがっている”ようだった。私はそんな寿三郎に目を丸くしていると、ゆっくりと彼は話し出した。

「なんやろ……一人になるって思うと、こう、ぎゅっとここが痛くなってん……

大きく広い胸の真ん中をとんとんと右手でしながら、寿三郎は更に泣きそうな顔をした。そしてもう一度私を抱きしめながら、すりすりと私の髪に頬擦りをしてきた。そんな彼の仕草に胸が締め付けられたようになる私だったが、しかし一向に解決しない問題をそのままにはしておけなかった。

「でも寿三郎……一緒にお出掛け出来なくなっちゃうよ?」
「ゔっ……
「だから、ね?良い子で待ってて?」

自分よりも大きな体の寿三郎の背中をとんとんとゆっくり撫でながらそう言い含むと、涙目の彼が意を決したように私を離した。

……わかった」
「うん、ありがとう」

そして私を玄関まで見送りしてくれる彼は、未だに涙目になっているが耳は垂れていなかった。

―――――――――――――――――――――――――――

「気ぃつけて行ってきてや」
「うん」
「あ、電話かけたら絶対に出るんやで」
「うん」
「それから
「じゅーさーぶーろーう」




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